なぜ「ネコ耳」付いてる? カタチが“四角じゃなく丸い”の? 街中で見かけるタンクローリーの謎
タンクローリーには、断面が楕円形のタンクが採用されています。容積効率だけを考えれば四角の方が有利にも思えますが、なぜこのような形状のタンクが採用されているのでしょうか。
強度と安定性のバランス!タンクローリーのタンクが楕円形の理由とは?
街を走るタンクローリーを見て、「なぜタンクは丸いのか」と疑問に思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
またタンクローリーのなかには尖った猫耳のようなものが付いていることがありますが、それにはどのような意味があるのでしょうか。

一般的にトラックの荷室は四角い形状をしており、スペースを最大限活用するための設計になっています。
しかし、タンクローリーのタンクは潰れた円筒形のような形をしており、一見すると無駄な空間があるように見えます。
全長×全幅×全高を最大限に活用するなら、荷室は四角い方が効率的なはずです。
では、なぜタンクローリーのタンクはこのような形状になっているのでしょうか。
タンクローリーなどの特装車の製造を手がける極東開発工業の担当者は、次のように話します。
「容積では四角が最も積載量が多くなりますが、角部に力が集中します。
そのため、力を分散させることを考えると真円が理想的です。
しかし、今度はそうすると全高が高くなって、走行安定性が悪くなり、容積も確保できません。
結果、落としどころとして楕円に落ち着いたという形です」
タンクローリーは通常のトラックとは違い、ガソリンや水などの流動性が高い積荷を運搬する車両です。
また、タンクローリーは積載重量が大きくなる傾向があります。
さらに、ガソリンなどを運搬する場合は内部の液体が動き、荷重の変化によって重心が傾くおそれも。
そのため、少しでも重心を安定させるため、全高を抑えた楕円形が採用されているというわけです。
一方で、全てのタンクローリーが楕円形というわけではありません。
タンクローリーでは液化した高圧ガスなども運搬し、その車両では断面が真円形のタンクを採用しています。
高圧ガスタンクは、タンクローリーとは異なり、内部の圧力が極めて高くなるため、最も均等に圧力を分散できる円柱形の形状が求められます。
ガスは液体と違ってタンク全体に充満しており、走行中にタンク内で大きく動くことがないため、走行安定性の懸念が少なくなります。
強度を最優先して設計された結果、円柱形の形状が採用されているのです。

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ちなみに、危険物を取り扱うことの多いタンクローリーには、安全性を担保するため、他にも形状の面で工夫が施されています。
それは、「側面枠」と呼ばれる部品で、タンクローリーを前後から見た時にまるで猫耳のように見えるパーツのことです。
タンクローリーはタンクの形状から、横転した際にさらに転がって転覆してしまいやすいという性質があります。
万一車両が横転事故を起こした際に、上部の注入口から内容物が漏れ出してしまった場合、内容物の種類によっては大事故に繋がる危険性があります。
側面枠は車両の転覆によるさらなる転がりやそれに伴う内容物の漏れ出しやを抑えることが目的で、各車両に設置することが義務付けられています。
街でタンクローリーを見かけた際には、その形状に込められた技術的な工夫や安全性への配慮を思い浮かべてみると、新たな視点でクルマを楽しめるかもしれません。