クルマの運転中にスマートフォンを注視したり、操作や手で持った通話をする行為を「ながらスマホ」と言い、2019年12月から厳しい罰則が課されるようになっています。
　
　スマホ操作や通話によって、ハンドル操作や周囲への注意がおろそかになり、事故を招きかねないからです。
　
　では、「運転中」というのは、「信号待ち」のあいだも含まれるのでしょうか。走行していないので、事故を起こす危険も無いと思うかもしれません。実際どうなのでしょうか。

　法律では、「ながらスマホ」のどんな状態が違反行為に該当するのでしょうか。

「ながらスマホ」に関する規定は、道路交通法第71条 第5号の5で「無線通話装置を通話のために使用し、または画像表示用装置を注視しないこと」と明記されています。したがって、運転中の画面注視や手に保持して通話する行為は、違反行為に該当します。

　一方、“違反に該当しない行為”は、どのような行為なのでしょうか。同項目内では「当該自動車が停止しているときを除き」と明記されているのです。

　これが「信号待ち」も含むのか、「運転を中止して駐車スペースで休んでいる状態」を指すのか、悩むところです。

　警視庁の交通管理窓口に聞いたところ「赤信号での一時停止も、完全に停止している状態となります。」とのことでした。

　したがって、赤信号での停止状態は違反行為に該当しません。路肩に停車中の場合と同様です。

　また、スマートフォンホルダーで固定し、ハンズフリーでの通話も違反行為にはあたりません。

　ただし、ハンズフリーは都道府県の条例に該当し違反行為となる場合もあります。例えば、東京都において大音量で音楽を流したり通話をする行為は、救急車のサイレンなど周囲の音が聞こえなくなるため違反行為となります。

　一時停止状態でスマートフォンの注視・操作は、信号が変わるタイミングなど周囲の的確な状況判断が遅れてしまい、交通の流れを乱すなど悪い影響を与える状態です。また、運転に集中しているとはいえず、非常に危険な状態であり、極力控えるほうがいいでしょう。

　さらに、赤信号で一時停止する前の減速時や発進後におけるスマホの注視・操作は、わずかな時間であっても、違反行為に該当し安全にも支障をきたします。もちろん、渋滞時のノロノロ運転・止まったり動いたりを繰り返す状態で操作を続ける行為は、明確に「ながらスマホ」に該当します。

　警察庁のデータによると、運転手が2秒以上スマートフォンの画面を注視すると、危険を感じ前方を確認するという研究結果があります。2秒間で進む距離は、時速60km／hの場合約33.3mとなります。

　約30m前方を見ないまま走る行為は、大変危険な状態です。歩行者や停止車両が目に入った際に、ブレーキを踏むタイミングが間に合わなくなるケースが懸念されます。「ながらスマホ」は大きな事故につながる可能性があるので、ほんの数秒間だからと軽視して行ってはいけません。

「ながらスマホ」に対する罰則は、6ヶ月以下の懲役、または10万円以下の罰金となります。反則金は、大型車で2万5000円で普通車1万8000円となり、違反点数は3点です。

　さらに、もし「ながらスマホ」により事故につながる「危険な行為」が生じた場合、1年以下の懲役、または30万円以下の罰金となります。この場合の違反点数は6点で、もはや青切符で済まされる軽微な違反「反則行為」としては扱われません。問答無用で、刑事事件となります。

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　このように「ながらスマホ」が厳罰化された背景には、事故やそれによる死傷案件が多発している状況があります。

「ながらスマホ」による死亡・重傷事故の発生状況は、2021年以降から増加傾向にあり、2023年で122件発生し、全死亡事故中で1.24％、つまりほぼ80件に1件の割合にもなっています。

　死亡事故率は、スマホ使用の場合には、使用なしと比較して4倍近くに高まることが分かっています。

　自分自身や他の道路利用者の大切な命を守るためにも、クルマを安全な場所に必ず停止してからスマートフォンの操作を行いましょう。