約220万円! トヨタ最新型「SUV」がスゴイ! 超「広びろ内装」&全長4.6mの「RAV4」級サイズ採用! 最新サメ顔もイイ中国の「bZ3X」とは

トヨタが中国市場向けに発表した新型EV「bZ3X」。約220万円からという驚きの価格と広大な室内空間が話題ですが、はたして日本で発売される可能性はあるのでしょうか。

コスパ高すぎな最新型「SUV」

 bZ3Xは、2023年に示された「bZ FlexSpace Concept」を源流とし、2024年の北京モーターショーで量産モデルとして公開された中国専用EVです。2025年3月6日にトヨタと広州汽車集団の合弁で中国市場向けに発売されました。

 コンセプトは“COZY HOME(心地よい動く家)”。グローバル共通設計の延長ではなく、「中国のために、中国でつくる」という現地最適思想を真正面から体現した転換点となる一台です。

内装の高級感もイイ!
内装の高級感もイイ!

 ボディサイズは、全長約4600mm×全幅約1875mm×全高約1650mm。「RAV4」級のサイズでありながら、後席足元は984mmとクラストップ級の余裕を確保し、家族層の長距離移動を強く意識したパッケージに仕上がっています。

 外観はbZシリーズ共通の“ハンマーヘッド”顔に、フロントライトバー内へ112個のLEDを組み込んだ精緻なシグネチャーを採用。サイドは長いホイールベースとショートオーバーハングで伸びやかにまとめ、空力と室内長の両立を図っています。

 インテリアは「デジタルアイランド」思想のもと、8.8インチメーター+14.6インチ大型タッチスクリーンを中核に、Snapdragon 8155チップで快適に動作。

 ヤマハ製11スピーカー、約1.14平方メートルのパノラマルーフ、助手席オットマン、前席フラット化機構や折りたたみ式テーブルなど、“車内で長く過ごす前提”の装備を惜しみなく積み込み、まさに“動くリビング”を具現化しています。

 プラットフォームはトヨタのe-TNGAではなく、合弁相手の広州汽車(GAC)が展開するEV専用「AEP 3.0」を採用。駆動は前輪で、モーターは150kW(約204PS)/165kW(約224PS)の2種を用意。

 バッテリーは50.0/58.4/67.9kWhの3サイズで、CLTC航続は最長610kmを公称します。急速充電は30→80%が約24分とされ、都市間移動にも現実的です。
 
 先進運転支援はMomenta社と共同開発のスイートを搭載し、LiDARを含む計27基のセンサーとNVIDIA Orin-Xを用いて、地図依存度を下げた一般道NOA(Navigate on Autopilot)を狙うのが特徴です。
 
 価格は補助金適用後で10万元台(約220万円〜)からと強力で、上位でも15万元台に収まります。同セグメントの競合を明確に意識した戦略的プライシングであり、発表直後には短時間で1万台超の受注が寄せられました。

 SNSでは「この価格でRAV4級は破格」「日本でも出してほしい」といったポジティブな反応が数多く寄せられています。
 
 一方で、日本導入の可能性は低いとみられます。その理由は大きく4つあると考えられます。

 1つ目は、シャシーがGACの「AEP 3.0」で国内のTNGA体系と非互換のため、右ハンドル化や衝突・騒音・電磁適合など再認証の手間とコストが大きくなること。

 2つ目は、ADASはMomentaの中国向けスタック前提で、日本法規・インフラ(高精度地図、通信、データ保全)への適合に大規模な置き換えが必要なこと。

 3つ目は、走行データの取り扱い等、データセキュリティやサイバー認証面で再設計が不可避であること。

 4つ目は、輸入費用を上乗せすると価格が450万〜550万円規模に達し、価格優位性が失われるーーという構造的な障壁です。

 これらは単発の課題ではなく、車両アーキテクチャからサプライチェーン、ソフトウェアまで横断する“設計思想の差”に根を持つため、短期的な解決は現実的ではありません。

 歴史的な位置づけで言えば、bZ3XはbZ4X(グローバル)やbZ3(中国専用のセダン)で積み上げた経験を、よりローカルに特化させた延長線上にあります。
 
 現地プラットフォームの活用、家族ユースを徹底想定した室内設計、価格主導の競争力確保ーーその全てが“中国で勝つ”ために最適化され、日本市場への転用を前提としていないこと自体がこのモデルの強さであり、同時に日本未導入の最大理由でもあります。

 結論として、bZ3Xは「中国に特化して磨き上げる」戦略の象徴で、日本導入は当面見込み薄です。
 
 ただし、現地協業で得た“速く・安く・広く”のノウハウ、そして“車内時間の価値最大化”という設計思想は、今後の日本向けEV(次期bZ群や商用派生)に確実に波及するはずです。bZ3Xは、日本の道を走らずとも、日本のEV開発を変える一台といえるでしょう。

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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