「充電器」がEV普及の足かせに? どうなるインフラ拡充 まもなく到来「設備更新ピーク」なぜ?

EVが本格普及する上で、充電設備は欠かせない要素です。しかし現時点で、設置場所や稼働率など、ユーザーのニーズと必ずしも合致していない点も見られます。充電インフラの現状と、今後の課題を考えます。

本格普及に必要なのは「充電インフラの拡充」

 ついに日本でも、本格的なBEV(バッテリー電気自動車)シフトが始まるのでしょうか。

 2022年の発売モデルでは、トヨタ「bZ4X」、スバル「ソルテラ」、日産「アリア」、さらには日産と三菱が共同開発した軽EVなど、新型BEVが目白押しです。

 輸入車でも、テスラ「モデル3」は販売絶好調ですし、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、ポルシェ、ボルボなど、BEVモデルラインアップのさらなる充実が続きます。

BEVに充電設備は欠かせない
BEVに充電設備は欠かせない

 こうした状況を踏まえ、自動車メーカーやインポーターの関係者に対し、「BEVシフトが色濃くなってきた現時点で、改めてBEV本格普及のために必要なことは何だと思いますか?」と聞きました。

 すると、やはり最も多かった答えは「充電インフラの拡充」でした。

 この考え方は以前からあり、BEV普及のための3条件の一つといわれてきました。

 3条件とは、「車両価格がガソリン車やハイブリッド車並みに下がること」「満充電での航続距離が充分にあること」、そして「充電インフラが整うこと」の三つです。

 まず、車両価格については、まだまだ高いとは思いますが、電池、モーター、インバーターというBEV主要部品の量産効果が徐々に現れてきており、モデルによっては一般ユーザーのショッピングリストに載るレベルまで下がってきたといえます。

 また、サブスクリプションモデルなど、新しいクルマの使い方が日本でも広まることで、車両残価を気にせずにBEVを楽しめるようになりそうです。

 次に、航続距離については、基本的に電池容量を大きくすることで対応できますが、そうなれば当然、車両の価格にも跳ね返ります。それを量産効果によって抑制することになります。

 また、全固体電池など新しい技術によって、従来と同じ体積(大きさ)でもエネルギー密度が上がることで航続距離がさらに伸びることが期待されています。

 そして、BEV関係者の多くが指摘した充電インフラについては、今まさに“大きな課題”といえるでしょう。

 地図情報関連企業のゼンリンによると、日本国内にあるBEVまたはPHEV(プラグインハイブリッド車)向けの充電施設は、2021年2月時点で急速充電器が7950基、普通充電器が2万1700基で合計約3万基あります。

 このうち、東京電力、中部電力、トヨタ、日産、ホンダ、三菱などが出資し、充電インフラの整備と拡充をおこなうe-Mobility Power(イーモビリティパワー)が連携している充電器は、急速と普通を合わせて2020年12月末時点で2万1700基です。

 イーモビリティパワーは、日産のZESP3(ゼロエミッションサポートプログラム3)や、トヨタのEV-PHV充電サポート、メルセデス・ベンツのCharge充電カードなど、国内外メーカー各社の充電に関する会員カードが使える仕組みを提供しています。

 当初、2014年にトヨタ、日産、ホンダ、三菱が共同で立ち上げた日本充電サービス(NCS)がありましたが、2019年10月設立のイーモビリティパワーがNCSの事業を2021年4月に承継し、充電サービスのさらなる拡充を目指しているところです。

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