車のブレーキ「フェード現象」なぜ起こる!? 「踏めば止まる」は当たり前か 命を守る「重要保安部品」について考える
クルマのブレーキは、安全運転のための非常に重要な保安部品ですが、その構造や仕組みについてはあまり知られていないようです。なかでも「フェード」が発生してしまうと、性能を損なうばかりか命の危険にもつながりかねません。
使いすぎ厳禁! 「ベーパーロック」や「エア圧低下」が起きるメカニズムとは
改めて言うまでもなく、クルマのブレーキはとても重要な装置です。アクセルペダルが壊れてもクルマが動かなくなるだけですが、万が一ブレーキが効かなくなったら、命の危険をともないます。
今回は、ブレーキで発生する可能性がある「フェード」の仕組みとともに、ブレーキの危険なトラブルについて紹介します。
![日ごろ私たちの安全な走行を支えてくれているクルマのブレーキについて、改めて考えてみませんか[画像はイメージです]](https://kuruma-news.jp/wp-content/uploads/2024/05/20230515_drive_Highway_001.jpg?v=1684138398)
ブレーキは、摩擦によってクルマの速度を下げる装置です。
ホイールの内側にある円盤状の部品「ブレーキディスク」や、円筒形の部品「ブレーキドラム」に、ディスクの場合は「ブレーキパッド」、ドラムの場合は「ブレーキシュー」という摩擦材を押し付けることで機能します。
この時、クルマを動かしている運動エネルギーが熱エネルギーに変換されます。
寒い時に手をこすると手が温まるのと同様の原理で、ブレーキディスクやブレーキドラムも温度が上がります。
平常時はこの熱は空気によって冷やされますが、ブレーキを酷使すると温度が非常に高くなり、時には数百度もの高温になることもあります。
夜間の自動車レースでは、熱せられたブレーキディスクがほんのり赤く光って見えることすらあるのです。
そんな高温になると、柔らかい金属や樹脂を固めたブレーキパッドやブレーキシューは、ひとたまりもありません。
ときにはブレーキパッドやシューが煙を出しながら、燃えてしまうことがあります。
その際、ブレーキパッドとブレーキディスク、あるいはブレーキシューとブレーキドラムの間に、燃えて発生したガスが入り込み、十分な摩擦力が得られなくなってしまうことがあります。これを「フェード現象」といいます。
ブレーキディスクやドラムが冷えれば収まる現象ですが、減速しようとブレーキを踏み続けていると、いつまでたっても同じ状況が続いてしまいます。
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乗用車や小型トラックの場合、ブレーキペダルとブレーキ装置の間を結ぶパイプには「ブレーキフルード」という液体が入っています。
ブレーキペダルを踏み込むとブレーキフルードが押し出されて、ブレーキフルードはパイプを通じて各車輪にあるブレーキへ送られます。
各車輪のブレーキには、そのブレーキフルードの圧力が伝わって、ブレーキパッドやブレーキシューを押し出しているのです。
ところが、ブレーキの使い過ぎでブレーキパッドやシューが過熱すると、その熱がブレーキフルードにも徐々に伝わってきます。
するとブレーキフルードが沸騰、パイプの中に泡が発生します。
その泡はつぶれるだけで力を伝えないため、いくらブレーキペダルを踏んでもブレーキパッドやシューを押し付けられなくなってしまうのです。
こうなってしまうと、ブレーキペダルをいくら踏んでもブレーキが効かなくなる現象が起こります。
この現象を「ベーパーロック」(ベーパーロック現象)と呼びます。
また大型トラック・バスなどの場合には、ブレーキフルードの代わりに加圧した空気を使用するものがあります。
加圧空気はポンプで作られ、専用タンクの中に蓄えられています。
ブレーキペダルを踏むと加圧空気がブレーキ装置に送られて、ブレーキが作動する仕組みです。
加圧空気をつくるポンプやタンクは、加圧空気を十分に作り出せるように設計されています。
しかし、ドライバーがブレーキペダルを何度も踏んだり、ポンプの機能が低下するといった故障が発生していると、ポンプによる空気の供給が間に合わなくなる「エア圧の低下」が発生することがあります。
空気圧が不足すると、ブレーキペダルを踏んでもブレーキが十分に作動しなくなってしまうのです。
ブレーキフルード、加圧空気のいずれの場合でも、ブレーキペダルの操作のしすぎは禁物です。




























