なぜホンダ「N-BOX」ってなんでそんなに人気なの? ヒット車の条件とは
軽の王者として君臨し続けているホンダ「N-BOX」は、初代登場から10年かからずに累計販売台数200万台という偉業を達成しました。2代目となる現行モデルも好調な売り上げを見せているのですが、一体何が理由でここまでの人気を築けたのでしょうか。
後発ながらライバルを圧倒した「N-BOX」
2021年度の新車販売台数において第1位となったホンダの軽スーパーハイトワゴン「N-BOX」は、登録車を含む総合での新車販売台数では2019年度以来2年ぶりの首位奪還で、軽四輪車に限れば7連覇というひとり勝ち状態が続いています。
デビューした2011年と、ライバルであるダイハツ「タント」のモデルチェンジのタイミングが重なった2014年を除き、11年間のうち9回も軽ナンバー1の座を獲得。登録車を含めた新車販売においても1位が4回という、いわばモンスター級の大ヒットモデルなのです。
それにしても、N-BOXがここまで売れ続けている理由は一体どこにあるのでしょうか。
N-BOXが売れ続ける理由は、初代モデルから2代目の現行モデルに至るまで、一貫して高い完成度を持つクルマだからにほかなりません。
ホンダは初代N-BOXが登場するまで軽スーパーハイトワゴンをラインナップしていませんでした。
マーケットではタントやスズキ「パレット」が絶好調で、後発で成功するには生半可なクルマでは太刀打ちできないという状況。
そこでホンダはN-BOXを筆頭とする「Nシリーズ」のためにプラットフォームやエンジンを新開発します。
ボディは軽自動車枠いっぱいの全長3395mm×全幅1475mmに対し、全高を1770mm(FF車)と大きくとることで室内空間の広さを徹底的に追求。
補機類も含めコンパクトにまとめられたエンジンによりボンネット長を短く抑えることでフロントエンジンの軽自動車としては最長のホイールベース2520mmを実現し、ホンダのミニバン「ステップワゴン」に匹敵する乗員ひとりあたりの居住スペースを確保しました。
もちろん使い勝手の面でも抜かりはありません。
「フィット」のように燃料タンクを前席の下に配置するセンタータンクレイアウトを採用したり、後席のスライドドアは「フリード」以上に開口部を大きくとったりするなど、実用性の高さは10年以上たった現在でもトップクラスといえるでしょう。
走行性能も上々、24.5km/L(10・15モード)の低燃費と58馬力のパワーをバランスさせた新エンジンは自然吸気でも必要十分な加速を生み出し、同じく新開発のCVTとの組み合わせは「軽はターボじゃないと走らない」という定説を覆すほどでした。
もちろんターボ付きはさらにパワフルで、高速道路も颯爽と駆け抜けることができます。
また、重心が高く、大きな開口部を持つハイトワゴンは決して走りに向いているとはいえませんが、高いボディ剛性と新設計の足回りによるN-BOXの操縦安定性の高さはまさにクラスを超えたといっても良いでしょう。
そしてN-BOXのセールスをけん引した理由として忘れてはならないのが、スタイリングの巧みさでしょう。
水平基調で嫌味がなく、男女を問わず好感度は高め。ルーフの長さ、ピラーの角度、ショルダーラインの高さなど、一見すると単純に見えますが実は非常に凝ったデザインなのです。
シンプルなノーマル仕様に対し、メッキパーツを多用し力強いスタイリングが特徴の「カスタム」をラインナップしているのは、軽トールワゴンやスーパーハイトワゴンでは定番ですが、需要を見据えているのも人気を支える要素のひとつです。
高い完成度により支持を得たN-BOXは、登場からわずか5年で累計販売台数100万台という偉業を達成しました。
2017年8月に初めてのフルモデルチェンジが実施されましたが、モデル最末期の同年7月まで月間販売台数がトップ(登録車含む)だったのですからその人気ぶりは尋常ではありません。
まさか1代でプラットフォームとエンジンを刷新するとは思わなかったなぁ…
こういうところが実にホンダらしい!