車のブレーキ「フェード現象」なぜ起こる!? 「踏めば止まる」は当たり前か 命を守る「重要保安部品」について考える

クルマのブレーキは、安全運転のための非常に重要な保安部品ですが、その構造や仕組みについてはあまり知られていないようです。なかでも「フェード」が発生してしまうと、性能を損なうばかりか命の危険にもつながりかねません。

使いすぎ厳禁! 「ベーパーロック」や「エア圧低下」が起きるメカニズムとは

 改めて言うまでもなく、クルマのブレーキはとても重要な装置です。アクセルペダルが壊れてもクルマが動かなくなるだけですが、万が一ブレーキが効かなくなったら、命の危険をともないます。

 今回は、ブレーキで発生する可能性がある「フェード」の仕組みとともに、ブレーキの危険なトラブルについて紹介します。

日ごろ私たちの安全な走行を支えてくれているクルマのブレーキについて、改めて考えてみませんか[画像はイメージです]
日ごろ私たちの安全な走行を支えてくれているクルマのブレーキについて、改めて考えてみませんか[画像はイメージです]

 ブレーキは、摩擦によってクルマの速度を下げる装置です。

 ホイールの内側にある円盤状の部品「ブレーキディスク」や、円筒形の部品「ブレーキドラム」に、ディスクの場合は「ブレーキパッド」、ドラムの場合は「ブレーキシュー」という摩擦材を押し付けることで機能します。

 この時、クルマを動かしている運動エネルギーが熱エネルギーに変換されます。

 寒い時に手をこすると手が温まるのと同様の原理で、ブレーキディスクやブレーキドラムも温度が上がります。

 平常時はこの熱は空気によって冷やされますが、ブレーキを酷使すると温度が非常に高くなり、時には数百度もの高温になることもあります。

 夜間の自動車レースでは、熱せられたブレーキディスクがほんのり赤く光って見えることすらあるのです。

 そんな高温になると、柔らかい金属や樹脂を固めたブレーキパッドやブレーキシューは、ひとたまりもありません。

 ときにはブレーキパッドやシューが煙を出しながら、燃えてしまうことがあります。

 その際、ブレーキパッドとブレーキディスク、あるいはブレーキシューとブレーキドラムの間に、燃えて発生したガスが入り込み、十分な摩擦力が得られなくなってしまうことがあります。これを「フェード現象」といいます。

 ブレーキディスクやドラムが冷えれば収まる現象ですが、減速しようとブレーキを踏み続けていると、いつまでたっても同じ状況が続いてしまいます。

※ ※ ※

 乗用車や小型トラックの場合、ブレーキペダルとブレーキ装置の間を結ぶパイプには「ブレーキフルード」という液体が入っています。

 ブレーキペダルを踏み込むとブレーキフルードが押し出されて、ブレーキフルードはパイプを通じて各車輪にあるブレーキへ送られます。

 各車輪のブレーキには、そのブレーキフルードの圧力が伝わって、ブレーキパッドやブレーキシューを押し出しているのです。

 ところが、ブレーキの使い過ぎでブレーキパッドやシューが過熱すると、その熱がブレーキフルードにも徐々に伝わってきます。

 するとブレーキフルードが沸騰、パイプの中に泡が発生します。

 その泡はつぶれるだけで力を伝えないため、いくらブレーキペダルを踏んでもブレーキパッドやシューを押し付けられなくなってしまうのです。

 こうなってしまうと、ブレーキペダルをいくら踏んでもブレーキが効かなくなる現象が起こります。

 この現象を「ベーパーロック」(ベーパーロック現象)と呼びます。

 また大型トラック・バスなどの場合には、ブレーキフルードの代わりに加圧した空気を使用するものがあります。

 加圧空気はポンプで作られ、専用タンクの中に蓄えられています。

 ブレーキペダルを踏むと加圧空気がブレーキ装置に送られて、ブレーキが作動する仕組みです。

 加圧空気をつくるポンプやタンクは、加圧空気を十分に作り出せるように設計されています。

 しかし、ドライバーがブレーキペダルを何度も踏んだり、ポンプの機能が低下するといった故障が発生していると、ポンプによる空気の供給が間に合わなくなる「エア圧の低下」が発生することがあります。

 空気圧が不足すると、ブレーキペダルを踏んでもブレーキが十分に作動しなくなってしまうのです。

 ブレーキフルード、加圧空気のいずれの場合でも、ブレーキペダルの操作のしすぎは禁物です。

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