救急車が来たのに「止まらないクルマ」なぜ多い? 交差点での衝突事故で患者の搬送が遅れるケースも 背景にある“意外な盲点”と守るべき“鉄則”とは
愛知県一宮市の交差点において、患者を搬送中の救急車と一般の乗用車が出会い頭に衝突する事故が発生しました。このような緊急自動車と一般車両との事故はたびたび発生していますが、一体なぜ起きるのでしょうか。
緊急自動車の接近に早く気づくために必要な“心がけ”とは?
2026年3月17日の午前10時半頃、愛知県一宮市牛野通の交差点において、80代の女性を搬送していた救急車と乗用車が出会い頭に衝突する事故が発生しました。
これは患者の女性を愛知県稲沢市内から転院のため搬送していた際の事故であり、救急車がサイレンを鳴らしながら赤信号の交差点に入ったところ、進行してきた乗用車と衝突したということです。
この事故により、救急車の後部にいた80代の男性と救急隊員が軽傷を負いました。また患者の女性は別の救急車によって約20分遅れで病院に搬送されたものの、容体に変化はありませんでした。

今回の事故についてインターネット上では「緊急車両を見ても徐行しないクルマが多すぎる。自分や自分の大切な人が救急車に乗っていると思って配慮すべき」「私も最近、救急車がサイレンを鳴らしながら後方から近づいて来たのでハザードをつけて路肩で待機しようとしたら、後ろのクルマが追い抜いていったのですごく驚きました」など、ドライバーの安全運転意識の低さを指摘する声が上がっています。
さらに患者の転院の際、救急車に同乗するという看護師からは「救急車の運転手は機関員といい、緊急走行の訓練を受けたプロです。交差点進入時には、これでもかというくらい徐行をして、とにかく安全最優先で運転しています。一方で、サイレンを鳴らして走っているのに止まらない、徐行しないクルマが多いことに驚きます」という実体験も聞かれました。
なお道路交通法第40条第1項では、交差点やその付近で緊急自動車が接近してきたときは、原則として車両は交差点を避け、道路の左側に寄って一時停止する義務が定められています。
加えて同条第2項では、上記以外の場所で緊急自動車が接近してきたときは、車両は道路の左側に寄って緊急自動車に進路を譲らなければならないと規定しています。
いずれにせよ、赤色灯を点灯してサイレンを鳴らしながら走行する緊急自動車が近づいてきた場合は、通行の妨げにならないよう道を譲る意識を持つことが大切です。
しかし、このようなルールがあるにもかかわらず、緊急自動車と一般車両の交通事故は後を絶ちません。
最近の事例では2026年2月19日、島根県出雲市内の交差点において、患者のもとへ向かっていた救急車と軽自動車が衝突する事故が発生しています。
この事故でも救急車が赤色灯を点灯のうえサイレンを鳴らしながら交差点に進入したところ、右側から進入してきた軽自動車と衝突しました。
事故を受けて別の救急車が出動・搬送したため患者の容体に影響はありませんでしたが、双方の車両の一部が破損したということです。
このように交差点で緊急自動車と一般車両の衝突事故が発生する原因はさまざま考えられますが、まずクルマの遮音性能が上がったことが指摘されています。
クルマの窓を完全に閉めきっていたり車内で音楽やラジオなどを聞いていたりすると、サイレンをはじめ車外の音が聞こえにくくなるケースがあります。
運転中はカーステレオの音量を下げるなどして周囲の音を聞き取れるようにしたり、サイレン音が少しでも聞こえたら、緊急自動車の接近に対応できるようクルマのスピードを落としたりすることも必要です。
また、救急車のサイレンは音が前後に伝わるように設計されていて、横方向にいると聞こえにくい場合があります。サイレンの音だけでなく、ミラーや目視確認などで赤色灯の反射にも注意を払うべきでしょう。
そして交差点を通行する際には、勢いよく猛スピードで発進するのではなく、周囲の安全確認をおこないながら慎重に進行することが、事故を防止するうえで非常に重要です。
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救急車と一般車両の事故を防止するために、消防では隊員がマイクでアナウンスして注意を呼びかけているほか、これまで以上に聞こえやすいサイレン音を救急車に導入するといった取り組みもおこなわれています。
緊急自動車が現場に一刻も早く到着できるよう、また一人でも多くの命を救えるように、運転手一人一人が安全に道を譲ることを心がけましょう。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。

















