クルマは元素からできている? 切っても切れない化学と自動車の密接な関係とは
自動車づくりのさまざまな分野で関わる各元素の特徴
「すいへりーべぼくのふね」で覚えた各種元素が自動車技術とどう関係しているのか、考えてみた。まずは順番にその関連性を考察してみよう。
「原子番号1 水素H」は宇宙創生で最初にできた元素であり、基本は電子がひとつ、原子核のなかにはひとつの中性子と陽子が存在する。この電子が電気の素になるので、水素は電気の入れ物と考えることができる。
この水素原子から効率よく電子(電気)を取り出すのが燃料電池で、自動車に使われるのは個体高分子と呼ばれる薄い膜がコア技術だ。
水素は燃やすこともできるので、モリゾウさんがレースで走ったマシンに搭載される水素エンジンは、水素を燃やすから水ができる。燃やすことは化学反応では酸素と結合することなので、炭素Cを燃やすとCO2ができるが、水素を燃やすとH2Oなので水となる。
同じ燃焼でも生成される物質がCO2かH2Oかでは大きな違いだ。前者は温暖化の原因となるが、後者はクリーンだ。
水素Hの次に軽い2番目の元素はヘリウムHeだ。太陽は水素から核融合してヘリウムが作られ、その時に発生する膨大なエネルギーによって、我が地球が存在する。ヘリウムは半導体の製造現場で多用されている。
3番目の元素リチウムLiは、最近のバッテリーブームで一躍有名になった元素だ。水素とヘリウムが気体元素であるが、リチウムはもっとも軽い金属系元素。
4番目のベリリウムBeは精密機械の内部のバネなどに利用されており、五番目のホウ素Bはガラスの製造で利用されているが、福一原子炉事故では放射線を吸収できるとして、ホウ素が有名になった。
さて、6番目にでてくるのが炭素Cである。この物質は摩訶不思議な元素で、単体ではダイアモンドとして存在するし、エンジンなどで燃焼し、酸素と結合すると大きなエネルギーを発する。
酸素ひとつだと一酸化炭素、ふたつだと二酸化炭素。前者は人体には猛毒であるが、後者は人体には無害。しかし、温室効果ガスとして温暖化を引き起こす物質となる。
7番目が窒素Nだ。窒素は空気中に78%も含まれているので、酸素を結合すると窒素酸化物となる。これも有害な排出ガスとして規制されている。
ところが、窒素は水素と結合するとアンモニアNH3となり、これは燃やすことが可能だ。炭素Cがないので、二酸化炭素はゼロ。現在、火力発電の燃料を石炭やメタンガスから、アンモニアに変えることで、カーボンニュートラルを実用化する計画が進められている。
8番目が酸素。この酸素があるから地球ではさまざまな生物が存在できる。酸素は水素と結合すると水H2Oとなる。
酸素を結合させることを酸化と呼び、酸化物から酸素を取り除くことを還元という。例えば鉄を作る製鉄所では、酸化鉄から鉄を作るには酸素を取り除く。この場合、酸化鉄を還元するという。その時に炭素が使わるから、製鉄でカーボンニュートラルというのは、とんでもなく難しいことなのだ。
その後も、自動車で使われるさまざまな金属や気体元素がでてくるので、自動車作りの裾野の広さを改めて知ることができる。以下は原子番号順に原子番号30番の亜鉛Znまで記載しておく。
バケガク(化学)って、本当に面白そうだ。
1. H・水素・ロケットの燃料
2. He・ヘリウム・風船
3. Li・リチウム・リチウムイオン電池
4. Be・ベリリウム・バネ
5. B・ホウ素・ビーカーなどの実験器具
6. C・炭素・鉛筆の芯
7. N・窒素・肥料
8. O・酸素・光合成
9. F・フッ素・歯みがき粉
10. Ne・ネオン・ネオンサイン
11. Na・ナトリウム・食塩
12. Mg・マグネシウム・とうふのにがり
13. Al・アルミニウム・1円玉
14. Si・ケイ素・半導体(LSi)
15. P・リン・マッチの側薬
16. S・硫黄・タイヤ
17. Cl・塩素・水道水の消毒
18. Ar・アルゴン・蛍光灯
19. K・カリウム・肥料
20. Ca・カルシウム・石こう
21. Sc・スカンジウム・野球場の照明
22. Ti・チタン・光触媒
23. V・バナジウム・工具
24. Cr・クロム・めっき
25. Mn・マンガン・乾電池
26. Fe・鉄・建設材料
27. Co・コバルト・ハードディスク
28. Ni・ニッケル・ニッケル水素電池
29. Cu・銅・青銅のかね
30. Zn・亜鉛・楽器(真鍮)
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