全長5m超でも問題なし!? トヨタ新型「クラウンセダン」なぜ大型化する? 巨大ボディじゃなきゃダメな理由とは

FCEVになり水素タンクを搭載する場所が必要だった!

 新型クラウンセダンが大型化されたもうひとつの理由は、パワーユニットとして、ハイブリッドのほかに燃料電池(FCEV)も用意することです。つまり新型クラウンセダンは、燃料電池車の「MIRAI(ミライ)」が備えるメカニズムを収納する必要があるのです。

 ミライは北米などの海外でも販売されており、ボディサイズは、全長4975mm×全幅1885mm×全高1470mm、ホイールベースは2920mmです。

16代目「クラウン」は4タイプを設定
16代目「クラウン」は4タイプを設定

 ミライは3本の高圧水素タンクをボディの比較的低い位置に搭載して、このうちの1本は、後席の下側に横向きに配置されています。そうなるとワイドな全幅が必要です。

 新型クラウンセダンにミライと同様の燃料電池システムを搭載するには、とくに全幅を拡大する必要がありました。

 それにしても、新型クラウンセダンがメルセデス・ベンツEクラス以上にボディを大型化して、販売に支障はないのでしょうか。販売店に尋ねると以下のように返答されました。

「全長が5mを上まわり、全幅も約1.9mまで拡大されると、マンションの駐車場には収まらない可能性が高いです。

 今までのクラウンは、日本の環境にピッタリな上級セダンでしたが、新型クラウンセダンは大きすぎるでしょう。

 SUVの設定も含めて、新型クラウンは従来とはかなり違うクルマになっています」

 それなら新型クラウンセダンはまったく売れないのでしょうか。

「そうとも言い切れません。新しいオフィスビルは、駐車場も広いです。自治体の新庁舎も、駐車スペースに余裕を持たせています。法人や自治体のお客さまなら、このサイズでも購入できるでしょう」

※ ※ ※

 従来のクラウンセダンは、ボディサイズからデザインまで、国内市場を大切にした上級セダンでしたが、その日本のユーザーに対する思いが、新型では薄れたように感じます。

 新型クラウンは生き残りを賭けて、日本のユーザーから離れ、海外市場へ旅立ったのです。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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