“箱根駅伝”に革命!? 水しか出さないトヨタ「究極のセンチュリー」現る! 約半年で開発した“世界に1台”のクルマとは?
2026年の正月に開催された「第102回 箱根駅伝」で、トヨタは運営車両40台すべてを電動車に切り替える大胆な挑戦を行いました。なかでも注目は、豊田章男会長の愛車をベースに、わずか半年で開発された世界に1台の「センチュリーSUV GRMN FCEV」です。水素社会の未来を占う最高級ショーファーカー誕生までの苦労と、このクルマが持つ意義を探ります。
「選手に綺麗な空気を」全車電動化に込めた願い
100年以上の歴史を誇る箱根駅伝において、トヨタは2011年から車両協力を行ってきました。しかし、2026年大会の布陣はこれまでと一線を画すものでした。
豊田章男会長が掲げた「全力で走る選手たちに、少しでも綺麗な空気を吸ってほしい」という願いに基づき、伴走車や大会本部車を含むすべての車両をHEV(ハイブリッド)、BEV(電気自動車)、そしてFCEVで構成したのです。
この「全車電動化」の核となるのが、センチュリーSUV GRMN FCEV。元々は豊田章男会長の愛車ですが、その中身は排出ガスを一切出さず、水だけを排出する究極のクリーンパワートレインへと生まれ変わっています。

●スペースとの戦い! 開発者の苦悩と挑戦
この特別なセンチュリーの開発を主導したのは、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD)です。
彼らに与えられたミッションは、もともとエンジンとモーターを搭載するPHEVとして設計された車体に、FCEV「MIRAI(ミライ)」の心臓部を移植することでした。
開発を担当したTCDの佐藤聖哲氏は、完成までの苦悩を次のように語ります。
「我々は普段、こうした根本的な設計は行っていません。最大の問題はやはりスペースでした。
エンジンルームという限られた空間に、形状の異なる燃料電池ユニットを収めるのは非常に困難で、配管や配線はまさに『縫うような形』で複雑に入り組んでいます。ぶつからずに搭載できた時点で、まずは合格点だと胸をなでおろしました」
本来は横に配置される部品をユニットの下部へ移動させるなど、コンポーネントを立体的に再構築することで、既存のフレームを大きく加工することなく搭載に成功。約半年という短期間で、公道を走るための改造車検まで取得したのです。
●ショーファーカーと水素が融合する「真の意義」
なぜ、あえて最高級車であるセンチュリーを水素で走らせる必要があったのでしょうか。トヨタMS統括部の多和田貴徳氏は、その戦略的意図を明かします。
「水素社会の可能性を広げていく上で、静粛性が極めて高く、環境負荷も低いショーファーカーに水素を組み合わせることは、非常に大きな意義があります」
また、今回の開発には「FCユニットの外販」を見据えたメッセージも込められています。既存の車両構造を活かしたままFCEVへコンバートできる技術を示すことで、水素の活用シーンを乗用車以外にも広げていく狙いがあるのです。
実際、このセンチュリーは水素タンクをラゲッジスペースに収めつつ、バッテリーによるEV走行も可能な「プラグインFCEV」に近い構成となっており、次世代のマルチパスウェイ戦略(カーボンニュートラルという目標に対し、世界中のあらゆる地域や顧客のニーズに合わせて、多様な選択肢を同時に用意する)を体現する一台となりました。
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大会当日、専用のブルーグラデーションを纏ったセンチュリーが選手の後ろを静かに進む姿は、沿道の観衆の注目を集め大きな反響を呼びました。
SNS上でも「ラスボスのようなオーラで迫力満点」「水素に期待」「伝統のど真ん中に“電動”を持ってくる覚悟と現場の苦労、箱根の裏側でそんな挑戦が走ってたと思うと胸熱」といった声が寄せられています。
これまではMIRAIや「クラウン」といったセダンタイプが中心だったトヨタのFCEVですが、世界的に人気の高いSUV、さらには最高峰ブランドであるセンチュリーにこの技術を適用したことは、水素普及に向けた力強い一歩となります。
伝統の箱根路を走り抜けた「世界に1台のセンチュリー」。それは単なるイベント車両ではなく、カーボンニュートラルという高い山を登り続けるトヨタの「本気」を証明する存在と言えるでしょう。
今後も続くマルチパスウェイへの挑戦がどのような形で実現していくのか、期待が高まります。
Writer: くるまのニュース編集部
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