なぜ日産「リーフ」税額控除対象外に!? 今後の影響は? エネルギー安全保障や対中政策を盾にした米国の論理とは

2023年4月18日、米国が実施しているEV(電気自動車)を対象とした税額控除で、バッテリー調達などの新たな基準が発令され、日産「リーフ」などのEVモデルが控除対象から外れるとの報道が話題を呼びました。日本にはどのような影響があるのでしょうか。

部品まですべて「メイド・イン・アメリカ」でないとダメなのか!?

 アメリカのバイデン政権が「BEV(電気自動車)の税額控除対象をアメ車のみに限定する」とした話が、日本時間の2023年4月18日、ネットやテレビ・新聞などの報道で一気に広がりました。
 
 なかでも、アメリカで数多く販売される日産「リーフ」が、税額控除対象車から外れたことを強調するニュースも少なくない印象です。

写真は日産のBEV(電気自動車)「リーフ」
写真は日産のBEV(電気自動車)「リーフ」

 そうしたニュースに対して、SNS上ではアメリカによる「保護主義」、「エネルギー安全保障の強化」、そして「対中政策」といった言葉が目立つなど、政治色が濃い事案のような印象があります。

 アメリカの動きを、日本のユーザーはどう捉えれば良いのでしょう。直接的には関係のない、対岸の火事として傍観していても大丈夫なのでしょうか。

 まずは、簡単に今回の事案を振り返ります。

 法案としては、2022年8月16日に成立した、IRA(インフレ抑制法)が背景にあります。

 IRAの名称からすると、経済を引き締めるための法案のイメージを持つ人が少なくないかもしれませんが、実態は異なります。

 エネルギー安全保障や気候変動の観点から、脱炭素(いわゆるカーボンニュートラル)の関連産業への投資を促すもの、と解釈できます。

 ここでは「メイド・イン・アメリカ」が大きなカギとなります。

 BEVについては、車両としての最終組み立てをアメリカ国内で行うことを最低条件に、また電池やモーターなどBEV関連部品の調達や、その材料に至るまで「メイド・イン・アメリカ」、またはアメリカとの政治的・経済的なつながりが明確になっている国や地域からの調達を必要としています。

 こうしたアメリカが決めた条件に、日本、韓国、ドイツ、そして中国などの海外メーカーのBEVは現時点では合致しないと判断されたため、税額控除が受けられないというものです。

 一方で、アメリカメーカーであるGM(ゼネラルモーターズ)、フォード、そしてテスラのBEVは税額控除の対象となりました。

 オバマ政権の時にも、エネルギー省の事業としてBEVやプラグインハイブリッド車など先進的な次世代車を「メイド・イン・アメリカ」とするための低利子融資制度があり、日産、テスラ、フィスカーなどが対象となりました。

 ただしこれはあくまでもメーカーに対するもので、ユーザーに直接関係する内容ではなく、今回のIRAとは法案や施策としての方向性が違います。

 そうしたなか日本メーカーとしても、国ごとの対策が考えられています。

 ホンダはGMと協業して、GMが開発したBEVプラットフォーム「アルティウム」を活用し、2024年からオハイオ州でBEV生産と関連部品生産を開始することを明らかにしています。

 トヨタも、2025年を目途にBEVのアメリカ現地生産を始めることを2023年2月の記者会見で公表しています。

 また、日本の西村 康稔 経済産業大臣が2022年11月8日の閣議後の記者会見で、記者からの質問に答える形で、IRAにかかわるEVの税額控除について「これまでもあらゆる機会、あらゆるルートを通じて日本側の懸念を伝えて、表明している」と発言するなど、日本とアメリカの国同士の話し合いが進められてきました。

 それでも現時点においては、日本の要望をアメリカ側が受け入れていないといえるでしょう。

 今後の日米二国間協議を通じて、日本側としてアメリカ側からなんらかの合意を引き出すことが期待されます。

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