今ならありえないような車が人気だった!? バブル期の嗜好がよくわかる車3選

1980年代の終わりから1990年代の初頭にかけて、日本は未曾有の好景気にわいていました。いわゆるバブル景気です。当時はクルマに対する趣味嗜好やニーズが今と異なり、メーカーもそれに対応していました。そこで、バブル期の世相がよくわかるクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

「バブル期ならでは」というクルマを振り返る

 1980年代の終わり頃から1990年代の始めにかけて日本は好景気にわいており、後に「バブル景気」と呼ばれた時代でした。

バブル景気のころの趣味嗜好を色濃く反映していたクルマたち
バブル景気のころの趣味嗜好を色濃く反映していたクルマたち

 当時は株価や不動産価格が高騰し、今よりも多くのお金が世の中を循環しており、高額な高級車や高性能車が次々に登場。実際に販売台数も好調に推移していました。

 さらに、クルマに対する趣味嗜好やニーズは今と大きく異なり、各メーカーともそうした時代背景にマッチしたクルマを開発し、販売しました。

 そこで、高額なクルマ以外でもバブル期の世相がよくわかるモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●三菱「エクリプス」

アメリカで企画・開発・生産された生粋のアメ車だった初代「エクリプス」

 現在、日本で販売されている輸入車のほとんどは右ハンドルのみか、右ハンドルを設定しています。日本は左側通行ですから、当然のことです。

 しかし、かつては輸入車=左ハンドルであり、それがステータスシンボルにもなっていました。バブル期では左側通行のイギリスのクルマでも、左ハンドル仕様が普通に輸入・販売されていたほどです。

 そうした嗜好を反映して三菱は1990年に、北米市場向けに現地で企画・開発された3ドアハッチバッククーペの初代「エクリプス」発売。全グレードとも左ハンドルとなっていました。

 初代エクリプスは6代目「ギャラン」をベースに開発されたモデルで、リトラクタブルヘッドライトを採用したフロントフェイスに、伸びやかで空力性能に優れたスタイリッシュなフォルムが特徴でした。

 トップグレードの「GSR-4」は最高出力200馬力を誇る2リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載し、ビスカスカップリングを用いたフルタイム4WDシステムを組み合わせ、トランスミッションは当初5速MTのみの設定など、本格的な4WDスポーツカーというコンセプトになっていました。

 初代エクリプスはスマッシュヒットを記録し、その後も1994年に2代目が登場し、2004年から3代目のオープン仕様「エクリプススパイダー」が、やはり左ハンドルのまま販売されました。

 なお、ほかにもホンダ「アコードクーペ」「アコードセダン」やミニバンの日産「クエスト」などが、左ハンドルのままで販売され、とくにアコードクーペは人気を集めました。

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●ホンダ「プレリュード Si ステイツ」

まさにデートカーの真骨頂といえる3ナンバー化を果たした「プレリュード Si ステイツ」

 バブル絶頂期だった1989年(平成元年)に自動車税の改正がおこなわれ、5ナンバー車と3ナンバー車間の税率引き上げ幅が縮小され、さらに排気量の区分で税額が決まるようになりました。

 この改正によって1989年以降は、3ナンバー専用ボディのモデルや、比較的自動車税が安い2.5リッターエンジン車が各メーカーから続々と登場し、昭和の時代には富の象徴だった3ナンバー車が一気に普及しました。

 そんな状況をキャッチアップしたホンダは、1990年に3000台限定のユニークな特別仕様「プレリュード Si ステイツ」を発売。

 3代目プレリュードの「Si 4WS(AT)」グレードをベースに、北米仕様と同じ2.1リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載し、外観ではサイドモールが専用品で全幅が20mm拡大され1715mmと3ナンバーサイズとなっており、内装では本革シートをオプション設定するなど高級路線でした。

 エンジンは2リッターから5馬力向上して最高出力145馬力を発揮し、トルクは18.0kgmから19.0kgmに向上していましたが、動力性能への影響はわずかだったと考えられます。

 プレリュード Si ステイツは100ccほどの排気量アップと全幅20mmの拡幅で、価格はベース車よりも26万円高に設定されましたが、当時は3ナンバー車というステータスに支払う対価としては、安かったのかもしれません。

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●マツダ「ペルソナ」

小さな高級車をコンセプトにまるでリビングルームのような内装を実現した「ペルソナ」

 バルブ期には日産「シーマ」やトヨタ「セルシオ」といった新時代の高級車が登場してヒット作となり、多少無理をしてでも手に入れたいというユーザーも数多く存在しました。

 そうした背景からマツダは1988年に、「カペラ」をベースとした4ドアピラーレスハードトップセダン「ペルソナ」を発売。

 外観は角を丸めることで全体的にやわらかな印象で、Bピラーを排除したことで開放感がある斬新なデザインのキャビンを実現しました。

 ボディサイズは全長4550mm×全幅1695mm×全高1335mmと現在の水準ではコンパクトですが、デザインの妙でサイズ以上にワイドな印象となっていました。

 そしてペルソナ最大の特徴は内装で、非常に贅沢かつ凝ったつくりとなっており、高級感を演出するラウンジソファータイプのリアシートや、シートやトリムの半分以上をレザー張りとするグレードを設定。

 また、ダッシュボードのデザインを優先するために、グローブボックスや灰皿を排除したほどです。

 搭載されたエンジンはカペラと同じ1.8リッターと2リッター直列4気筒で、2リッター車は最高出力140馬力と同クラスでは標準的なスペックでしたが、「シルキースムース」と表現されたほどドライブフィールにもこだわっていました。

 ペルソナは高級志向を早期にキャッチアップしたモデルでしたが、決して高額なクルマではなく、本革仕様の「B」グレードでも171万円からと戦略的な設定でした。

 しかし、そうしたニーズもバブル崩壊とともに消え去ったことで販売は低迷。ペルソナは1992年に、フルモデルチェンジすることなく生産終了となりました。

※ ※ ※

 かつて、左ハンドルの輸入車がステータスだったのは確かですが、もうひとつ左ハンドル仕様が人気だった理由として、輸入車の右ハンドル仕様の出来があまりよくなかったことが挙げられます。

 ドイツやフランス、イタリアなどのクルマは、当然ながら左ハンドルを基本に設計されており、右ハンドル化に際して強引な設計のモデルもありました。

 今はまったくといっていいほど問題ありませんが、1990年代までの輸入車では、右ハンドルにしたことでブレーキのフィーリングの悪化やペダルレイアウトに問題があるケースもあり、とくにスポーティなモデルではあえて左ハンドル仕様にこだわった人が多く見られたほどです。

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