「めちゃ…待ってました!」 やっと「トヨタ・クラウン」が勢揃い! クロスオーバー/スポーツ/セダン/エステート、同じクラウンでも全然違う! 徹底解説!【試乗記】

「エステート」その名は18年ぶりに復活したが…純ワゴンではなくワゴン×SUVに

 そして、最後は理性/基盤の「エステート」です。

 ネーミングは11代目のそれを踏襲していますが、ワゴンとSUVの融合をコンセプトに生まれ変わったモデルとなります。

 エクステリアは5m近い全長とロングホイールベースを活かした伸びやかなフォルムが特徴ですが、バンパーイングリルの処理やエモーショナルになり過ぎないシンプルでクリーンな面構成から他のクラウンたちと比べるとややカジュアルな印象です。

 インテリアはクロスオーバー/スポーツに準じますが、PHEVのみに設定される「グレイッシュブルー」は他のモデルにも水平展開したくなるくらい、素敵なコーディネイトです。

 後席はセダンに匹敵する足元スペースと余裕の頭上スペースを確保。ガラスルーフを開くとより開放感ある空間となりますが、特等席ながらもおもてなし装備がシートヒーターくらいなのが残念。

 注目のラゲッジルームは後席を倒すと2mの広大でフラットな空間が生まれます。大事なモノの積み込みだけでなく、最近話題の車中泊も楽々こなせるスペースと言えるでしょう。

注目のラゲッジルームは後席を倒すと2mの広大でフラットな空間
注目のラゲッジルームは後席を倒すと2mの広大でフラットな空間

 パワートレインはHEVとPHEVを用意するのはスポーツと同じですが、HEVはボディサイズや車両重量アップ、積載性をなど考慮してフロントモーターはPHEVと同じ182ps/270Nmを搭載しています(クロスオーバー/スポーツに対して約5割増し)。

 実際に走らせると、PHEVのスーッと滑らに走る質の高さは言わずもがなですが、HEVも負けていません。

 具体的には実用域でEV走行の粘りが増す→エンジンが始動しても回転を上げずにグッとトルクで加速していく“余裕”がある→静粛性も高い→高級車らしいと、スペック以上にメリットが多いと感じました。

 逆を言えば、クロスオーバー/スポーツもこのシステムにアップデートすべきでしょう。

 フットワークは「真っすぐ走るのに、よく曲がる」と言う一粒で二度美味しい走りに仕上がっています。

 その味付けは「クロスオーバーより俊敏、スポーツよりも穏やか」と言う絶妙な塩梅です。個人的にはロングホイールベースをカバーするDRSの制御が少々主張しすぎな感があるので、もう少し穏やかでいいので自然なほうがエステートらしいかなと。

 乗り心地は入力の優しさ、シットリとした足の動き、時間ではなくストロークで抑えるショックの吸収性などはセダンに匹敵。

 個人的には凹凸が続くようなギャップでのバネ下のバタつきの少なさや乗員の体の揺すられにくさはシリーズトップだと思いました。この辺りはPHEV/HEV共通の印象ですが、AVS装着のPHEVのほうがより上質かなと。

 このようにエステートはシリーズの中でフレキシブルな用途に応じるユーティリティと走りから、「新グランドツアラー」と呼びたくなる一台だと思いました。

「エステート」その名は18年ぶりに復活したが…純ワゴンではなくワゴン×SUVに
「エステート」その名は18年ぶりに復活したが…純ワゴンではなくワゴン×SUVに

 そろそろ結論に行きましょう。

 今回4つのクラウンに乗って思った事は、クロスオーバーの「気負いなく高性能を味わえる」を中心に、与えられたキャラクターが見た目・走りを含めて解りやすく表現されている事です。

 歴代クラウンを振り返ると多彩な車種バリエーションを備えていた時代は味がどれも変わらず。

 一方、直近のクラウンは1車型(=セダン)でキャラクター分けをしていましたが、やはり走りだけでは差別化がやり切れず、結果的に中途半端になってしまい。

 そういう意味では、16代目は各々に見合ったデザインと走りの味の合わせ技ができた事で、「クラウンらしさ」を更に突き詰める事ができたと思っています。

 要するに、16代目の「変革と挑戦」はクラウンのDNAをより濃厚にしたと言ってもいいのかもしれません。

 ちなみに16代目のポジショニングの中で、空欄なのが感性/基盤です。

 その言葉から想像するに「奇を衒わない正統な派生モデル」となりますが、一体どのようなモデルが考えられるでしょうか。

 個人的には快速ステーションワゴン(11代目エステートの生まれ変わり!?)、もしくは流麗な2ドアクーペ(スープラが復活したから、次はソアラ!?)などがラインアップされたら、より魅力的だと思いませんか。

【画像】超かっこいい! これが「赤いクラウンのワゴンSUV」です。画像を見る!(30枚以上)

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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