マツダ斬新「4ドア“クーペセダン”」が凄かった! 美しい「流麗フォルム」&豪華スポーティなインテリア採用! 直6エンジン搭載も想定された「VISION COUPE」とは
マツダのコンセプトカー「マツダ VISION COUPE」とはどのようなクルマなのでしょうか。
“お蔵入り”になったマツダの「FRクーペセダン」とは
マツダは、自動車文化を愉しむイベント「オートモビルカウンシル2025」にて、「MAZDA DESIGN STORY “心を揺さぶる、モノづくりへの追求”」と題して、未来の市販車デザインに大きく影響を与えた5台のコンセプトカーを展示しました。
今回は、そのうち「マツダ VISION COUPE」について紹介します。

マツダVISION COUPE(ビジョンクーペ)は、2017年10月に開幕した第45回東京モーターショーで、「マツダ魁 CONCEPT(カイコンセプト)」とともに世界初公開されたコンセプトカーです。
まず簡単に「マツダ魁 CONCEPT」を解説すると、ミドルSUV「CX-5」初代モデルより採用した「魂動デザイン」を深化させた新世代車の方向性を示したもので、翌年の2018年11月のロサンゼルスショーで世界初公開された現行型「マツダ3」へと発展しました。
一方、ビジョンクーペは、魂動デザインの未来を描いたものでした。
2010年からスタートさせた魂動デザインを全ての車種に取り入れることができた段階で、「VISION」モデルを製作することで未来のマツダ車の姿を見せたいと、2015年にコンセプトカー「マツダ RX-VISION(アールエックスビジョン)」を発表。
その第2弾となるのがビジョンクーペでした。
いずれもマツダ新世代モデル群となる市販車同様、デザインテーマ「魂動(こどう)-Soul of Motion」を沿ったものであり、この2台のVISIONモデルに、未来のマツダ車デザインの全てが込められています。
第一弾となる「RX-VISION」が次世代ロータリーエンジン「SKYACTIV-R」を搭載したラージ2ドアクーペだったのに対して、ビジョンクーペは、4ドアクーペに仕立てられました。
共通するのは、共にロングノーズを持つFRレイアウトであること。そのため、これらのコンセプトカーは、マツダファンだけでなく、クルマ好きの多くから注目されることになります。
何しろ、「RX-8」で途絶えていたマツダ上級FRモデルの復活の可能性が見えてきたのですから。
多くの反響を呼んだ2台に通じる次世代モデルの存在が、より具体的になってきたのは、2019年3月期決算説明会のことでした。
当時の資料にあった上級車向けプラットフォーム「ラージアーキテクチャー」には、直列6気筒搭載の文字があり、そこでロータリーエンジンではないFRの上級モデルが登場することが明らかとなり、ビジョンクーペの実車化が期待されます。
そこで「次期型アテンザはFRになる」や「トヨタセダンとの共有化の動きがある」など多くの憶測を呼ぶことになりました。
これは、ロータリーエンジン車を除けば、2000年に生産を終了したフラッグシップセダンの2代目「センティア」以来の復活となるうえ、当時は欧州ブランドでも続々と4ドアクーペが拡大されていた時期とも重なるだけに、期待が膨らむのも当然といえました。
しかし、翌年発生した新型コロナウィルス感染症の世界的な蔓延は、自動車のニーズにも変化を与えることになり、世界のセダン市場の縮小を加速させることになります。
その結果、マツダは直6エンジンを積む新世代ラージ商品群の第一弾モデルとして、ミッドサイズSUV「CX-60」を2022年3月に世界初披露したのを皮切りに、北米を主軸とした第2弾モデルのミッドサイズSUV「CX-90」を2023年1月に発表。
同じく北米主軸の第3弾モデルのミッドサイズSUV「CX-70」を、そして2024年4月に第4弾となる3列シートのミッドサイズSUV「CX-80」を投入しました。
現時点ではラージ商品群はこの4車種展開とされているため、事実上、4ドアクーペモデルは“お蔵入り”となってしまっています。
改めて、今回展示されたビジョンクーペを見てみると、力強い表現が重視されるSUVとは異なり、大型モデルでも伸びやかで上品なスタイリングが与えられ、静止状態でもドライバーの心を刺激し、走りの楽しさを予感させます。
外観上では、低いノーズによるスポーティなフロントマスクを始め、直6エンジンを連想させる長いノーズ、コンパクトなサイドガラスとクーペルーフによるスタイリッシュなフォルム、短いトンランクリッドへと集約していく流麗なボディライン。
シンプルな丸目基調のテールランプ、心地よいサウンドを予感させる美しいテールパイプなど、クルマ好きを刺激する要素に溢れています。
そしてインテリアも、タコメーターを中心とした3連メーターパネルやホールドの良さそうなスポーティなシートデザインなど、走りへの情熱を感じさえるアイテムを備えています。
これらの特徴には、今のラージSUVに受け継がれていない要素もあるため、4ドアクーペモデルがないことが残念でなりません。
ただ、「北京モーターショー2024」で発表された電動モデル「EZ-6」のような新たなセダンも仲間入りしているため、4ドアモデルの未来が失われたとも言い切れないのも確かです。
ビジョンクーペの物語には続きがあると信じて、苦境にあるマツダを応援したいと思うのは、筆者(大音 安弘)だけではないでしょう。
Writer: 大音安弘(自動車ライター)
1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後、フリーランスになり、現在は自動車雑誌やウェブを中心に活動中。主な活動媒体に『ナビカーズ』『オートカーデジタル』『オープナーズ』『日経トレンディネット』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。
どこかのメーカーが四角い車体で丸いヘッドライトの車を出してくれないかな。