現存台数「ほぼ0台」? “幻”の実用車「ワスプ」実車公開! 「数十年放置&タイヤもパンク状態」でも大注目! 「存在自体が奇跡」ないすゞの“激レアモデル”とは

2026年2月21日・22日開催の「ノスタルジック2デイズ2026」にISUZU SPORT(イスズスポーツ)が展示した「ワスプ」は、会場を埋め尽くしたクラシックモデルの中でもとびきりの希少車でした。どのようなクルマだったのでしょうか。

「残らない」商用車の中でもとびきりの希少車

 2026年2月21日・22日にかけ、パシフィコ横浜で開催された旧車イベント「第17回 Nostalgic 2days (ノスタルジック2デイズ)2026」。
 
 その会場で、東京都羽村市のいすゞの旧車専門ショップ「ISUZU SPORT(イスズスポーツ)」が展示したいすゞ「ワスプ」を見て、大いに驚いた人は多いのではないでしょうか。

 ワスプ(Wasp)は、いすゞが1963年に発売した、1t積みクラスの小型ピックアップトラックです。

 同社の乗用車「ベレット」をピックアップトラック化したような、スタイリッシュなデザインを特徴としました。注目すべきは、すでにディーゼルエンジン搭載車を設定していたことです。

 興味深いポイントは、見た目はベレットですが、中身は別物で、ベレットのモノコックボディと異なり、「ユニキャブ」用のラダーフレームシャーシを持っていたことです。

 なおベレットの商用バンモデル「ベレット エキスプレス」も、ワスプと同じような成り立ちで作られていました。

消えゆく運命から復活を遂げたいすゞ「ワスプ」[第17回 ノスタルジック2デイズ 2026]
消えゆく運命から復活を遂げたいすゞ「ワスプ」[第17回 ノスタルジック2デイズ 2026]

 ではなぜ商用車の旧車であるワスプは、来場者を驚かせたのでしょうか。

 一つ目の理由は、商用車が「後年に残りにくいこと」があげられます。商用車は“道具”として用いられ、役目を終えたら廃車になるか、海外に渡るなどして数を減らし、やがて姿を消していきます。

 二つ目の理由は、ワスプが投入された小型ピックアップトラック市場では、日産の「ダットサントラック」がベストセラーだったことです。

 ベレット譲りの凝ったデザインで誕生した意欲作のワスプですが、ダットサントラックの牙城は切り崩せず、残念ながら販売台数は伸びませんでした。

 ワスプに限らず、同クラスのトヨペット「ライトスタウト」、日野(のちにトヨタ)「ブリスカ」、ホンダ「P700」、ダイハツ「ハイライン」などもダットサントラックに対抗しましたが、いずれも結果は同じでした。

 そのため、ワスプの残存数は限りなく少なく、かつていすゞに勤めていたディーラースタッフでさえ「数十年間見たことがない」と語っていたといいます。そのため新たに発見された場合には、商用車ファンの間で大きな話題になるのです。

 そこで、ISUZU SPORTのスタッフに展示に至る経緯を聞いてみました。

 このワスプは、長年にわたり屋根の下で人知れず保管されていた、いわゆる「納屋もの」。

 現存を知ったのはショップの顧客で、ネットオークションに出品されているのを発見しました。

 それを聞いたISUZU SPORTでは、「これは(いすゞを専門にやっている)ウチが、何が何でも絶対に手に入れなければならない」と決め、落札に成功しました。

 そして同時に落札した「フローリアン」とともにISUZU SPORTに運ばれてきました。

 修理する算段をつけたものの、ノスタルジック2デイズ2026には間に合わず、あえて荷台にいろいろと積み、タイヤもパンクした状態で「不動で置いてあった感じ」での展示を行ったといいます。

 経年によるヤレはあるものの状態がとても良好なのは、「材木屋の倉庫に置かれていたため、材木が湿気を吸ったことで腐食が進まなかったのでは」とISUZU SPORTでは分析しています。

 改めてワスプをじっくり見てみると、グリルやダッシュボードの形状から、1966年まで販売された初期型であることがわかります。

 なおワスプとベレットエキスプレスは事実上ベレットと異なるクルマなのに、ベレットのマイナーチェンジに合わせ、内外装デザインを揃えていたことは興味深い話です。

 現在いすゞでは海外市場でピックアップトラック「D-MAX」を販売していますが、その過去を戻っていくと「ロデオ」「ファスター」につながり、さらに遡るとワスプにたどり着きます。つまりワスプはD-MAXの先祖といえる存在です。

 また、日本の経済を支えたものの、消えゆく運命にある商用車は、積極的に残していくべきひとつの文化遺産であると、筆者(自動車ライター&イラストレーター 遠藤イヅル)は思います。

 ISUZU SPORTでは、今後車検を取って「社用車」として残すとのこと。来年のノスタルジック2デイズでは、レストアが進んだ姿を見られるかもしれません。

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Writer: 遠藤イヅル

1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

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