タイヤはパッと見ると、どれも「黒くて丸いモノ」ですが、その中身は最先端テクノロジーの塊です。試乗記などでは「いいクルマはタイヤに依存しない」といった内容が書かれていることもありますが、実際はタイヤの性能によってクルマの走りは間違いなく変わります。その中でも「季節に関係なく安心して走りたい」と考えるユーザーにお勧めしたいのがオールシーズンタイヤです。

　多くの人が「四季を問わず履ける万能タイヤ」と思うでしょうが、実は半分正解で半分は間違い……。オールシーズンタイヤの本来の立ち位置は、年間のほとんどはドライ／ウエット路面を走行し、年に1～2度の積雪時も走行可能なタイヤ。つまり、基本は夏用タイヤで積雪性能はあくまでも“おまけ”です。

　ただ、そのおまけの性能がすこぶる高いのがミシュランの「クロスクライメートシリーズ」です。ちなみにミシュランではクロスクライメートを「雪も走れる夏タイヤ」と呼んでいますが、上記のような思想があるからです。

　そんなクロスクライメートが登場したのは2015年ですが、日本市場には2019年にクロスクライメート＋として導入されたのが初めてです。2021年には市場の成長に合わせてクロスクライメート2とSUVに最適化されたクロスクライメート2 SUVへと進化しています。

　　そして、今回10年の進化を盛り込んだ2つの最新作が登場。1つは正常進化モデルの「クロスクライメート3」、そしてスポーツという新たな価値をプラスした「クロスクライメート3スポーツ」です。今回は雪の性能ではなく、オールシーズンタイヤの基本となる夏の性能……ドライ／ウエットの実力を栃木県にあるGKNプルービンググラウンドで体感してきました。

　まずはクロスクライメート3（以下：CC3）です。ユーザーがオールシーズンタイヤに求める性能は「雪道での性能」、「非積雪路面（ドライ／ウエット）での性能」ですが、現在はそれに加えて「快適性（静粛性・乗り心地）」、「低燃費性能」も高いレベルが要求されています。つまり、より夏タイヤに近い総合バランスが求められているということです。

　そこでCC3は雪も走れる夏タイヤとしての「季節を問わない性能」をより引き上げつつ、シリーズ初となる転がり抵抗ラベリング「AA」獲得の「高い環境性能」とプレミアムタイヤ並みの「高い静粛性」、そしてそれらの性能が長く続く「高いロングライフ性能」を、最新技術を用いて実現させたと言います。ちなみに今回からCC2 SUVがラインナップから消えCC3に一本化されましたが、これは性能向上により車両カテゴリーで分ける必要がなくなったためだそうです。

　実際に走らせるとどうか？　いきなり結論ですが、CC3は「オールシーズンタイヤであることを忘れるレベル」の実力を備えたタイヤでした。具体的に説明していきましょう。