三菱「”新型”パジェロ」!? 3リッター「V6スーチャ」搭載で”300馬力超え”の「グランド”クルーザー”」! 高性能4WD搭載の本格モデル「GC-PHEV」とは
三菱自動車がかつて提案した、圧倒的な存在感を放つ大型SUV「コンセプトGC-PHEV」。次期パジェロと目されながらも幻となったこのモデルは、一体どのようなクルマだったのでしょうか。
「新型パジェロ」!?
自動車メーカーはモーターショーなどの場で、未来のデザインの方向性を示したり、新しい技術を提案したりと、私たちのクルマへの夢をかき立ててくれるコンセプトカーを発表することがあります。
中には、あまりの完成度の高さゆえに「いつ発売されるのか」と大きな期待を集めながら、結局市販化されずに終わってしまうモデルが存在します。
過去を振り返ると、2013年11月に開催された「東京モーターショー2013」において、三菱自動車ブースのメインステージに鎮座した巨大なSUV、「コンセプトGC-PHEV(MITSUBISHI Concept GC-PHEV)」は、まさにそんな1台でした。

車名の「GC」は「グランドクルーザー(Grand Cruiser)」を意味し、地球上を堂々と走り抜ける最上級SUVを目指して開発されたモデルです。
そのコンセプトは”次世代ラージSUV”。三菱が誇る本格SUV「パジェロ」のDNAを受け継ぎ、高い環境性能と卓越した走破性を両立する、まさにフラッグシップの未来像でした。
その圧倒的な存在感から、多くのメディアやファンは「次期パジェロのデザインスタディモデルではないか」と色めき立ちました。
単なるエコカーではなく、V型6気筒エンジンにPHEV(プラグインハイブリッド)システムを組み合わせた高出力なパワートレインは、”走れる電動SUV”として大きな期待を集めたのです。
エクステリアは、”筋肉質の塊”をイメージさせる力強い造形です。無垢の金属から削り出されたような硬質感と、多角形のフェンダーアーチがタフさを強調。フロントグリルには、後の”ダイナミックシールド”につながるデザインが見て取れます。
また、センターピラーを持たない観音開きドアを採用し、広大な室内空間と優れた乗降性を実現していました。
インテリアは”近未来の指令室”のようです。キャビン中央を貫く大型タッチスクリーン”タクティカルテーブル”で情報を共有し、フロントガラスにはAR(拡張現実)でナビ情報を投影するなど、先進的な提案が盛り込まれていました。
ボディサイズは全長4930mm×全幅1940mm×全高1980mm。当時のパジェロロングよりも一回り大きく、特にワイド化された全幅が圧倒的な迫力を生み出していました。
注目のパワートレインは、FR(フロントエンジン・リアドライブ)レイアウトをベースとした独自のPHEVシステムです。
3リッターV型6気筒スーパーチャージドMIVECエンジンに、高出力モーターと8速AT、容量12kWhの駆動用バッテリーを組み合わせています。
システム最高出力は約340ps(250kW)。スーパーチャージャーとモーターのアシストによる強力な動力性能と、EV航続距離40km以上、ハイブリッド燃費15km/L以上(目標値)という環境性能を両立していました。
駆動方式はフルタイム4WDで、左右輪間のトルク移動を行うE-AYCを組み合わせた車両運動統合制御システム「S-AWC」を搭載。意のままの操縦性と圧倒的な走破性を実現しています。
しかし、この怪物の市販版は現在でも登場していません。
世界的な市場の変化と経営戦略の見直しにより、パジェロブランド自体が縮小。2019年の国内販売終了、そして2021年の生産終了に伴い、この次期パジェロ模様に見えたプロジェクトも消滅したのかもしれません。
それでも、その遺産は確実に受け継がれています。
力強い顔つきは”ダイナミックシールド”として現行モデルのアイデンティティとなり、S-AWCやPHEV技術は後のアウトランダーPHEVなどで開花しました。
コンセプトGC-PHEVは、三菱が目指した”電動×タフネス”の頂点を示す、記憶に残る1台だったのです。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

































