約6400万円で伝説のランチア「037ラリー」がレストモッドで蘇る! 「キメラEVO37」プロジェクトの全容とは

夢の1台は、およそ6400万円から

 キメラEVO 037プロジェクトの仕掛人は、前世紀末から2017年までイタリア国内戦やERC(欧州ラリー選手権)などで優勝を含む活躍を果たした元ラリードライバー、ルカ・ベッティ氏が率いる「キメラ・アウトモービリ(Kimera Automobili)」社である。

 もともと、自身のラリーマシンのメンテナンスをおこなうレーシングガレージ「Kimera motorsport」として2008年に創業したのち、2013年ごろからランチア「デルタS4」や「037ラリー」を手掛けるレストレーションファクトリーへと業態を変え、現在のキメラ・アウトモービリが誕生したという。

●キメラEO37プロジェクトに結集した“レジェンド”とは?

「キメラEVO37」のテストドライバーは、ランチア「デルタ・インテグラーレ」とともにWRCで大活躍したラリードライバーのミキ・ビアジオン氏だ
「キメラEVO37」のテストドライバーは、ランチア「デルタ・インテグラーレ」とともにWRCで大活躍したラリードライバーのミキ・ビアジオン氏だ

 そして、ここで複数のデルタS4や037ラリーと接することによってベッティ氏が抱いた「本質とスピリットをそのままに037を進化させたい」という熱い想いが、EVO37プロジェクト始動の動機になったとのことである。

 そんな経緯から生まれたキメラEVO37ながら、FIAグループBの求める200台+αしか作られていない本物のランチア037ラリーをレストモッド化したものではなく、037のベース車両、つまりより生産台数の多い「ベータ・モンテカルロ(前期)」/「モンテカルロ(後期)」をドナーとし、現代的な要素を加えながら事実上の新規開発をおこなったものといえる。

 そのアプローチは、オリジナルの037ラリーが開発されたときと同じ手法をとる。ベータ・モンテカルロのキャビン周辺のモノコックを補強して使用し、前後にサブフレームとボディカウルを組み合わせる。ただし、オリジナルの037ラリーの前後カウルはFRP製だったが、キメラEVO37のカウルはカーボンファイバー製とされ、モノコック+サブフレームの剛性アップも図られているようだ。

 パワーユニットは、オリジナル037ラリーに搭載された、古き良きランプレーディ直列4気筒DOHC16バルブをリファインした2.1リッターエンジン。ランチア技術陣を長きにわたり支えてきたエンジニアで、かつて037ラリーのランチア側責任者でもあったクラウディオ・ロンバルディ氏の指導のもと、大幅に再設計されたとのことである。

 オリジナル037ラリーの特徴であったルーツ式スーパーチャージャーに加えて、ターボチャージャーも組み合わせられた。つまり、037の後継車「デルタS4」と同じくツインチャージャーとされたこのエンジンは、最高出力505ps、最大トルク550Nmを発生する。

 037ラリーが市販版で205ps、WRCを闘った最終進化版でも350ps前後といわれていたことからすると、まさに40年分の技術進化を物語るモンスター級ユニットといえよう。

 また、カップリングされるトランスミッションは6速マニュアルに加えて、パドル操作式の6速シーケンシャルも選択可能とのことで、これもまた21世紀のスーパースポーツとしての資質をアピールしている。

 さらに、ダブルウィッシュボーンシステムなどのメカニカルコンポーネンツは、モータースポーツの分野では定評のあるオーリンズ社が設計し、ブレーキにはブレンボ社製のカーボンセラミックを採用。格段に増強されたパワーに備えて、ホイールサイズはフロント18インチ/リア19インチと大幅にスケールアップされた。

 そして、このキメラEVO37における最大のトピックとして挙げたいのは、前述のロンバルディ氏をはじめとし、ランチア037ラリーに携わってきたデザイナーやエンジニアたちとの密接なコラボレーションのもとに開発されたことだろう。

 シャシの設計とセットアップは、かつてアバルトで数多くのラリーカーの開発を主導したセルジオ・リモーネ氏。車両の製造プロセスとマテリアル調達を担当したヴィットリオ・ロベルティ氏とフランコ・イノチェンティ氏も、かつて037ラリー開発に参画したエンジニアだ。さらにテストドライバーは、ランチア「デルタ・インテグラーレ」とともにWRCで大活躍したラリードライバーのミキ・ビアジオン氏。これら「レジェンド」勢ぞろいの豪華チームによって、EVO37プロジェクトは完成されたのだ。

 安易な「レストモッド」とは一線を画した、ランチア037ラリーの生まれ変わり。そして古き良きイタリア自動車界へのオマージュともいうべきこのキメラEVO37は、その名にちなんで37台を限定製作するとのことである。オプションや特注を除くベーシック価格は、48万ユーロ(約6430万円)とかなりの高額ながら、すでに11台は予約済と公表されており、1台目はまもなくオーナーのもとに納車されるという。

 また、2021年9月に英国で開催される予定の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」にて、初めて実走披露がおこなわれることも決定しているという。

【画像】現代に蘇った「037ラリー」とは(13枚)

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