なぜダイハツは軽商用車「ハイゼット&アトレー」に力を入れる?「軽販売1位」を守りたい事情とは
軽自動車の販売1位という称号が重要なわけ
タントの売れ行きが下がり、軽乗用車販売の全体に影響を与えても、ダイハツは軽自動車の販売1位を譲れません。
ダイハツの販売店スタッフは次のようにいいます。
「軽自動車の販売1位は重要です。例えばタントとホンダ『N-BOX』、あるいはスズキ『スペーシア』でお客さまが迷われた時、軽自動車の販売1位という位置付けが選択を決めることもあるからです。販売1位になると、商談にも勢いが付きます」
軽自動車は、ライバル同士で比べると、ボディサイズ、エンジン排気量、さらに価格まで似ています。N-BOX、タント、スペーシアであれば、全車にエアロパーツを装着するカスタム(シリーズ名も共通です)が用意され、外観は見分けが付かないほど似ています。
その一方、軽自動車は生活のツールですから、クルマに詳しくないユーザーも多いです。似ていれば選択に迷うことになり、この時に軽自動車の販売1位メーカーであることが選択の決め手になります。
販売促進のためにも軽自動車の販売1位は譲れないというわけです。
そこでダイハツは、タントを含む軽乗用車の販売不振を補うため、ハイゼット・アトレーを筆頭とする軽商用車に力を入れるのです。
注目すべきは2021年です。この年の軽商用車の販売総数は、コロナ禍の影響もあって2020年に比べて3%減りましたが、ダイハツは8%増えています。特にキャブオーバーバンは12%のプラスになりました。
前述のハイゼットカーゴ/アトレーのフルモデルチェンジもあって、ダイハツの軽商用車は2022年には売れ行きをさらに伸ばし、キャブオーバーバンは30%増加。同時にマイナーチェンジを図った「ハイゼットトラック」も14%の増加が見られました。
2022年のダイハツの軽乗用車は依然として対前年比が7%のマイナスでしたが、乗用・商用を含めた軽自動車全体の販売総数では、軽商用車の健闘によって1%ですがプラスになりました。
このようにダイハツは、タントのフルモデルチェンジでは失敗しながら、軽商用車の販売強化と効果的な改良でカバーされ、軽自動車の販売1位を守っているというわけです。
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2022年10月にはタントが比較的規模の大きな改良を行い、SUV風の「ファンクロス」を加えたほか、評判がいまひとつだった「カスタム」のフロントマスクもデザインを変えています。
この改良でタントは売れ行きを伸ばし、ライバルのスペーシアを抜いて軽自動車の販売2位になりました。
今のダイハツは、軽商用車のハイゼットとアトレーを着実に販売して、改良を行ったタントや、フルモデルチェンジを間近に控える「ムーヴ」などにより、軽自動車が好調に売れそうです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
では逆に「購入後すぐに売られやすい車」というのも気になりますね。
売れることと長く乗りたい車って必ずしも一致はしませんし。
買ったけどガッカリで売りに出されやすい車とか。
外車とかキャンピングカーなどでよく聞く話ですが、メーカーや車種に傾向があるのか気になります。