なぜベントレーはV8エンジンをブラッシュアップするのか? 驚きの最新V8の性能とは
ベントレーは気筒休止をドライバーに伝えない
●パーフェクトミックス
カムシャフトによって直接駆動されるふたつの高圧燃料ポンプが、8つのソレノイド駆動インジェクターに最高250barの圧力で燃料を供給。その圧力たるや、60トンの蒸気機関車を動かすのに必要なボイラー圧力の14倍に等しいほどである。
この高圧に耐えるインジェクターは、点火プラグに隣接する燃焼室の中央に取り付けられており、点火前に最適なスプレーパターン(空気と燃料の混合比率)を達成するために、7つのノズルから各シリンダーに燃料のジェットを生成する。
空気入口ポートの設計は、シリンダーに入る空気の流れの乱れを増やし、この乱流がシリンダー全体に燃料を分散させることで、よりクリーンな燃焼プロセスと排出ガスの削減に貢献している。
高応力とボア摩耗に耐えるために、シリンダーボアは大気プラズマ溶射プロセスを使用して鉄合金でコーティングされており、その厚さは紙1枚とほぼ同じのわずか0.15mmだ。
●気筒休止システム
燃費を最大化するために、フライングスパーのV8エンジンは、軽負荷状態でトルクが250Nm以下、エンジン回転数が3500rpm以下のときに、8つの気筒のうち4つの気筒を停止させることできる。この気筒休止の切り替えは乗員には感知できないほどスムーズにおこなわれ、作動停止時間は、約20ミリ秒(まばたきにかかる時間の10分の1)だ。
ドライバーに気筒休止するタイミングをあえて知らせたりするということは、もちろんベントレーはおこなわない。それは、純粋なドライビング体験に不要な不躾なマナーであるからだ。
気筒休止は、2、3、5、8シリンダーをオフに切り替える2ステージスライドカムシステムが、吸排気バルブを介して必要に応じて作動することでおこなわれる。その結果、エンジンの負荷と回転数に応じて最大30%の燃費向上が実現した。
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クルマのEV化の流れに対して、ラグジュアリーブランドのメーカーも、もちろん手をこまねいているわけではない。ベントレーも先代ベンテイガからハイブリッドモデルをラインナップするなど、常に時代の流れを見据えた電動化モデルラインナップを展開している。
しかし、とくにベントレーのようなブランドを選ぶカスタマーにとって、充電によって大切な時間が割かれることや、航続距離を気にしながら運転するということは、非常にストレスとなる。これは、主(あるじ)たるドライバーが、執事たるクルマの機嫌を伺いながら運転することと同じだからだ。
クルマのEV化は、インフラも含めていまだ過渡期といってよい。カスタマーが我慢を強いられることなく、そして環境問題も十分にクリアできるように、現在ある内燃機関をブラッシュアップして対応するというのも、ラグジュアリーブランドメーカーとしては大切なことなのだ。
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