【箱根駅伝】選手より目立ってた!? 「センチュリーSUV GRMN」が驚きのFCEV化!? トヨタの“本気度”が凄かった
第102回箱根駅伝、選手と共に注目を集めたのがトヨタの運営車両だ。今年は全車が「電動車」となったが、中でも異彩を放ったのが大会本部車の『センチュリーSUV GRMN』。実は豊田章男会長の愛車をベースに、驚きの手法でFCEV化した世界に1台の特別仕様だった。その知られざる開発秘話に自動車ジャーナリスト・山本シンヤ氏が迫る。

豊田章男会長の愛車を“FCEV”に魔改造!?
今年で102回目の開催となるお正月の風物詩「箱根駅伝」。
その正式名称は「東京箱根間往復大学駅伝競走」と言います。
東京・読売新聞社前~箱根・芦ノ湖間を往路5区間(107.5km)、復路5区間(109.6km)の合計10区間で競われる、学生長距離界最長の駅伝競走で、毎年様々なドラマが生まれています。
筆者(山本シンヤ)はそんな選手と合わせて箱根駅伝の運営を支えるクルマたちに注目しています。
古くは三菱、ホンダもサポートを行なってきましたが、2011年以降はトヨタが支えています。
ここ数年は話題の新型車のみならず、発売前のモデルや特別なクルマも登場していましたが、今年の大会は新たな“挑戦”が行なわれています。
普段からスポーツを持つ力に共感し、様々なアスリートを応援している豊田章男会長は、「選手にはキレイな空気を吸って走ってもらいたい」と言う想いをカタチにするために、今回トヨタがサポートするクルマはHEV、BEV、そしてFCEVと全て“電動車”となっています(計40台)。
トヨタは国や地域によって異なるエネルギー事情や、お客様のさまざまなニーズに応えうる電動車の選択肢を用意するマルチパスウェイを進めていますが、「これらの車両が箱根駅伝に貢献できないだろうか?」と考えた結果と言うわけです。
その中でも注目すべきモデルは「大会本部車」でしょう。
ここ数年はGRMMセンチュリーセダンでしたが、今年はセンチュリーSUV GRMNが務めます。
ただ、普通のモデル(=PHEV)ではなく、何とFCEVにコンバートされた特別仕様です。
ボディカラーはブラックをベースにブルーのグラデーションの帯を車両全周させた箱根駅伝専用ラッピングに仕上げられていますが、何とこのクルマは豊田章男会長が普段使用しているクルマそのものです。
既存モデルをベースにFCEVコンバートと言う意味では「競技者バス/共同取材バス」のコースターFCEV、「荷物車」のグランエースFCEVと同じですが、実はその手段が異なっています。
ちなみに上記の2台はMIRAIのシステムを丸ごと移植していますが、そのために既存のモデルを大改造して製作されています。
その苦労はインパネ周りに表れており、元のモデルに対してMIRAIのメーターやシフト周りなどを流用しています。
パッと見は未来的に見えますが、実際は統合制御のため1つでも要素が足りないと正常に作動しないための苦肉の策だと言います。
それに対してセンチュリーSUV GRMN FCEVは元の車両の機能を大きく変えずにFCユニットを搭載。
つまり、既存モデルを大改造することなくFCEVコンバートが行なわれていると言うわけです。
実際の製作はトヨタの様々な特装車両を手掛けるTCDが担当。
FCユニットはフロントのエンジンルーム内に綺麗に収まっていますが、関係者は「最大の課題は『スペース』で、配管、配線はもちろん、補器類を含めたユニットの再構築を行なっています」と語っています。
水素燃料タンクはリアのラゲッジスペース内に搭載されていますが、センチュリーSUVは見た目は2BOX形状ですが、実は室内とラゲッジルームは隔壁がある3BOX形状のため、搭載にあたっては大きな改造は必要なかったようです。
また、開発に関わったスタッフの1人は「我々はFCユニットを外販していますので、そのような作り方も見せて行かないといけないと思っています。今回はそんなメッセージも込めて設計・製作を行なっています」と筆者にコッソリ教えてくれました。
そう言えば以前、CTOの中嶋裕樹副社長にFCEVの話を聞いた時、「今、議論しているのは『BEVを作ったらFCEVになるようにしましょう』と言う事です。同じモーター/周辺部品で構成するが、水素で供給してほしい地域、ダイレクトに充電したほうがいい地域に合わせて2台を開発することができます」と教えてくれましたが、このクルマはあの時の答えの1つなのかなと思ったりしています。
センチュリーSUVは元々PHEVモデルですが、「既存モデルを大改造することなく」と言う事は、搭載されるバッテリーは生きていると考えるのが素直でしょう。
つまり、センチュリーSUV GRMN FCEVはEV走行も可能です。
実はホンダCR-V e:FCEVはそのようなシステム構成ですが、このモデルはトヨタ初の「プラグインFCEV」と言う事になります(今回のEVモードはもしもの時のバックアップ的な扱いだと筆者は予想しています)。
ちなみに元々豊田会長が乗っていた時のナンバーは「品川336 ま2023」でしたが、今回は「豊田300 や9297」に変更。つまり、改造車検を取得している事が解ります。
製作期間は約半年と聞きましたが、開発・製作に関わった人の苦労は言うまでもないでしょう。

今回の走行に向けて、事前に何度も東京~芦ノ湖のテストを行なったようですが、実は筆者は2025年12月末、取材に向かう道中でたまたま通った御殿場の水素ステーションで、給水素中のセンチュリーSUV GRMN FCEVに遭遇しました。
この時は大スクープでしたが「箱根駅伝の走行が終わるまでは…」と、この原稿を書くまで心に閉まっていました。
そんな筆者は箱根駅伝の往路をTVで見ていましたが、センチュリーSUV GRMN FCEVは選手の後ろを走っていても存在感アリアリ、SNSでも好意的なコメントが多かったです。
実は「もしもの時」のために、同じカラーリングが施されたノーマルのセンチュリーSUVが別ルートで並走していました。
現在、トヨタで市販されているFCEVはMIRAIとクラウン・セダンです。
どちらも3BOXのセダンボディですが、世の中のトレンドはSUVとなっています。
やはり普及を目指すならそのジャンルにも挑戦すべきだと筆者は思っていますが、センチュリーSUV GRMN FCEVはその第1歩なのかなと。
更に言うと、センチュリーブランドは「One of One(=同じでないこと)」であり、それはパワートレインも当てはまるはずです。
そんなセンチュリーSUV GRMN FCEV、筆者は開発ヒストリーやメカニズムなどを多くの人に知ってもらいたいと思っています。
そういえば、1月9-11日に東京オートサロン2026が開催されますが、この場に乗ってきていだくと大変取材がしやすいのですが、豊田会長前向きにご検討をお願いします。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。























