日本が「自動運転」で世界をリードした! 注目は「バーチャルシミュレーション技術」!? オールジャパン体制で作った「自動運転DIVP」とは
2022年9月6日、BIPROGY(ビプロジー)は世界をリードする優れた自動車関連技術「DIVP(ドライビング・インテリジェンス・バリデーション・プラットフォーム)」の量産化に成功しました。自動運転の実用化にかかわる重要な技術です。
自動運転技術の開発に欠かせない「DIVP」とは何!?
日本が、世界をリードする優れた自動車関連技術の量産化に成功しました。発表したのは、2022年4月に旧・日本ユニシスから社名変更した、BIPROGY(ビプロジー)です。
ただし、製品化に向けた実証試験では、国のプロジェクトとして、関係省庁、専門分野の企業、そして学識者などが参画し、日本の英知を結集した「オールジャパン」体制で進められてきました。
製品化されたのは、DIVP(ドライビング・インテリジェンス・バリデーション・プラットフォーム)というものですが、どういった技術なのでしょうか。
2018年から実施されている、国の第二期SIP(内閣府 戦略イノベーション創造プログラム)では、DIVPコンソーシアムが編成され、パイオニア、デンソー、日立Astemo、ソニーセミコンダクタソルーションズ、三菱プレシジョンなど、通常のビジネスでは競合になるような企業も、日本の未来に向けて一丸となって実証実験に取り組んできました。
では、DIVPとは具体的に、どのような技術なのでしょうか。
資料によりますと「様々な交通環境下で再現性の高い安全性評価を行うため、リアル環境における実験評価と代替え可能な実現象と一致性の高いシュミレーションモデル」と記載があります。
そういわれても、なんだかとっつきにくい感じに聞こえるかもしれません。
ただDIVPは、自動運転技術を今後さらにレベルアップしていく上で、自動車メーカーや自動車部品メーカーにとって極めて重要な存在になることは間違いなさそうです。
そうなれば、最終的には自動車ユーザーにとって、交通事故に遭遇するリスクが減ったり、自動運転技術を使ったクルマのコストが下がったり、そして安心して毎日の運転ができるようになるはずです。
DIVPを開発した背景を簡単に紹介しましょう。
自動運転の開発現場では、リアルワールドで実車を様々な季節、気象状況、そして道路環境で走らせることで、設計したシステムがうまく作動しているかを確認します。
自動車メーカーは「自動運転技術を開発するため、数十万kmの走行テストを行っている」といった表現を使います。
そうした長時間、長距離でかつ複数条件の走行テストを行う最大の目的は、自動運転技術に対する安全性の確保です。
一方で、仮想空間であるバーチャルな環境も作り、実車走行と組み合わせて様々なシーンを再現することで、自動運転技術開発の精度が上がり、また量産化までの時間短縮につなげる方法も採用されています。
クルマの交通事故のほとんどは、人のミスによって起こるといわれています。
しかし一方で、人の能力は極めて高く、人が運転するときの基本となる「認知・判断・操作」をシステムが完璧にこなせるとは言い切れません。
その上でDIVPは、カメラ、レーダー、ライダーなどのセンサーそれぞれの長所と短所による、誤検知(見間違い)や不検知(見落とし)が起こらないような配慮をしています。
さらに、様々な環境下で同じようにセンサーを評価できるシミュレーションを実現したといいます。
DIVPを開発した関係者は「逆光など状況で、実現象との一致性が高い」といいます。
これまでに海外で発生した、自動運転技術を活用した高度運転支援システム搭載車による重大事故では、目の前に出現したトレーラーに太陽光が反射して、それをクルマのセンサーがうまく認知できず、システムが正確なデータ処理することができなかった可能性が指摘されています。
DIVPのようなバーチャルでのシミュレーション技術については、欧米ですでに実用化されているシステムが複数存在します。
そうしたなかで、光の反射への対応力などで、DIVPは世界をリードする製品力を備えているといいます。
またこうした先進技術では、日本がいわゆるガラパゴス化しないよう、国際連携を十分に考慮することが重要です。
DIVPについては、ドイツの国際標準化団体ASAMとの連携プロジェクトを2020年10月から始めています。
そうすることで、既存の海外製シミュレーションソフトとの統合も可能になります。
国は、自動運転や自動運転技術の普及について、公共交通などのサービスカーについては、2025年までに全国40か所で自動運転レベル4の普及を目指すとしています。
また、乗用車や商用車などオーナーカーについては、自動運転レベル2(運転の主体が運転者)と自動運転レベル3(運転の主体がシステム。状況によって運転の主体がシステムから運転者に移行)を、2030年頃にかけて徐々に普及させるという方針です。
今回、量産化されたDIVPを活用した次世代の自動運転技術が、日本から世界へと広がることを大いに期待したいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
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