“金属製品”も「プリンター」で作れるってマジ? 「自動車」では何に使われてる? ホンダの「金属3Dプリンター技術」の展望とは
本田技術研究所が2026年2月27日に、和光研究センターで金属3Dプリンター技術に関する報道陣向け見学会を開催しました。ここでは、同社が約13年前から取り組んでいる金属アディティブマニュファクチャリング(AM)技術の現状が明らかになりました。
ホンダの先行研究「AM技術」って?
本田技術研究所が2026年2月27日に、和光研究センターで金属3Dプリンター技術に関する報道陣向け見学会を開催しました。
ここでは、同社が約13年前から取り組んでいる金属アディティブマニュファクチャリング(AM)技術の現状と、将来的な量産車への適用に向けた研究開発の進捗について詳しく説明されました。

金属3Dプリンターの“難しさ”
今回は、同研究所で統括機能センター試作室のチーフエンジニアを務める石本和三氏が、ホンダの金属3Dプリンター技術開発への取り組みについて詳しく説明してくれました。
同社でも研究が進む、現在の金属3Dプリンターの主流となっているLPBF(レーザー粉末床溶融結合法)では、0.01mmから0.05mm程度の非常に細かい金属粉末を薄く敷き、レーザーで溶融させながら積層して形状を作り上げます。
髪の毛の直径が約0.1mmであることを考えると、いかに微細な粉末を使用しているかが分かります。
しかし、この技術には大きな課題があります。石本氏は造形プロセスの動画を示しながら「レーザーの熱で溶けた金属が蒸発して金属蒸気になり、黒いモヤが出てレーザーの照射を邪魔する」と説明しました。
また、溶融時に飛び散る金属粒子のサイズが元の粉末より大きくなってしまい、これが造形品質に悪影響を与える問題についても教えてくれました。レーザー条件の最適化が極めて重要になるとのことで、これをうまく制御し、高品質な製品を作れるようにすることが、各メーカーの腕の見せどころというわけです。
コスト面での課題も深刻です。従来部品と比較して20倍から場合によっては100倍のコストがかかることがあるようです。
金属3Dプリンター自体も、高額なものは約20億円、一般的に使用される機器でも2億円から5億円の投資が必要になるほか、金属粉末も「日本で買うとキロ1万円程度する」とのことでかなり高額です。
金属3Dプリンターは何に使われている?
今回の見学会では、世界各社の金属3Dプリンター活用事例も紹介されました。
例えばNASAでは、宇宙用エンジンに特殊な製法と粉末を組み合わせることで、高温時の変形耐性を従来比1000倍向上させることに成功しています。これにより、SpaceXのような再利用可能ロケットのエンジン実現に貢献しています。

また、航空機分野では、GEがプロペラ機のタービン部品に金属3Dプリンターを活用し、従来技術では不可能な最適形状と材料特性を実現することで燃費とパワー向上を両立させています。
自動車業界では、BMWがロールスロイス向けの小型継手部品に金属3Dプリンターを採用しています。
ことホンダでは、現在F1や航空機など少量多品種で高性能が要求される分野から適用を進めているといいます。
ホンダの独自アプローチと開発戦略
ホンダの金属3Dプリンターに対する研究開発は2010年頃から開始され、2015年から本格化したといいます。
石本氏は「ホンダは量産レベルでお客様に安定してお届けできる価格帯の商品に3Dプリンターを使って良いものを届けたい」と述べ、現在のホンダ、そして他社とは異なるアプローチを取っていきたいという今後の展望を強調します。

ではホンダの金属AM開発は何が優れているのでしょうか。これについて石本氏は、「3Dプリンターを使って自由な形状設計ができる人、専用材料を開発できる人、新しいAM手法を考えて装置化できる人、市販装置を高いレベルで使いこなせる人、この3つが揃っている企業はなかなかない」とコメント。つまり、設計、材料、製造プロセスの3つの要素を社内で一貫して手がけられるということです。
今後の展開としてホンダは、航空機などの少量生産品だけでなく、一般ユーザーが購入可能な製品への適用を目指しています。その開発目標は、大きく2つの軸で整理されています。
一つは商品魅力の向上。MM思想(マン・マキシマム・メカ・ミニマム)を3Dプリンターで加速することです。例えばラジエーター部品では、従来サイズから大幅に小型化することで人のスペースを拡大したり、軽量化により車以外のモビリティも高性能化したりすることができます。
もう一つはものづくりの進化です。従来の大型金型による大量生産・大量在庫型から、1台で多品種対応可能な3Dプリンターによりコンパクトな工場、短納期、無在庫を実現できます。
※ ※ ※
今回の見学会では、実際の金属3Dプリンターが置かれている研究室も見ることができました。この研究室には7台の金属3Dプリンターが設置され、温度25度、湿度40%以下に保たれています。造形品質に影響する環境要因を厳密に管理しているのです。
装置は大型機から実験用の小型機まで幅広く揃えられており、完成品をその場で材料試験できる設備として、材料組織の観察装置や引張試験機も併設されていました。
長らく続くホンダの金属3Dプリンター技術は、F1という極限環境での実用化を足がかりに、量産車両への展開を目指す段階にあります。
今後も同施設での研究を続け、技術的課題の解決とコスト削減を実現し、いつか我々一般人が使うような商品にも金属3Dプリンターによって作られた製品が現れることでしょう。
Writer: くるまのニュース編集部
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