ミシュラン「e・PRIMACY」「PILOT SPORT EV」をテストコースで試乗 電動化時代に向けた最新タイヤの実力は?

摩耗状態のタイヤでフルブレーキ!その時の「e・PRIMACY」の実力は?

 続いて散水路でのウエットブレーキングでは、14インチの「e・PRIMACY」と他社の同等性能のタイヤを装着したサクラで、新品と残り溝を2mmに減らしたタイヤでどれぐらい落ち込むのかを比較しました。2mmというと車検に通らないレベルです。車両に搭載された計測機器で、70km/hから完全停止までの所要時間および距離と、アベレージおよびピークの減速Gが表示できるようになっています。

ウエット路面でのブレーキテストでは、新品状態と摩耗状態の比較を実施
ウエット路面でのブレーキテストでは、新品状態と摩耗状態の比較を実施

 スタート地点はドライ路面で、まずそこで発進時に空転するかしないかという違いがありました。さらにウエット路面で車速が70km/hを超えたところでフルブレーキングすると、「e・PRIMACY」は、ABSの作動が緻密で、初期から停止するまでしっかり減速Gが維持されるのに対し、他社のタイヤは全体的に制動感が低く、なかなか止まってくれない印象でした。

 ざっくりいうと、やはり「e・PRIMACY」の新品が突出していて、同銘柄の残り溝2mmだとさすがに新品ほどの減速感はないにせよ、制動距離は奇遇にも他社タイヤの新品とほぼ同じでした。ところが、他社タイヤの残り溝2mmは、「e・PRIMACY」と比べると、制動距離がはっきりと大きく伸びてしまいました。あくまで特定の条件における一つの結果なので、数字はあまり具体的にできず、参考程度にしていただければと思いますが、体感したことが現場で機器に表示された数字と見事に一致している傾向が見られました。

 とにかく「e・PRIMACY」の新品時の性能が高く、しかも2mmまで減っても落ち込みが比較的小さいことが印象的でした。長期間使っても高い安全性が維持されると考えてよいでしょう。加えて、ミシュランならサステナブルなタイヤが苦手としそうなウエット路面でもしっかり走れることがよくわかりました。

クラウンクロスオーバーRSには、21インチサイズのミシュラン「e・PRIMACY」が純正採用されている
クラウンクロスオーバーRSには、21インチサイズのミシュラン「e・PRIMACY」が純正採用されている

 次いで、「e・PRIMACY」を装着したクラウンクロスオーバーRSで外周路を走り、快適性とハンドリングのよさを確認しました。

 クラウンクロスオーバーRSには、225/45R21と最近よくある大径なのに幅が細く低扁平(へんぺい)サイズの「e・PRIMACY」が純正装着されています。市販品に対して本来の性能を落とすことなく、NVH(=ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)性能をはじめ、燃費や耐摩耗性を高めるためのチューニングが施されています。

 RSということは、強力な2.4Lターボエンジンと組み合わされたハイブリッドシステムを搭載するほか、後輪操舵(そうだ)についても標準グレードに比べてよく曲がるようにされているのですが、それにもかかわらずこういう場で攻めた走りを試してもしっかり応えてくれることがわかりました。素早いステアリング操作にも応答遅れなくついてきて、リアの揺り戻しもなく、ヨーの収束が速く、荒れた路面を走ってもフラットで、乗りやすくてバランスのよい上質な走りを実現しています。こうした高級車にふさわしく、静粛性もおおむね良好だったように思います。

255/45R20 サイズの「PILOT SPORT EV」を装着したIONIQ 5で外周路のバンクを走行中
255/45R20 サイズの「PILOT SPORT EV」を装着したIONIQ 5で外周路のバンクを走行中

 さらには、「PILOT SPORT EV」を装着したIONIQ 5でも、同じように攻めた走りを試してみたところ、BEVゆえ車体が重く加速も瞬間的に大きなトルクがかかるにもかかわらず、物ともせず一体感のある走りを楽しむことができました。これほど操縦安定性が高いと乗り心地が硬いのではと危惧していたのですが、荒れた路面を含めこのコースを走った限りでは問題ないように感じました。

 こうした技術の進化と一つ一つの積み重ねにより、いつか本当に全てがサステナブルなタイヤになる日が訪れることと思いますが、そのときには性能面でも大きな進化を果たしていることが期待できそうだと今回の試乗でつくづく感じた次第です。

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