「生き様が見本」 伝説級名車「NAロードスター」の肝となる部分は何だった? マツダの主査に聞く
誕生から30年以上の年月が経過したマツダ初代「ロードスター」(NAロードスター)ですが、ロードスターの開発を担当した人にとって、いま振り返るとどのようなモデルだったと感じているのでしょうか。
「ゆっくり走っても楽しいスポーツカー」
マツダ「ロードスター」は2019年に生誕30周年を迎え、世界中に多くのファンが存在します。そんなロードスターの初代モデル(NAロードスター)について、ロードスターの主査の皆さんは、現時点でどのような評価をしているのでしょうか。
今回、山本修弘氏(NC、ND主査、現ロードスターアンバサダー)、中山雅氏(ND主査・チーフデザイナー)、そして齋藤茂樹氏(現ND主査)にNAロードスターへの想いを聞きましたので、順にご紹介します。
山本氏は「初代NAロードスターの誕生とそのヒットは世界中にLWS(ライトウエイトスポーツ)のマーケットを復活させるパイオニアとなった。『人馬一体』のOpen carコンセプトは軽量化コンパクトなボデーとその洗練されたサスペンションとボデー構造、レスポンスの良いエンジンとマニュアルトランスミッションが生命線であった」(表記はコメントのまま)
その上でNAロードスターを「Best Fun to Drive car」と表現しています。
また、山本氏はNAロードスターのレストアをおこなうマツダ本社プロジェクト・クラシックマツダに関わっています。
その活動について「お客さまのNAロードスターへの愛情の大きさと深さを感じています。お金では買えない価値をNAロードスターのレストアサービスを通じて感じています」と自らの心境を語ってくれました。
続いて、中山氏です。コメントはかなり長いのですが、30年来のNAオーナーとしての熱い想いがこちらに伝わってきます。
「一言でいうと、『その生き様そのものが見本』みたいな存在です。NAを初めて見たのは、マツダに入社する直前の大学4年生のとき、シカゴショーで発表されて雑誌の表紙に載っていたものでした。見て衝撃が走ったことを覚えています。その時に『このクルマを買おう!』と思いましたし、『一生乗り続けられる』と直感的に思いました。それが1回目の出会いです。
2回目の出会いは、入社して新人社員研修を受けている頃、社内の整備工場内に置いてあった発売前のNAを見つけ、『すみません、座ってみてもいいですか?』とそばにいた社員の方に断って車内に座ったときです。ロールゲージが組まれた実験車両だったということもありますが、『なんとタイトなコックピットだろう!』と思ったことがあります。
3回目はもう契約書にハンコを押していましたが、以来30年以上一緒に過ごしてきました。『ずっとずっと前から自分の心の中にあった』かのようなスッキリした感覚のある不思議なクルマです。
まるで『初恋の人』に再会したかのような感覚があり、『妻』のようでもあり、今や『偉大な母親』のようでもあります。初めて見た時ですら何か懐かしい感じがしましたが、実はデザイン的には最新の設計&製造技術が奢られており、当時から『時代の風化に強いに違いない』と思いました。
私にとってNAはオーナーとして感じるものが圧倒的に多いです。仕事としてではなく、冬にはスキーを担いで雪山へ行きましたし、夏には海へ、ジムカーナでグリグリいじめたり。
あるとき、訳あってNAを手放そうかと思ったことが一回だけあります。そのとき、当時中学生だった長男が猛反対をしました。理由を聞くと、『だって想い出がなくなるじゃん』と。
そうか、NAはこの子が生まれるずっと前から我が家にあり、この子は物心つく前から助手席に乗っていて、その後もずっと乗ってたし、ガレージにも当たり前のように置いてあったんだよな…と、あらためて気づき、大変申し訳ないことを言ったものだと反省しました。そのとき以外、後にも先にも手放そうと思ったことはありません」(本文のまま)
そして、齋藤氏も若かりし頃を振り返って、本音で答えてくれました。
「“発見”。私は89年に入社しその年にNAロードスターがデビューしました。入社当時は、スポーツカーは速さとパフォーマンスがすべてだと思っていましたので、同期がNAロードスター購入の予約のため、本社前に徹夜で並んでいるのを横目に、RX-7でブリブリ走っていたのを思い出します。
当時、NAロードスターにはほとんど関心がなかったのですが、たまたま同期のNAロードスターを運転させてもらった時、『こんな楽しさもあるのか』と新しいスポーツカーの価値を知り、まさに“発見”でした。ゆっくり普通に走って楽しいクルマ、それがNAロードスターでした」
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