市バス急ブレーキで女性が転倒し骨折! 急ブレーキの原因となった自転車が「ひき逃げ」事件で捜査されているのはなぜ? 元警察官が解説
2025年7月、京都市の市営バスが急ブレーキをかけたことにより、車内で転倒事故が発生しました。原因はバスの前に飛び出した自転車で、乗客の女性が転倒し骨折するケガを負っています。自転車の人物は「ひき逃げ」の疑いで捜査対象となっていますが、はたしてその理由は何なのでしょうか。
ぶつかっていなくても「ひき逃げ」に該当する可能性あり!
京都市で2025年7月、走行中の市営バスの前に自転車が飛び出してきたためバスが急ブレーキをかけたところ、乗客の女性が転倒してケガをする事故が起きました。
警察は自転車の運転手を「ひき逃げ」の疑いで捜査していますが、一体なぜなのでしょうか。

今年7月23日の午後6時15分頃、京都市上京区の市道を走行していた市営バスの前に突然自転車が飛び出したためバスが急ブレーキをかけたところ、立っていた乗客の女性(57歳)が転倒して左鎖骨を折るなどの重傷を負う事故が発生しました。
京都府警によると、バスのドライブレコーダーにスポーツタイプの自転車が歩道から飛び出してバスと接触しそうになる様子が記録されていたということです。
なお事故の原因となった自転車は現場から立ち去っており、警察は自転車の人物が女性の救護を怠ったとして、道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで捜査を続けています。
今回の事故のように、接触していない自転車に対して「ひき逃げ」の捜査がおこなわれるのは異例のことです。では、一体なぜ「ひき逃げ」で捜査をするのでしょうか。
意外と知られていませんが、たとえ車両同士が接触していなくても、加害者の運転に何らかの過失があり、それが原因で相手にケガを負わせた場合は原因を作った側の責任が問われる可能性があります。
ひき逃げ(救護義務違反)に関しては、道路交通法第72条第1項の前段で以下のように規定されています。
「交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない」(条文を一部抜粋)
つまり事故が起きた際には、負傷者がいれば救急車を呼ぶ、応急救護措置をとるといった対応のほか、道路上に散らばった車両の破片を取り除いたり、通行する車両に事故を知らせたりする必要があります。
上記条文では、ひき逃げの成立要件として「車両同士の接触」を定めていないため、非接触の事故であっても相手がケガをしている場合には、救護義務が生じます。
ただし、事故の原因を作った加害者が「人身事故を起こした」「相手にケガをさせた」という認識を持っていなければ救護義務は発生せず、ひき逃げには当たりません。
自転車の運転手が事故に気づいていたかどうかは、事故現場付近の防犯カメラやドライブレコーダー映像など、客観的な情報をもとに判断されるものとみられます。
今回の事故に対してSNS上では「これ自転車の方は事の重大さに気づいてないだろ。これでひき逃げになるなんて俺も知らなかったわ」といった声のほか、「ほんと何も見てないで飛び出してくる自転車多すぎる」「これは強く取り締まってほしい」などの意見が寄せられました。
実は自転車とバスによる同様の事故はたびたび発生しており、2023年10月には愛知県名古屋市の道路において市営バスが直進していた際、対向車線で信号待ちをしていた車列の間から自転車が飛び出してバスと接触する事故も起きています。
この事故ではバスが自転車との接触を避けようと急ブレーキをかけたところ、バスの後方に座っていた52歳の女性が手すりに顔を打って額を切る軽傷を負いました。このケガの原因を作った自転車も現場から立ち去ったということです。
このように自転車の飛び出しによって事故を誘発するケースは決して少なくありません。自転車は運転免許なしで運転できる乗り物ではあるものの、誰もが事故を起こすおそれがあるという意識を持って運転すべきといえるでしょう。
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2026年4月1日からは、自転車の交通違反に対しても自動車と同様に「青切符」の制度が導入されます。特に悪質・危険な運転行為が青切符の対象であり、重大な事故につながるおそれの高い違反や、実際に交通の危険が生じた場合などは検挙される可能性があります。
自転車ユーザーは今一度、基本的な交通ルールについて確認しておくことが重要です。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。
















