飲酒・速度の「あいまい基準」を撤廃! 危険運転の対象行為が「11種類」に拡大へ! 数値基準を追加する方針 「ドリフト走行」も適用の対象に
政府が今国会で提出を目指している自動車運転処罰法の改正案について、危険運転の類型を現在の8類型から11類型に拡大する方向で調整していることが報じられました。これまで危険運転の適用にはさまざまな課題がありましたが、一体どのように変わるのでしょうか。
危険運転致死傷罪をめぐっては「適用ハードルが高い」「基準があいまい」といった課題も
政府が今回の通常国会で提出予定の「自動車運転処罰法改正案」に関して、危険運転致死傷罪の対象となる運転行為の類型を、現行の8類型から11類型に拡大する方針で調整していることが2026年3月2日に報じられました。
そもそも危険運転致死傷罪とは、一定の危険な運転行為(8類型)をおこなって人を死傷させた際に適用される罪で、人が負傷した場合は15年以下の拘禁刑、人が死亡した場合は1年以上20年以下の拘禁刑に処されます。
危険な運転行為については、以下のような行為が挙げられます(一部を抜粋)。
・アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為(飲酒運転など)
・進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
・進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為(無免許運転など)
・他の人や車両を妨害するような運転行為(割込み、幅寄せなど)
・信号を殊更に無視し、なおかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
ただし危険運転致死傷罪の適用をめぐっては、これまでに「適用のハードルが高い」「適用基準があいまいで、一般常識から考えれば危険な行為でも適用されないケースがある」などの批判が寄せられてきました。

たとえば2020年11月、福井県福井市内の路上で酒気帯び運転をしてパトカーから逃走中だった男が交差点で軽乗用車に衝突して大学生2人を死傷させた事故では、危険運転致死傷罪の成立が認められず、被告の男に過失運転致死傷罪が適用されました。
なお、この事故においては男が逃走中に一時停止標識を4回無視したうえ、事故時点では時速105kmまで加速していました。
しかし判決では、ドライブレコーダーの映像などから男のクルマが直進を続け、車体が大きくぶれることはなかったなどとして、危険運転の要件である「進行を制御することが困難な高速度」を認定しませんでした。
さらに大分県大分市において2021年2月、当時19歳の少年が制限速度時速60kmの交差点に時速194kmで進入し、交差点を右折してきた対向車に衝突、当時50歳の男性を死亡させる事故が発生しました。
この事故について1審では、「わずかな操作ミスで事故が起きる危険性がある」として危険運転致死罪の成立を認め、元少年に懲役8年の判決を言い渡しましたが、続く2審で「クルマが制御困難だったかの立証が不十分」などとして過失運転致死罪を適用し、元少年に懲役4年6か月の判決が下されました。
現在は検察が2審の福岡高裁判決を不服とし、最高裁に上告しています。
特に「進行を制御することが困難な高速度」に関しては、今のところ「時速◯km以上」といった明確な基準が定められておらず、道路の形状や路面状況、自動車の構造などさまざまな事情を考慮して判断されるため、危険運転致死傷罪の適用ハードルが非常に高い状況にあります。
このような一般的な感覚とかけ離れる判決には憤りの声や、法令の改正を求める意見も多く、有識者を含めた法制審議会で議論が重ねられてきました。そしてこのたび、法令の要綱案が示されるに至りました。
この要綱案によると、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態について、「身体に血液1ミリリットルにつき1ミリグラムまたは呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上にアルコールを保有する状態」というように、具体的な数値基準を設ける方針が示されています。
また高速度の運転に関しては、「道路の最高速度が時速60kmを超える場合は、最高速度を時速60km超過する速度」「道路の最高速度が時速60km以下の場合は、最高速度を時速50km超過する速度」という速度基準を設ける案も明らかになっています。
そのほか「殊更にタイヤを滑らせまたは浮かせることにより、その進行を制御することが困難な状態にさせて、自動車を走行させる行為」も危険運転の類型に追加されており、今後はいわゆる「ドリフト走行」による事故にも危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。
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危険運転致死傷罪の対象行為として、「体内に一定以上のアルコールを保有する状態で運転する行為」と「一定以上の高速度で運転する行為」「ドリフト走行による運転行為」の3類型が追加される見通しとなりました。
このニュースに対してはインターネット上で「数値基準を明確にするのは良いことだと思います」「早く法改正してもらいたい」「まずは大きな改正としてその運用をしっかりと見ていきたいです」などの声が多数寄せられています。
自動車運転処罰法の改正に関しては国民の関心が非常に高く、今国会中に成立するかなど今後の動向に注目が集まっています。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。



























