なぜ「10年も」道路を放置? 「ずっと通行止め」の謎… 広島の住宅街に放置された「高架橋」未開通の事情とは
なぜクルマが通れない状態が続いているのか
では、なぜそのような事態となったのでしょうか。
理由としては、用地買収の際、土地の所有者が海外にいる、土地の相続手続きが行われていないなどの事情によって市道を造るための用地買収がうまく進まなかったことが挙げられます。
中には関係地権者が約100人もいる土地が存在し、土地の買収交渉が長期化しているケースや、買収価格の問題、道路の造成事業への反対などで地権者と交渉が進んでいないケースもあります。
広島市は、完成した高架橋だけでも使用できないか地元住民と検討したものの、「付近の住宅街を抜けるクルマが増えて危険である」といった反対意見を受け、封鎖されることとなったのです。
ただし高架橋の歩道に関しては、2012年度に北側、2014年度に南側の歩道がそれぞれ使用できるように手続きが行われました。
SNSではこの高架橋について「昔からずっとこのまま。市道の工事自体が中断されているかと思っていた」という声や「以前この近くに住んでいたけど、まだ開通していなかったのか……」など驚きの声のほか、「通常は用地買収が済んでから工事にあたるのでは? 市の見通しが甘かったんじゃないか」などの意見が寄せられています。
広島市が公表している「令和2年度第1回広島市公共事業再評価審議会資料」には、用地の買収に関して「約100名の権利者が所有する共有名義の土地について取得の目途も立ってきているところであり、今後も引き続き、残りの用地の計画的な買収、工事に努める」と言及したうえ、2020年からは西広島バイパス側にある皆賀地区の工事を開始しました。
広島市は今後、用地買収の交渉と並行しながら工事を進め、2025年度末の完成を目指すようです。
この市道については総事業費42億円を見込んでおり、2022年度末までに29億円の費用がかかっています。
広島市は、市道が完成すれば交通渋滞が緩和されクルマの走行時間・経費が減少するほか、交通事故も減少が期待できるなど得られる利益が事業費用を上回ると分析していますが、地域住民の中には年数が経過し過ぎていることに苦言を呈する声も寄せられています。
複数名義の土地は日本に多数あり、各地域で問題になっていますね。