日産「スカイライン」“新型登場”の陰で「R32 GT-R」の価値高騰! もはや「立派なヒストリックカー入り」で維持も大変に? 「黄金時代のスポーツカー」人気の理由と今抱える苦悩とは?
日産を代表するセダン「スカイライン」の頂点に輝いた「スカイラインGT-R」(BNR32型)は、価値が再認識されています。しかし、価値が高まったことで、今所有するオーナーにとっては、苦難も絶えないようです。
スポーツカーの定番から“ヒストリックカー”になった「R32 GT-R」
日産は2026年4月14日、長期ビジョンの発表の場で、新型「スカイライン」のティザー画像を公開。大いに話題となりました。
スカイラインといえば、超ハイパフォーマンスモデル「スカイライン GT-R」の存在が色濃く残っています。後継の「GT-R(R35型)」の生産が終了した現在、かつてのスカイラインの頂点であったGT-Rはその価値が再評価され、中古価格が高騰しています。
もっとも人気が高い“第二世代GT-R”のうち、1989年にデビューした「BNR32型」は特に価値が高まっているいっぽうで、「今乗り続ける」ことについては苦労も絶えないようです。
通称「R32(アールサンニー)GT-R」こと、スカイラインGT-R(BNR32型)がデビューしたのは1989年8月、平成元年でした。
初代の「ハコスカ」、2代目の「ケンメリ」と進化してきたGT-Rですが、1973年に一度その系譜が断絶。それから16年振りの「GT-R」の名を冠したモデルが復活するということで、当時はかなりの注目度でした。
同年に登場した当時最新のスカイライン(R32型・8代目)をベースに、ハイパワーエンジンと電子制御4WD「アテーサE-TS」を組み合わせ、世界トップレベルの高性能を誇ります。
この組み合わせは1995年デビューの「BCNR33型」、1998年デビューの「BNR34型」へと引き継がれ、“第二世代”GT-Rとして進化していきます。
搭載されるハイパワーエンジンは、2.6リッター 直列6気筒横置DOHCツインターボ「RB26DETT型」で、最高出力280馬力、最大トルクは36.0kg-mのスペックを誇り、登場から30年以上が経過した現在でも遜色のないスペックです。
当時の車両本体価格(消費税込)は445万円と高額でしたが、多くのクルマ好きの憧れの存在となったのです。
BNR32型は、「レースで勝つために生まれたモデル」であり、1990年から1993年に開催された「グループA」カテゴリの全日本ツーリングカー選手権(JTC・当時)において、29戦29勝0敗という圧倒的な強さを見せつけ、輝かしい結果を残しています。

いくつかの改良を経て、1994年に終了するまでに4万3937台が生産。そのほとんどが日本国内に留まり、スポーツカーファンにとってはおなじみの存在でした。
少なくともホンの10年ほど前までは__。
しかし、2010年前後から、映画や漫画での露出をきっかけに、BNR32型だけでなく、1980年代から1990年代の日本車の人気が急騰。その中核をなすモデルであったBNR32型も必然的に人気が高まることになります。
さらに2014年頃、アメリカのクラシックカー関税制度にあたる「25年ルール」により、25年が経過したBNR32型の輸出が解禁。
同制度は、通常は右ハンドル車の登録ができないアメリカにおいて、25年が経過した右ハンドルモデルはヒストリックカーとして認定を受けることができ、公道走行が可能になるというもので、2014年からは、1989年製造の初期モデルが少しずつ海外へと流れはじめます。
これと同時期に、クラシックカー/コレクションカー業界における最大手として知られる「RMサザビーズ」にも出品されるようになり、世界の名だたる名車とともに、価値のあるクルマとして認知されていくようになったのです。
そうして海外での需要が高まりつつあるBNR32型は、日本国内の中古車相場も急激に押し上げることとなります。
大手中古車サイトを見ると、2025年末の時点でのBNR32型の中古車の平均価格はなんと800万円を超えており、価格帯は400万円半ばから1500万円を超えるといった状況です。
オリジナル度が高い個体や、1994年式の最終モデル、低走行の個体など、多くの需要が見込まれる中古車は軒並み1000万円オーバーです。
走行距離不明やメーター改ざん車(メーター故障などの理由で走行距離が巻き戻った個体)、修復歴ありなど、どちらかといえばユーザーが敬遠しがちな個体であっても軒並み500万円オーバーです。
しばしばSNSなどに、10数年前の中古車販売店の掲載車両を載せた画像がアップされることがありますが、過走行で修復歴ありともなれば、100万円以下で売られていたケースも珍しくない時代でした。

新車当時はハイスペックを誇ったことから、走りを楽しむ層はエンジンなどのチューニングを行うことも一般的だったBNR32型。しかし、今やチューニングのベース車両ではなく、多くのヒストリックカーのように、できるだけオリジナルの状態を維持することに重きが置かれるようになっています。
事実、筆者(松村透)がBNR32型オーナー数人に話を聞いたところ、「街中を走っていると外国人にスマホで撮影される機会がものすごく増えた」あるいは「コンビニやPA/SAで話しかけられることが増えた」、まったく面識のない日本人や、外国人からも「欲しいクルマから売ってくれと言われることが増えた」という声が聞かれました。
それと同時に「運転中はもちろん、駐車場に停めていても視線を感じることが増えたので心配」という声も聞くことができました。
「盗難やいたずら対策のため、1度クルマに乗り込んだら家に帰るまでクルマから降りない」ことを徹底しているオーナーさんもいます。
新車当時、新古車でBNR32型を手に入れ、長年乗り続けるオーナーさんによると、
「以前より中古車相場が上がっているからといって、コンディションが良くなっているわけではないことを理解する必要があります。
いわゆる“プレ値”(相場高騰後のプレミアムな値段)で手に入れたBNR32型に対して、かなりの確率で『リフレッシュ代』が必要になると考えておいた方がいいでしょう。
リフレッシュ代がどこまでかかるのかは、ショップによっても多少の違いがあるでしょうし、ボディやエンジンなど、どの部分に、あるいはどこまで注力するかによっても費用がまったく変わってきます。
本格的なリフレッシュともなれば100万円単位の出費を覚悟しておく必要があると思います。
『好きなクルマ』や『憧れの存在』というイメージ先行で手に入れると、思わぬ故障や修理費用がかかるかもしれません」
と語ります。
デビュー当時以上に、手の届かない“高嶺の花”となってしまった感のあるBNR32型スカイラインGT-R。
純正部品の再生産やレストアサービスなど、メーカー側が力を入れてきていることも事実ですが、オーナーさんによると、維持するための費用が年々増加しているそうです。
そして、盗難やいたずらなど、予期せぬトラブルに巻き込まれる可能性も出てきました。
価値が認められるといういっぽうで、いま手にしたり、乗り続けるにあたっては、憧れだけでは解決できない、ある種の「覚悟」が必要なモデルになってしまったのかもしれません。
Writer: 松村透
株式会社キズナノート代表取締役。エディター/ライター/ディレクター/プランナー。輸入車の取扱説明書制作を経て、2006年にベストモータリング/ホットバージョン公式サイトリニューアルを担当。カーメディアの運営サポートや企画立案・ディレクションが得意分野。またオーナーインタビューをライフワークとし、人選から取材・撮影・原稿執筆・レタッチ・編集までを一手に担う。現在の愛車は、1970年式ポルシェ911S(プラレール号)と2022年式フォルクスワーゲン パサートヴァリアント。




















































































