ほぼ「宅配便」専用!? 愛らしい箱型「ウォークスルーバン」なぜ廃止? 実はEV時代に向けた新世代モデルも実証中

街の小口配送を担う宅配業者の多くが利用していた、ボンネット付きの愛らしい箱型バン、通称「ウォークスルーバン」が、近年その姿を減らしています。その理由を探るとともに、後継となる最新「EVバン」についても紹介します。

愛らしいフォルムで街になじむウォークスルーバン「クイックデリバリー」

 今や私たちの生活に欠かせない宅配便。その業務を担う車両はさまざまですが、「宅配業者が使うバン」で思い浮かぶのが、ヤマト運輸などが使用していた高い車高に小さなボンネットを備えた愛らしいフォルムの通称「ウォークスルーバン」ではないでしょうか。
 
 しかし近年、こうしたウォークスルーバンの姿を街で見かけることも少なくなってきました。ではなぜ、ウォークスルーバンは数を減らしているのでしょうか。

愛らしいフォルムが街に「なじむ!」写真はトヨタのウォークスルーバン「クイックデリバリー100」の後継車として2001年に登場した「アーバンサポーター」
愛らしいフォルムが街に「なじむ!」写真はトヨタのウォークスルーバン「クイックデリバリー100」の後継車として2001年に登場した「アーバンサポーター」

 通常、宅配や集配などに用いられるトラックは、運転台(キャブ)と荷台が分かれており、その間を行き来することはできません。

 しかし運転席からそのまま車内を歩いて荷室にアクセスできるウォークスルーバンは、ドライバーが車外に出なくても良く、また車内の高さを大きく取っている車両が多いことから、車内で立って作業ができるという大きなメリットがあります。

 ドアもスライド式や折り戸が採用されている場合が多く、道の端に寄せても乗り降りがしやすいのも利点です。

 アメリカでは戦前からすでに登場しており、宅配のみならず人員輸送、ケータリング、現金輸送、郵便まで幅広く使用され、そのどこかユーモラスな姿は、ハリウッド映画などでもおなじみの存在といえるでしょう。

 一方日本では1982年、トヨタが開発した「クイックデリバリー」が最初のモデルでした。

 クイックデリバリーは、「クロネコヤマトの宅急便」でおなじみの宅配便大手・ヤマト運輸の依頼により、トヨタが開発したウォークスルーバンです。

 その依頼とは、「ドライバーが車内で屈まずに作業ができるクルマを開発してほしい」というもの。

 これを受けたトヨタは、同社の商用車「ハイエース/ダイナ/トヨエーストラック」のシャーシを活用。その上に、直線・平面で構成された箱型車体を載せるという方法で、室内高約1800mmを確保したウォークスルーバンを生み出しました。

 屈強なハシゴ型フレームや長いドライブシャフトも持つ後輪駆動のトラック・バンは、構造上、床面が高くなってしまいますが、リアタイヤを小径化して床面のフラット化を実現していた「ジャストロー」仕様のシャシを選ぶことにより、その問題に対応しています。クイックデリバリーのリアタイヤが小さいのはそのためです。

 当初は販売店やベースシャシ・全長の違いなどに合わせ、積載量2tクラスを「ダイナ クイックデリバリー」「トヨエース クイックデリバリー」、同1tクラスを「ハイエース クイックデリバリー」という車名で販売していましたが、その後、それぞれ「クイックデリバリー200」「クイックデリバリー100」というシンプルなネーミングに変更されています。

 ウォークスルーバンという特性と、宅配に特化した設計を生かし、クイックデリバリーはヤマト運輸を代表する車両に発展。細かな改良や数回のモデルチェンジを行い、2016年まで生産されました。

 とくに1999年のモデルチェンジは大掛かりで、平面のみで構成されていた車体・窓ガラスにカーブがついて、やさしい印象に変化しています。

 宅配用車両として優れた素質を備えていたクイックデリバリーは、当初はヤマト運輸専用車でしたが、のちにヤマト運輸以外の宅配業者でも用いられたほか、車内で立てるという特色を生かし、ケータリングカーとしても活躍しています。

 しかし2000年頃から、クイックデリバリーは再びヤマト運輸のみに販売されることになったため、中古車市場で2000年以降の同モデルを見つけることは難しくなっています。

 なお、2001年にはクイックデリバリー100の後継「アーバンサポーター」が登場し、ヤマト運輸以外の一般需要にも供給されましたが、こちらはわずか3年ほどで販売を終えてしまいました。

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2件のコメント

  1. 日本でのウォークスルーバンの元祖は、いすゞエルフ ハイルーフですよね。

  2. DutroZ EV は実証は終わっていて、本格的に導入開始されてるはず。日野のWEBサイトにも通常商品として並んでますし。

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