タクシー乗車中「嘔吐」 乗客は「お詫び代」をビタ一文も払わない? 継続運行不可で“ドライバー泣き寝入り”の現状… 今後変わっていく兆しも
タクシーの車内で嘔吐してしまい、汚してしまうという事例があります。タクシー会社はこうした損害を補償する規定を特に定めておらず、タクシー運転手が“泣き寝入り”状態になっていましたが、今後この慣例が変わりそうです。
タクシーで嘔吐も「請求なし」 ドライバー“泣き寝入り”は今後減るのか
泥酔状態でタクシーに乗ったことで、車内で嘔吐してしまい、タクシーを汚してしまうという事例があります。
しかし、現状ではタクシー会社はこうした損害を補償する規定を特に定めておらず、タクシー運転手やタクシー会社が“泣き寝入り”せざるを得ないこととなっています。
夜遅くの飲み会。終電の時間を気にしつつも、つい羽目を外して飲みすぎてしまったり、2件目、3件目のお店に付き添わないといけなかったり…。そうこうしているうちに、終電を逃すこともあります。
そうしたときにタクシーを利用して帰宅するという手段は、やや費用がかさむものの、確実かつ快適に自宅まで行くことができるため、進んで利用するという人もいるでしょう。
主に終電後の繁華街などには、こうした“酔客”の利用が多いためにタクシーが集結する光景もしばしば見られます。
しかし、タクシードライバーにとって酔客は、必ずしも“良いお客さん”ではない場合があります。
自宅の場所がわからなくなるほどの酩酊状態となってしまったり、目的地に着いても起きないといった問題も起こるようです。さらに、お酒で抑制が効かなくなり、タクシードライバーに暴言を吐いたりするなど、悪絡みする人もいます。
特に厄介な存在は、車内で嘔吐する乗客です。東京都の大手タクシードライバーはこうした乗客と遭遇したことをこのように振り返ります。
「10年近くドライバーをしていますが、車内で吐かれたことは今までに何度かありました。少量ならまだしも、座面からフロアマットまで汚れた場合は、そのまま次のお客さまを乗せるわけにはいかず、いったん回送にして営業所に戻って掃除します。
夜の稼ぎ時にやられると、ただの損でしかないので悔しいですね」
また、別のドライバーも以下のように話します。
「営業所には整備工場があるので、営業所に戻ってのシートの交換は大変な作業ではないのですが、場合によっては車内にニオイが残ってしまうときもあります。
回送にして戻る間も『もしかしたら長距離のお客さまがいたかもしれないのに』と考えることはよくありますが、仕方ないので完全に泣き寝入りで、補償なども一切もらえません。
ただ、お客さまから気持ちとしていくらかのお詫びを受け取ったときもあり、聞いた話ですが、個人タクシードライバーのなかには補償料を取っている人もいるそうです」
車内が汚れてしまうと次の乗客を乗せられないため、そのままの状態での運行はできません。すぐさま簡易的に清掃したあと、営業所に戻る必要があります。
このときに乗客の閑散時でかつ営業所に近い場合はまだしも、金曜日の終電後などタクシー需要が多く、遠い行先を告げられた場合は、営業所まで戻る時間が大幅なロスになります。
しかし、タクシー会社によっても方針が異なることがあるとはいえ、乗客から直接の補償を受けることは難しいようで、泣き寝入り状態にある会社やドライバーも多いようです。
一方で、こうした慣例を変えようとする動きも出ています。
東京都の日の丸交通は2024年9月1日から、嘔吐等による営業損害を乗客に請求していく方針にしたと明らかにしています。
これは国が定める一般乗用旅客自動車運送事業運送約款 第10条の「当社は、旅客の故意若しくは過失により又は旅客が法令若しくはこの運送約款の規定を守らないことにより当社が損害を受けたときは、その旅客に対し、その損害の賠償を求めます。」(原文ママ)に基づいたもの。
具体的には、乗客が嘔吐などの迷惑行為によって車両が汚損され、営業を中断せざるを得ない場合、運送約款に基づき、車両のクリーニング代及び休車損害として、一律2万円の賠償金を請求するといった内容になっています。
さらに、過剰な請求を防ぐため、全車両にエチケット袋を常備して嘔吐などに備えることも明かしています。
現在のところ、この動きが東京の大手4社をはじめとする他タクシー会社や組合などへ広がった例はないものの、乗客の不注意が原因にも関わらず、吐いた本人には一切の責任が生じず、ただタクシー会社やドライバーだけが不利益を被っていた現状が、今後変わっていきそうです。
そらそうだろ!
タクシードライバーを守る法律が必要だと思います。