マツダなのに他ブランド車を売っていた!? マツダ専売体制の名車5選
背が高くてもスタイルとパッケージングを両立した2車
●オートザム「レビュー」
「オートザム」は小型車を得意とするブランドです。
最初に登場した2代目「キャロル」がポップで親しみやすいスタイリングがウケてセールスが好調だったこともあり、以降のモデルもカワイイ系のデザインを採用しています。
その一方で、イタリアのランチアやアウトビアンキなども販売するという、ちょっと不思議な販売チャネルでした。
1990年にデビューしたオートザム「レビュー」は、カワイイ系の小型セダンです。
1.3リッターおよび1.5リッターの直列4気筒SOHCエンジンを搭載するFF車で、メカニズム的にはとくに目立ったところはありません。
当時のセダンといえば、四角四面な真面目なスタイリングが主流で、全体が曲線で描かれたレビューのような遊び心のあるデザインは存在しませんでした。
ファニーなルックスは酷評されることもありましたが、レビューは単にカワイイだけを狙ったクルマではありません。
車高を高くするなどパッケージングを追求すると、どうしても不格好になりがちな自動車デザインにおいて、レビューは曲線を多用することでスタイリングとスペース効率の両立を実現しているのです。
全長3800mm×全幅1655mm×全高1495mmというサイズからは想像できないほど、レビューの室内は広々としています。
これを実現するためにマツダはレビューに専用のプラットフォームを開発するという、いまでは考えられないほど贅沢なクルマでした。
なお、1996年よりマツダ名義へと改められ、1998年に販売終了しています。
●フォード(オートラマ)「フェスティバ・ミニワゴン」
フォードのマツダへの資本参加を機に設立されたフォード車専門の販売チャネルが「オートラマ」です。
といってもフォードでイメージするアメ車の取り扱いはほとんどなく、マツダ車をベースにした姉妹車が中心。初の専売車となったのが、1986年に登場した「フェスティバ」です。
ちなみに、オートラマは1994年より「フォード店」へと改名されています。
今回紹介する「フェスティバ・ミニワゴン」は1996年に登場した3代目にあたるモデルで、マツダの初代「デミオ」の姉妹車になります。
「レーザー」や「テルスター」がそれぞれ「ファミリア」や「カペラ」をベースにしながらも独自のボディデザインが与えられていたのに対し、フェスティバ・ミニワゴンはグリルなどの意匠こそ変えられていたものの、車名やブランド名のバッジを変更して販売する「バッジエンジニアリング車」。
バッジエンジニアリングとなったのは経営的に厳しかったという理由だけでなく、初代デミオのデキが素晴らしかったというのもあるでしょう。
1.3リッターまたは1.5リッターの直列4気筒SOHCエンジンを搭載する、ごく普通のFFコンパクトハッチですが、背を高く、そしてキャビンを四角くすることで優れた居住性と使い勝手を実現。
ルーフレールを用意するなど、ワゴン調のルックスを与えることで、退屈になりがちなスクエアなスタイリングに説得力を持たせています。
ハンドリングが良いのも特徴のひとつ。パッケージングを極めた結果、前後オーバーハング(前後のバンパーより先の部分)が短くなり、運動性能にも好影響を与えています。
なお、マツダとフォードの関係の見直しにより、同モデルは2003年に販売を終了。
フォード車の取り扱いは米フォードが100%出資する「フォード・ジャパン」となりましたが、2016年に日本から撤退しています。
※ ※ ※
マツダの5チャネル販売体制は、好景気に支えられ専用開発の贅沢な名車も多く生みました。
その一方で、各チャネルで売るクルマを用意するために、安易な姉妹車を多発し混迷を招くことにもつながっています。
なかでも「カペラ」の後継「クロノス」をベースにした姉妹車のセールスが軒並み失敗に終わり、マツダは経営危機に瀕することになりました。
そうした状況を救ったのが、初代デミオ&フェスティバ・ミニワゴンで、以降のたゆまぬ努力により、いまの元気なマツダへと続いているのです。
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