なぜベントレーはV8エンジンをブラッシュアップするのか? 驚きの最新V8の性能とは

自動車業界は大きくEV化へ舵を切ったように思えるが、ベントレーはEV化と同じくらい内燃機関のブラッシュアップに余念がない。その理由を探る。

「ミュルザンヌ」のV8の遺伝子を受け継ぐ新V8の凄さ

 ベントレーのフラッグシップは、伝統の“6 3/4リッター”V8エンジンを搭載した「ミュルザンヌ」の生産終了に伴い、新型「フライングスパー」が受け継ぐことになった。

 当初、W12エンジン搭載モデルでデビューしたフライングスパーであるが、2020年10月には新たにV8エンジン搭載モデルがラインナップされている。このフライングスパーに搭載されるV8エンジンには、60年以上にわたってクロスプレーンV8エンジンを使用してきたベントレーの伝統が受け継がれている。

「ミュルザンヌ」の跡を継ぎ、ベントレーのフラッグシップとなった「フライングスパー」
「ミュルザンヌ」の跡を継ぎ、ベントレーのフラッグシップとなった「フライングスパー」

 ただし、フライングスパーに搭載される4.0リッターV8エンジンは、高強度アルミニウムから鋳造されたブロックに、ツインスクロールターボチャージャーとプライマリー触媒コンバーターをエンジンのVバンク内に配置した、徹底的に近代的なエンジンに生まれ変わっている。

 燃料噴射装置とスパークプラグは、最適な噴射パターンと燃焼経路を確保するために各燃焼室内に集中配置されており、カムシャフトは最大50度までの可変で、エンジンの負荷が少ないときにはシリンダーの半分を休止させ、完全にバランスのとれたV4となるのが特徴だ。

●現代的で高効率なV8パワートレイン

 フライングスパーのV8エンジンは、低排出ガスと最高の効率を実現しながらも、高レベルのパワーとトルクを実現することをコンセプトに設計されている。

 そこで、このコンパクトなV型エンジンは、軽量ピストンからの動力を利用した5ベアリングクランクシャフトを採用。そして摩擦によるパワーロスを最小限に抑えるために、中間シャフトを介してウォーターポンプとタイミングチェーンを直接駆動することで効率を向上させている。

 また、86mmのシリンダーボアにストローク長を合わせたスクエア型エンジンは、パワーとトルクのベストバランスを実現し、ツインスクロールターボチャージャーの採用により、リッターあたり135馬力以上を達成。その結果、フライングスパーV8の最高速度は318km/hをマークしている。

●排気のエネルギー化

 V8エンジンの最高出力は550ps、最大トルクは2000rpmで発生し、これを4500rpmまで安定して維持する。

 ツインスクロールターボチャージャーの最大の特徴は、タービンハウジング内の2つの独立した平行な流路が、排気ガスをタービンホイールのベーンに誘導することにある。これが低速域でも高いトルクを得ることに成功したポイントである。

 ターボチャージャーはエンジンのVバンクの間に配置されており、エンジンからの排気ガスの移動距離を最小限に抑え、1760rpmで作動し、最大1.6barのブースト圧を発生させることが可能だ。その結果、瞬時に出力されるトルクにより、0−100km/h加速4.1秒を実現している。

 ちなみにこのときのタービンのピーク温度は950℃にもなり、溶岩と同じくらい熱い温度となる。

 さらに、センターターボチャージャーのレイアウトと同様に、8気筒エンジンのもうひとつの設計上の特徴は、触媒コンバーターがVバンク内部のシリンダーに近接しているのだ。

 こうすることで、コールドスタート時でもエミッションコントロールシステムを迅速に最適な運転温度まで上昇させることが可能となる。また、触媒コンバーターの加熱も、エンジン始動時にターボチャージャーのウェイストゲートを開くことで速くなるという利点がある。

【画像】ベントレーの知られざるV8の世界(9枚)

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