約109万円で「ハイテク装備」一切なし! スズキの「走るシーラカンス」に“昭和世代”感涙!? 軽みたいで“軽じゃない”長寿モデル「ボラン」がパキスタンで愛されたワケ
日本から遠く離れた海外では、かつて日本の道路を走っていた昭和時代のクルマが、つい最近まで「新車」としてラインナップされていることも。その代表的な例として、スズキの「とある小型バン」を紹介します。
約109万円で「ハイテク装備」一切なし!
日本の自動車市場では、先進的な「運転支援システム」や「電動化技術」を搭載したモデルが当たり前のように販売されています。
しかし、日本から遠く離れた海外に目を向けると、かつて日本の道路を走っていた懐かしい設計のクルマが、つい最近まで「新車」としてラインナップされていたことがあります。
その代表的な例といえるのが、スズキのパキスタンにおける子会社「パックスズキ」が製造・販売を行っていた「ボラン」という小型バンです。
ボランの姿を見ると、ある一定の年齢以上の日本のドライバーであれば、どこかノスタルジーを感じるのではないでしょうか。
直線で構成された四角いボディ形状、愛嬌のある丸目2灯のヘッドライト、そして極めてシンプルな形状の前後バンパーなど、そのスタイリングは昭和の時代にタイムスリップしたかのような雰囲気を漂わせています。
それもそのはずで、ボランのルーツとなっているのは、日本国内で1979年にデビューした7代目「キャリイバン」なのです。

日本では数年後にモデルチェンジを迎え、後継モデルである「エブリイ」へと進化していきましたが、パキスタンではこの7代目キャリイバンの基本構造を受け継いだボランが、細かな改良を重ねながら長きにわたり新車として生産され続け、2025年の秋頃に惜しまれつつ終売しました。
ボディサイズは、もちろん日本の軽自動車規格の枠内に収まる、コンパクトな設計。
そこに搭載されるパワーユニットは、排気量約800ccの直列3気筒水冷エンジンで、5速MTが組み合わされます。
日本の最新軽バンが搭載する高効率なエンジンやCVTなどと比べるとアナログなメカニズムですが、現地での日常的な移動や運搬には十分な性能を備えているのです。
インテリアもエクステリア同様、徹底的に実用性を重視した作りが見て取れます。
ダッシュボード周辺には必要最低限のスイッチ類とメーターが配置され、現代のクルマにありがちな大型のインフォテインメントディスプレイなどは一切存在しません。
手回し式のウインドウハンドルなど、昔ながらの装備がそのまま残されており、余分な快適装備を削ぎ落とした質実剛健な空間となっています。
ラインナップには5人乗りの乗用タイプを基本に、2人乗りの商用タイプや8人乗りオプションも設定。
現地価格は194万パキスタンルピー(2026年5月前半の為替で約109万円)から販売されていました。
そんなボランはパキスタンにおいて、単なる荷物運びのための商用車にとどまらず、人々の生活に密着した多様な役割を担っています。
広い荷室空間を活かして小口配送のトラックとして使われるのはもちろんのこと、多人数が乗車できるようにシートを備え、街中の乗り合いタクシー(ミニバス)として市民の足を支えるケースも少なくありません。
これほどまでに設計の古いモデルが、なぜ長年にわたって現地で愛用されているのでしょうか。
その大きな理由は「構造がシンプルであること」に尽きます。
最新の複雑な電子制御が備わっていないため、過酷な環境下で扱われても故障しにくく、仮にどこかが壊れたとしても、街角の小さな修理工場で容易に直すことができます。
部品も安価で広く流通しており、維持費を極限まで安く抑えられる点は、現地のユーザーにとって何よりも重要なポイントなのです。
現代の日本の新車市場では、「快適性」や「高度な自動化技術」が重視されています。
しかし、パキスタンをたくましく走り回るボランの姿は、「壊れにくく、誰でも直せて、ちゃんと運べる」という、クルマにとって最も根源的な価値を思い出させてくれます。
最新技術を持たないからこそ、厳しい環境を生き抜くことができる。
昭和の日本を支えたレトロなバンが、遠く離れた異国の地で“生きた化石”として愛され続けている光景は、日本の自動車産業が世界に残したもうひとつの偉大な功績と言えるかもしれません。
Writer: くるまのニュース編集部
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