バスが「スマホで呼べる」!? 実証では平均8分強で到着の例も! 地域を支える公共交通が大きく変わる「AIオンデマンド交通」とは

AIによる高効率化でコストを抑え利便性を高めた「AIオンデマンド交通」が地域を支える時代に

 長野県塩尻市では、コミュニティバスの一種である地域振興バス「すてっぷくん」が運行されていますが、乗客数が年間10万人に割り込んでいます。これは、最も多かった13年前の約17万人から約7万人の減少です。

 ところが運行コストについては、13年前の約6600万円から約9900万円と上昇しています。

 こうした実情を鑑みて、塩尻市が2021年7月に公開した地域公共交通計画では、市街地ゾーンと周辺の田園ゾーンとの移動には地域振興バス すてっぷくんを維持しつつ、JR塩尻駅、市役所、大きな商業施設が集積する市街地中心部ではオンデマンド交通「のるーと塩尻」を新たに導入するとしました。

AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」[長野県塩尻市の公式YouTubeチャンネル「SHIOJIRICITY」より]
AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」[長野県塩尻市の公式YouTubeチャンネル「SHIOJIRICITY」より]

 オンデマンド交通 のるーと塩尻は、アプリまたは電話で配車予約すると、AIが乗合状況や道路状況等に応じて効率的なルートを生成。利用者は、出発地と目的地周辺での乗り降りが可能です。

 すでに実用化が始まっていますが、それに先立ち2021年10月から3月までの5か月間に渡り実証運行を行いました。

 運行時間は平日が午前7時から午後8時、土曜日が午前9時から午後8時、そして祝日が午前9時から夕方6時までで、料金は大人200円、子どもや障がい者が100円、乳幼児は無料となっていました。

 運行エリアは約10km平方メートルの範囲で、その中で乗り降りができる場所が111カ所もあります。

 事実上、バーチャルな停留所ですが、利用者に分かりやすくするため、自立式のサインタワーや既存バス停の併用の他に、路面に小さなシートを貼ったり、塀や柵に小さな表示をするなどして、対応しています。

 車両はハイルーフ式のトヨタ「ハイエースワゴン」など、小回りが効くワゴン車を使います。普通2種免許で運行可能なため、大型バスドライバー不足の課題に対応できるのもポイントです。

※ ※ ※

 オンデマンド交通 のるーと塩尻の実証運行の結果ですが、5か月間の総乗客数は8千883人。平均乗車時間は7.2分、アプリ予約からの平均待ち時間は8.4分とかなり短くなっています。

 また高齢者などの対応で、電話予約も実施しましたが、電話予約とアプリ予約の比率は31.5%対68.5%という結果でした。

 アプリ登録者は2369人でしたが、年齢分布をみると、10代(6.9%)、20代(13.0%)、30代(18.7%)、40代(20.3%)、50代(18.5%)、60代(10.6%)、70代(7.3%)、80代(4.2%)、そして90代(0.5%)となり、かなり若い世代での登録が目立ちます。

 実際の利用での年齢分布も、アプリ登録者の年齢分布に近い結果となっています。

 今後について、塩尻市役所では新たに3つの地域で実証運行を段階的に行い、住民に地域振興バスとオンデマンドの利便性を比較してもらいながら、住民主体でどちらを選択するのかを決めていくといいます。

 さらに、塩尻市では中心市街地での自動運転バスについても実証を踏まえて実用化を目指します。

 こうした、AIオンデマンド交通「のるーと」、地域振興バス、自動運転バスを、隣接する自治体と広域連携を視野にした、エビデンスに基づくモビリティのデータプラットフォームの構築を進めていくとしています。

※ ※ ※

 このほか、AIオンデマンド交通については、長野県内では茅野市の「のらざあ」(2022年8月22日実用化開始)や、茨城県高萩市の「のるる」(実用化済み)など、全国各地で導入事例が増えてきました。

 あなたの街でも近い将来、AIオンデマンド交通が走り出すかもしれません。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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