試乗で判明! VW「T-Roc」は「シロッコ」の後継車かもしれない!?

街中を走るのにジャストサイズのコンパクトSUV、VW「T-Roc」をモータージャーナリスト武田公実氏が試乗。クーペSUVであるT-Rocに、往年の「シロッコ」の正統な末裔の姿を見た。

ディーゼルSUVとしては、十分「スポーティ」な「T-Roc」

 かつての流行の域を超え、今や全世界の自動車業界をリードする立場となったSUVカテゴリーでは、セグメントCハッチバック車をベースとする、いわゆる「コンパクトSUV」も大盛況。日本勢やヨーロッパ勢、さらにはアメリカ勢も参入し、数々の人気モデルがマーケットでしのぎを削っている。

 そんななか、すでにこのカテゴリーに「ティグアン」および「T-Cross(ティークロス)」を導入しているフォルクスワーゲンは、ティグアンと基本を一にしつつもひと回り小さなサイズと、よりデザインコンシャスなスタイリングを与えられたコンパクトSUV「T-Roc(ティーロック)」を2020年7月から日本国内マーケットにも正式導入していた。

 このほど、日本のメディア向けにテストドライブの機会が設けられ、筆者も初ドライブのチャンスを得ることになった。

●スタイリングに見合う爽快な走り

中速域からのトルク感は実に活発なT-Roc
中速域からのトルク感は実に活発なT-Roc

 フォルクスワーゲンT-Rocのスリーサイズは、全長4240mm×全幅1825mm×全高1590mm。T-Crossの全長4115mm×全幅1760mm×全高1580mm、あるいはティグアンの全長4500mm×全幅1840ー1860mm×全高1675mmに対して、ほぼ中間に位置するサイズ感といえよう。

 ホイールベースは、ティグアンよりも85mm小さい2590mmとされている。

 また、国産コンパクトSUVの大ヒットモデル、トヨタ「ヤリスクロス」よりも全長/全幅ともに6cmずつ大きく、全高は同一となる。

 そして気になる車両重量は、同じエンジンを搭載するティグアンTDIの1730kgより300kgも軽い1430kg。ティグアンTDIが「4 MOTION(4WD)」なのに対して、現状におけるT-Rocは前輪駆動版のみであることが最大の要因には違いないが、結果としてこの軽さがT-Rocのパフォーマンスに大きな影響を与えることになったようだ。

 日本に正規輸入されるT-Rocのパワーユニットは、「EA288」と名づけられたフォルクスワーゲンにおける最新世代の直噴ターボディーゼルのみが用意される。

 ただし同じEA288でも、「パサートTDI」などに搭載される190psスペックではなく、ティグアンTDIと同じ150psスペック。総排気量1968ccの直列4気筒直噴ディーゼルにターボチャージャーを組み合わせ、150ps(110kW)/3500ー4000rpmの最高出力と、340Nm(34.7kgm)/1750ー3000rpmの最大トルクを発生すると謳われている。

 その一方で、低圧/高圧のEGR(排気ガス還流システム)に酸化触媒、SCR(尿素式選択還元触媒)、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)という当代最新のテクノロジーを併用することで、世界でももっとも厳しいとされている日本の「ポスト新長期排ガス規制」もクリアしているという、まさに現在のクリーンディーゼルといえよう。

 さっそくエンジンを始動してみると、ディーゼル特有のアイドリング音は、おそらく遮音対策がもうひと回り入念であろうティグアンの方が、若干ながら静かに感じられる。

 とはいえ、通常のドライブで不快感を覚える、あるいは周囲の環境に気を遣わねばならないほどの音量ではない。またスロットルを深めに踏み込んだ際の音質もディーゼルとしては軽やかで、快音といえなくもない。

 そして、以前ティグアンTDIの試乗会がおこなわれたのと同じ山中湖周辺の一般道にクルマを進めると、走り出しからして、記憶に残っていたティグアンのそれよりも明らかに軽快な加速感を披露する。とくに中速域からのトルク感は実に活発で、あくまでディーゼルSUVにしては……という条件つきながら「スポーティ」という表現がしっくりくる。

 しかし、車両重量が軽くなった分、乗り心地はティグアンよりも若干固めとなるのは否めない。

 今回のテスト車両はスタンダード仕様「TDIスタイル」をベースに、インテリアパネルをファッショナブルな装いとした「TDIスタイル デザインパッケージ」仕様。したがって、スタンダードと同じくホイール/タイヤは17インチのままなのだが、低・中速域では路面の荒れなどを細かく拾ってしまいがちである。

 それでも、好奇心からタイトコーナーの続くワインディングをちょっと真面目に走らせてみると、この固いサスセッティングに意味があることが判ってくる。

 ハンドリングはまるでホットハッチのごとく俊敏で、クーペ的にスポーティなスタイリングの印象を裏切ることのない、爽快なドライブを満喫させてくれたのである。

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