新型エスティマ!? トヨタの「“タマゴ型”ミニバン」! 広すぎ内装&全長4.8mの「ちょうどいいサイズ」採用! 斬新「ぐるぐるシート」もいい「ファイン コンフォート ライド」とは

トヨタが2017年に発表したコンセプトカー「ファイン・コンフォート・ライド」は、燃料電池車の新たな可能性を示しました。1000kmの航続距離を誇るこのモデルは、はたしてどのようなクルマだったのでしょうか。

高級サルーンな次期型エスティマ?

 開発テーマは「プレミアムサルーンの新しいかたち」とし、従来の高級車が重視してきた「威厳」や「走り」だけでなく、電動車ならではの自由なレイアウトと水素エネルギーを活かし、「移動する空間そのものの価値」を最大化することを目指して開発されました。

 クルマを単なる移動手段としてではなく、「愛車」としての存在感を保ちつつ、「移動そのものを楽しむ空間」を提供するという、野心的なコンセプトが掲げられていました。

 エクステリアの最大の特徴は、車両前方から中央にかけて上下左右に広がりを持たせ、後部にかけて絞り込んだダイヤモンド型キャビンです。

 タイヤをボディの四隅に配置し、オーバーハングを極限まで切り詰めることで、空力性能を追求しながらも室内空間を最大化する独自のプロポーションを実現しました。

タマゴ型のツルツルボディがイイ!
タマゴ型のツルツルボディがイイ!

 また、車両底面をフルカバーすることで、高い静粛性と走行安定性も両立しています。

 この流れるようなワンモーションフォルムは、かつて「天才タマゴ」と称された初代エスティマを彷彿とさせるもので、登場当時は「これが新型エスティマに?」と話題になりました。

 ボディサイズは全長4830mm×全幅1950mm×全高1650mm。特筆すべきは3450mmという長大なホイールベースで、これにより大型ミニバンに匹敵する広大な室内空間を確保しています。なお、乗車定員は6名となっていました。

 インテリアは「Wearing Comforts(快適な空間をまとう)」をテーマに、リビングのような包まれ感を演出しています。

 1列目と2列目のシートは回転させることができ、乗員同士が向き合うコミュニケーション空間へと変化させることができます。

 さらに、エージェント機能やタッチディスプレイを配置し、乗員は自由に情報へアクセスできるなど、現在のSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)に通じる先進技術が盛り込まれていました。

 パワートレインには、水素を燃料とする燃料電池(FCV)システムを採用。駆動方式は、ホイールの中にモーターを内蔵するインホイールモーターを採用しています。

 これにより、通常のEVで必要となるドライブシャフトやデファレンシャルギアが不要となり、室内空間の最大化に貢献しています。

 スペックの目標値も極めて高く、航続距離はJC08モードで約1000km、水素充填にかかる時間は約3分とされていました。

 3分で1000km走れるという性能は、現在のBEV(バッテリーEV)と比較しても圧倒的なアドバンテージであり、FCVが持つ“長距離移動への適性”を強くアピールするものでした。

 デビュー当時の反響は大きく、トヨタが「ミライ」に続くFCVの展開を本格化させていた時期でもあり、次世代のラグジュアリーカーとして注目を集めました。

 その独創的なフォルムには「深海魚のようだ」といった賛否両論の声もありましたが、対面座席などのギミックに対しては「自動運転時代のコンセプトを先取りしていた」「ミニバンではない高級車のあり方として面白い」といった再評価の声が現在も見られます。

 残念ながら、ファインコンフォートライド自体はコンセプトモデルとしての役割を終え、そのままの形では市販化されませんでした。

 しかし、このクルマで提示された技術や思想は、その後のトヨタ車に形を変えて活かされています。

 FCスタック(タンクから送られた水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を生み出す発電装置で燃料電池車の“心臓部”にあたるユニット)の発電効率向上などの要素技術や、水素エネルギーを活用して長距離を快適に移動するという“プレミアムFCV”としてのコンセプトは、2020年12月に発売された2代目「MIRAI(ミライ)」などの開発に継承されました。

 また、対面シートや大型ディスプレイによる「移動時間の価値転換」というテーマは、その後の自動運転コンセプトカーなど、トヨタのモビリティ開発の根幹となっています。

※ ※ ※

 ファインコンフォートライドは、単なるショーモデルにとどまらず、トヨタが描く「電動化×自動運転」の未来図を、最もラグジュアリーな形で具現化したマイルストーンだったと言えるでしょう。

 水素社会の実現に向けたトヨタの挑戦の歴史において、このユニークなサルーンは重要な1ページとして刻まれています。

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Writer: 青田 海

2023年4月よりライターとして活動を開始。初心者にもわかりやすく読みやすい構成を心がけ、自動車を中心に新車情報、カーライフにまつわる話題など幅広い記事を執筆している。芸能分野に詳しい。

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