なぜダイハツは軽商用車「ハイゼット&アトレー」に力を入れる?「軽販売1位」を守りたい事情とは
昨今人気の軽自動車ですが、なかでも軽商用車の割合が半分以上となっています。そんな軽商用車に力を入れるのがダイハツです。背景にはどのような事情があるのでしょうか。
軽自動車販売の半分以上は「軽商用車」が占めている
2022年に、国内で新車として売られたクルマの39%が軽自動車でした。特に軽自動車の比率が高いのは商用車で、登録車・軽自動車を含めた商用車全体では、軽自動車の新車販売比率は55%に達します。
軽自動車は、乗用車よりも商用車で普及しているのです。
軽商用車には、エンジンをボディの前側に搭載する「ボンネットバン」、前席や荷室の下に搭載する「キャブオーバーバン」、「トラック」の3種類があります。
2022年の販売比率では、キャブオーバーバンがもっとも多く50%を占めて、次はトラックの41%、ボンネットバンの9%でした。
そんな軽商用車ですが、キャブオーバーバンの販売台数はダイハツが圧倒的に多いです。
2022年には「ハイゼットカーゴ」とその上級シリーズの「アトレー」を合計9万5078台販売。同カテゴリーの2位はスズキで、2022年の販売台数は「エブリイ」の6万1673台と、3万台以上の差があるという状況です。
2021年12月にダイハツは、ハイゼットカーゴ/アトレーを17年ぶりにフルモデルチェンジ。CVT(無段変速AT)や電子制御式4WDの採用、ボディ剛性の向上、安全装備の進化などを図りました。
またアトレーは、従来は5ナンバーの軽乗用車として届け出されましたが、実質的に乗用モデルのままでありながらも、届出上は4ナンバーの軽商用車に変更しています。
ダイハツは軽自動車の販売1位メーカーですから、キャブオーバーバンを含めて軽商用車が多いのは当然に思えますが、軽乗用車に限ると2位のスズキよりも少なく、2022年の軽乗用車販売台数は、ダイハツが35万3753台と、スズキの37万7605台を下まわっています。
つまりダイハツの軽自動車販売は、軽乗用車ではなく、軽商用車によって支えられているといえるのです。
ダイハツとスズキの近年の販売台数を振り返ると、2019年までは、軽乗用車でもダイハツが上まわっており、軽乗用車と軽商用車の両方で、販売台数はスズキよりも多く1位でした。
ところが2020年以降は軽乗用車がスズキを下まわり、ダイハツは軽商用車を大量に販売して軽自動車の総合販売1位を守っています。
ダイハツが2020年以降、軽乗用車の販売で劣勢に転じた一番の理由は、2019年7月に発売された現行「タント」の販売不振です。
タントはダイハツの中心車種ですから、新型になった翌年の2020年には絶好調に売れなければなりません。しかし、2020年の対前年比は74%と、フルモデルチェンジしたにも関わらず、前年に比べて26%減ったのです。
主力車種のタントが伸び悩むと、ダイハツの軽乗用車全体の売れ行きに影響を与えます。その結果、ダイハツの2020年における軽乗用車の販売台数は、前年に比べて15%減り、前述の通りスズキを下まわったというわけです。
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タントの販売不振は、2019年の発売直後に判明しました。2019年7月以降の対前年比は前年を上まわったものの、20~30%の上乗せに留まったからです。
そこでタントは、通常であればモデル末期に設定するような格安の特別仕様車を2019年後半に追加。異例の措置でしたが売れ行きを伸ばせませんでした。
では逆に「購入後すぐに売られやすい車」というのも気になりますね。
売れることと長く乗りたい車って必ずしも一致はしませんし。
買ったけどガッカリで売りに出されやすい車とか。
外車とかキャンピングカーなどでよく聞く話ですが、メーカーや車種に傾向があるのか気になります。