デンソーが2030年に向けた新戦略「CORE 2030」発表! 電動化・ADASの成長と「AI×モノづくり」で目指す未来とは
デンソーは2026年3月31日、「DENSO DIALOG DAY 2026」を開催し、2030年に向けた中期経営計画「CORE 2030」を発表しました。電動化や知能化への対応、AIを活用したモノづくりの革新、そして農業やFA分野への展開など、多岐にわたる成長戦略の全容を解説します。
「部品メーカー」から「未来社会を実現する企業」へ
2026年3月31日、デンソーは新たな中期経営計画「CORE 2030」の方針を明らかにしました。
自動車産業が変革期を迎える中、同社はモビリティ領域での着実な成長に加え、社会課題の解決を見据えた事業展開を加速させます。
説明会で語られた「商品づくりの強化」「モノづくりの革新」「人づくり・パートナー共創」という3つの成長戦略の柱を中心に、同社の今後の具体的な取り組みを解説します。

EVの課題を打開する無線給電技術
当日は都内にて、「DENSO DIALOG DAY 2026」を開催。代表取締役社長 CEOの林新之助氏や、代表取締役副社長の松井靖氏、同 山崎康彦氏らが登壇し、中期経営計画の内容を説明しました。
デンソーは「モビリティから広がる未来社会を人の可能性で実現する企業」を目指す姿として掲げています。
新たな計画の背景には、脱炭素社会への移行や交通事故といった深刻化する社会課題、世界の多極化・多様化、情報や技術のボーダレス化、さらにはAIの進化による人の役割や働き方の変化といった環境認識があります。
前中期方針である「2025年中期方針」の振り返りでは、車両市場を上回る売上成長を実現し、電動化領域で1兆1000億円、ADAS(先進運転支援システム)領域で5900億円の売上を達成したことが報告されました。
一方で、営業利益率が中期目標の10%には届かない見通しです。品質費用の発生抑止や部材費等の急騰への対応が課題として残されました。
これらの結果と課題を踏まえ、「CORE 2030」では3つの成長戦略が設定されました。
第1の柱は「モビリティの多様化に応える商品づくりの強化」 、第2の柱は「現場に宿る実践知とAIを融合したモノづくりの革新」 、そして第3の柱が「新たな価値創出をけん引する人づくり・パートナー共創」です。
電動化と知能化の進化
第1の柱である「商品づくりの強化」においては、2030年までの5年間で3兆7000億円の研究開発費を投入し、電動化および知能化領域での2030年売上を4兆円に引き上げる目標が示されました。
環境分野では、カーボンニュートラルの実現に向けた開発戦略について解説。
多様化するパワートレインの市場ニーズに迅速かつ能動的に対応するため、デンソーは内燃機関と電動化の技術を融合させる方針です。
これにより、ICE(内燃機関)、HEV、PHEV、BEV、FCEVといったマルチパスウェイの下支えとして、それぞれの国や地域のエネルギー事情に合わせた最適な選択肢を提供します。
林社長は、「デンソーが内燃機関から撤退するというようなことはありません。 3〜5年前に言われていた電動化の加速は今、鈍化しているというのが正しい見方。市場のニーズに確実にマッチした技術を丁寧に提供していきます」と語ります。
電動化を支えるコア部品の進化として、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の開発が挙げられます。
デンソーは独自開発の3次元構造を持つSiCパワー半導体を実用化し、電流切替時の損失削減と高冷却性能を実現。これにより、新型BEV用インバーターは従来品と比較して損失を70%低減し、サイズを30%小型化しています。
また、モーター技術においては、重希土類を使用しない重希土類フリーモーターを2029年度に、さらに磁石を使用しない磁石レスモーターを2030年度に市場投入する計画です。
磁石レスモーターの開発では、独自の磁気回路と温間製造磁石によりCO2排出量を34%削減します。
さらに、EVの航続距離や充電時間の課題を解決するための新たなアプローチとして、「走行中無線給電システム」の開発が進められています。
道路インフラと車両が連携して走行中に電力を供給するこの技術により、電池の搭載量を10分の1に削減し、充電時間をゼロにすることを目指すとし、2029年度の市場投入を視野に入れています。
安心分野では、交通事故死亡者ゼロに向けたアプローチが説明されました。
現状のADASでは世の中の事故形態の56%(デンソー独自の指標による)をカバーしていますが、残る44%の事故を防ぐためには、クルマ単独のシステムを超えた技術が必要です。
そこでデンソーは、車室内センシングによる乗員の異常状態や行動の検知、インフラや他車と連携する協調運転技術を組み合わせる方針です。
同時に、AIとルールベースを組み合わせたハイブリッドアーキテクチャにより、新興メーカー比で不要作動を最大400分の1に抑える高い信頼性を確保します。
AIを活用した生産革新
第2の柱である「モノづくりの革新」では、デンソーが長年培ってきた膨大かつ模倣困難な「実践知」とAIを融合させる取り組みが発表されました。
設計開発プロセスには「エージェントAI」を実装し、走行データや実験・解析データ、設計基準などのナレッジデータをAIの育成に活用します。
これにより、仮想空間での要件開発や設計の自動化、適合の自動化などを進め、最終的にはAI主導の設計最適化から自律開発(AI-DevOps)へと開発プロセスを変革します。
製造現場である工場には「フィジカルAI」を実装します。この取り組みを象徴するのが、2027年に愛知県西尾市の善明製作所内に竣工予定の「善明南新工場」です。
新工場では、人の動きからAIが学び続けるシステムを導入し、会話を通じて人のノウハウや判断を形式知化します。
エージェントAIによる異常検知や復帰サポート、生産・在庫状況に応じたフレキシブルな生産指示が行われます。
林社長は、このAI活用による変革について「日本のものづくりの開発・製造現場は非常に幅が広く、こだわりのある色々なノウハウが詰まっています。これまで活かすことの難しかったそのようなノウハウを、AIという『武器』を使って、リアルな現場でもう一度圧倒的な生産性や品質を呼び戻したい」と述べました。
新領域への挑戦と共創
第3の柱「人づくり・パートナー共創」では、モビリティ領域で磨いた技術を活用し、FA(ファクトリーオートメーション)、農業、半導体といった拡大貢献領域への展開を加速します。
FA領域では、デンソーの持つ生産プロセス設計やロボット技術を活かし、制御からキーデバイスまでを提供する総合ラインビルダー事業を確立します。
ITとOT(Operational Technology)を融合させ、工場内のモノと情報の流れを最適化することで、2030年に売上規模3000億円を目指し、1万9000人相当の人手不足解消に貢献します。
農業領域では、気候変動や就農人口減少に対応するため、食の安定供給を目指し、2030年の売上目標を1000億円とし、農業の生産性を75%向上させる計画です。
この目標達成に向け、デンソーは農業先進国であるオランダの先端農業技術を持つ企業群(certhon、axia、FOODVENTURES)をグループ会社化しました。
各企業の技術とデンソーのモビリティ技術、自動化、センシング技術を融合させ、栽培計画から安定生産までのワンストップソリューションを構築します。
事業推進のスピードを加速させるため、2026年4月には農業事業本部をオランダへ移管する予定です。
これらの成長戦略を実行するための“人財育成”にも注力します。
メカニック、エレクトロニクス、ソフトウェアといった幅広い技術領域を俯瞰し、車両全体を統合的に最適化できる「統合システムエンジニア」を育成し、グローバルで2万6000人規模の技術者の質と量を可視化することで、事業戦略と連動した機動的な人財配置を行います。
また、パートナー連携においては、2017年以降で計5600億円の戦略投資を実施しており、今後も最適パートナーとの連携を通じてモビリティ社会の進化を牽引します。
財務戦略と今後の展望
続いて、財務戦略の全体像についても説明されました。デンソーは成長性と資本効率の両立を意識し、持続的な企業価値の向上を目指します。
2030年の財務目標として、売上高8兆円以上、営業利益率10%以上、ROE(自己資本利益率)11%以上を設定。
この目標を達成するため、2026年度から2030年度までの5年間で、事業投入に6兆6000億円(うち設備投資2兆2000億円、研究開発3兆7000億円、価値創造基盤7000億円)、戦略投資および自己株式取得にプラスアルファの資金、そして配当に1兆円など、総額8兆円以上のキャッシュを配分する計画です。
株主還元方針としては、安定性と機動性を両立させます。
配当の指標であるDOE(自己資本配当率)は2030年度時点で4.0%以上を目指し、長期安定的に向上させます。
また、資本構成の最適化を図るため、自己資本比率50%以上を目安にレバレッジを活用しつつ、低収益資産の圧縮として、聖域なき政策保有株の縮減を継続します。
※ ※ ※
デンソーはモビリティの堅実な成長をベースに、事業ポートフォリオを機動的に変革させます。
林社長は、「デンソーの原点は、技術とモノづくり、そして人の力で、より良い製品やサービスをお客様に届けることにある。この原点を忘れず、世界中のお客様やパートナーとともに、社会にとって本当に必要な新たなコアを作り続けていきます」と力を込めました。
環境、安心、食の安定供給、労働力不足の解消といった社会価値の最大化と、資本効率の最大化を両輪として進めることで、持続的な成長を実現していく方針です。
Writer: くるまのニュース編集部
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