続いてクロスクライメート3スポーツ（CC3S）です。昨今オールシーズンタイヤはスポーツカーやプレミアムカーのユーザーからの興味・関心も高まっていますが、ニーズに合うタイヤが存在せず「食指が動かない」との声が多いそうです。そんなユーザーの求めるオールシーズンタイヤは雪道での性能に加えて非積雪路面（ドライ／ウエット）での「高速安定性」や「ハンドリング」といったスポーツ性能だと言います。

　そこでCC3Sは雪も走れる夏タイヤとしての「季節を問わない性能」は引き上げつつ、スポーツの名に恥じないスピードレンジ「Y」の「高いハンドリング性能」と、シリーズ初のウエットラベリング「a」獲得の「高い安全性能」、そしてプレミアムカーにふさわしい「高い静粛性」を、最新技術はもちろんパイロットスポーツシリーズの技術も惜しみなく水平展開させながら実現させたと言います。

　オールシーズンタイヤとスポーツ……これまで共存できなかった性能要件ですが、本当に両立できているのでしょうか？ まずCC3Sの強みの1つ「ウエットハンドリング」を体感します。GKNプルービンググラウンドのハンドリング路は道幅が狭く、コーナーのRが厳しい上に一定ではなく、タイヤにとって厳しい条件ばかりのコースです。さらに散水施設で路面はヘビーウエット状態……。

　タイヤの顔となるトレッド面はクロスクライメート3と共通項はありますが、よりシャープな印象。個人的には1997年に登場した初代パイロットスポーツを思い出しました。サイドはフルリングのプレミアムタッチが採用されており、オールシーズンタイヤ感は皆無。ちなみにサイドのデザインはデザイナーのアソビ心で雪とチェッカーフラッグが横並びで配置されていますが、このタイヤのキャラクターを表しているアイコンと言えるでしょう。

　このように見た目はスポーツしていますが、肝心な走りはどうか？　実は試乗前は「いくらミシュランでも本当に両立できるのか？」、「スポーツが名ばかりだったらどうしよう？」と期待より不安が上回りましたが、走り始めて一安心。と言うよりも「驚き」の連続でした。具体的に説明していきましょう。

　クロスクライメート3と同じく「オールシーズンタイヤであることを忘れるレベル」なのは言うまでもありませんが、クロスクライメート3スポーツは、その精度や正確性がより高いレベルにあります。
　

　直進時からタイヤが路面をつかんでいることを実感できるダイレクトな手応えに、ドッシリとした接地感、ステアリングを切ると指一本くらいの微小舵角でもスッとクルマが反応する応答性の高さと鋭さ、素早い操作を繰り返してもグリップを探ることなく狙った通りの反応、絶対的な限界の高さはもちろんだが限界に至るまでグリップに過度な変化がないことなどなど……。絶対的な性能に加えて、スポーツタイヤで重要な「一体感」や「意のまま」を高める要素……直結感／対話性／懐の深さなどは、ミシュランのスポーツタイヤのそれと変わりません。

　グリップはさまざまなミシュランのタイヤを履いた経験で言えば、パイロットスポーツ3とパイロット4の中間といった印象。ちなみに今回の試乗車（VWゴルフeTSI）ではクルマが負けている状況で、個人的には「ゴルフGTIの方がマッチングいいのでは？」と思ったくらいでした。

　ただ、ドライバーに伝わるグリップ感は最新のミシュランスポーツタイヤのようなネットリと路面に張り付く感じではなく、かつてのパイロットスポーツ3やeプライマシーのように、サラッとしているのに確実に路面を捉えている印象でした。