ほぼ「宅配便」専用!? 愛らしい箱型「ウォークスルーバン」なぜ廃止? 実はEV時代に向けた新世代モデルも実証中
宅配便需要の変化で廃止されるも、EVの後継モデルが実証実験中
このように現場の声を受けて誕生し、長年にわたりヤマト運輸を支えてきたクイックデリバリーですが、2016年に生産を終えたことにより、街中で走る姿を見かける機会は年々少なくなっています。
ではどうしてクイックデリバリーに直接の後継車がなく、消えていく運命にあるのでしょうか。
その理由は、車両価格が通常のトラック・バンより高いことと、時代の流れを汲んだ宅配サービスの変化でした。
そのサービスのひとつが、1988年からスタートした、冷蔵品を冷たいまま届ける「クール宅急便」です(1993年からは冷凍品も輸送可能)。
しかしクイックデリバリーでは、車内にクール宅急便用冷凍・冷蔵庫を床置きで備え付けており、取り出すには上部のフタを開閉する必要がありました。すると、その上には荷物が置けなくなってしまい、積載性に影響が出るようになりました。
この冷凍・冷蔵庫は荷室の右半分を占めていたため、大型荷物が積みにくい、という事情も発生しました。
また都市部でクルマが停めにくい場所などでは、台車や自転車などを活用した集配を行うなど、宅配方法も進化した結果、車体が小さめで狭い道にも入っていけるクイックデリバリーの利点や優位性が薄くなったことも挙げられます。
クイックデリバリーの生産終了後、これを置き換えているのは、通常の2トンクラストラックです。ウォークスルーはできなくなりましたが、近年のトラックは、拡大するクール宅急便需要に合わせ、仕切りを可動させて冷凍・冷蔵スペースのレイアウトを変更できる仕様も登場。使い勝手の向上が進められています。
一方ヤマト運輸では、「2050年CO2排出実質ゼロ」を長期目標として掲げており、低炭素車両導入の一環として日野の電気自動車「デュトロ Z EV」の実証実験を2021年からスタートさせています。
デュトロ Z EVは、外観こそ2トンクラストラック「デュトロ」のパネルバン風ですが、機械的部品を少なくできるEVの利点を生かし、前後のウォークスルーを実現しているのが大きな特徴です。
床面地上高はクイックデリバリーの約800mmに対し、約400mmという低さを可能としました。クイックデリバリーでは約2.6mあった全高も、デュトロ Z EVは約2.3mに抑えられています。
このように時代に合わせて進化を続ける宅配用車両ですが、その礎のひとつになったクイックデリバリーのスピリッツは、新たにこうして受け継がれていると言えます。
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クイックデリバリーは、前述のように宅配用車両として優れた機能を誇りました。そこで各社も独自のウォークスルーバンで追随しました。ここでは手短にそれらを紹介しましょう。
同門トヨタでは、クイックデリバリーの弟分的な存在として、長めのボンネットを持った「デリボーイ」を販売していたほか、日産は、同社の小型トラック「アトラス」をベースに「アトラスウォークスルーバン」(初代ベース)、「アトラスロコ」(2代目ベース)を、1980年代から1990年代にかけて販売。ほかに変わったモデルでは、明確なボンネットを備えた「ダットサントラック ウォークスルーバン」も存在しました。
トラック・バスの大手、いすゞは、1970年代にもウォークスルーバンを製作していましたが、クイックデリバリーに類するモデルでは「エルフUT」「ビギン」を用意。「ビッグホーン」に大きな箱をつなげたようなデザインの「ハイパックバン」も異色の存在でした。マツダは「タイタン ウォークスルーバン」を、三菱ふそうも「キャンター ウォークスルー」を開発しました。
しかしいずれのモデルも、クイックデリバリーの牙城を崩すことはできず、おおむね短命に終わっています。
なおいすゞでは、2011年からアメリカ市場で「リーチ」という比較的大きなウォークスルーバンを販売していますが、日本では展開していません。
日本でのウォークスルーバンの元祖は、いすゞエルフ ハイルーフですよね。
DutroZ EV は実証は終わっていて、本格的に導入開始されてるはず。日野のWEBサイトにも通常商品として並んでますし。