日産「ちいさな“ケンメリ”2ドアクーペ!?」に注目! 伝説の“Rバッジ”輝く「ホンモノ志向」な“スカG”パーツが超カッコいい! NATSの「マイティボーイ」“驚愕カスタム”モデル「幻のちびメリ」とは
2024年の「東京オートサロン」で話題を集めた「幻のちびメリ」。伝説の「ケンメリGT-R」を軽自動車サイズで再現したこのクルマは、いったいどのような苦労を経て生み出されたのでしょうか。
伝説のモデルが「ミニサイズ」で蘇る!?
2024年1月の東京オートサロンで、ひときわ異彩を放った一台のカスタムカーが、多くの来場者の足を止めさせました。その名は「幻のちびメリ」。
その正体は、日本自動車大学校(NATS)の学生たちが、スズキの軽ピックアップトラック「マイティボーイ」をベースに作り上げた、驚異のカスタムカーでした。

NATSは、千葉県成田市に本拠を構える自動車整備士の養成学校です。その最大の特徴は、単なる資格取得にとどまらない実践的な教育にあります。
特に全国に先駆けて設置された「カスタマイズ科」では、学生たちがチームでカスタムカーを製作し、その集大成として東京オートサロンに出展。さらに車検を取得し、公道走行可能な「本物の自動車」として完成させることを最終目標としており、27年におよぶ出展の歴史の中でコンテストの最優秀賞を9回も獲得している強豪校です。
幻のちびメリのコンセプトは、「戦わずして伝説となった幻のケンメリレーシングを、現代で日常使いできるクルマとして蘇らせる」ことにありました。
モチーフとなったのは、1970年代に排出ガス規制のあおりを受け、わずか4ヶ月の販売期間で197台しか生産されなかった日産「スカイラインGT-R(KPGC110型)」、通称「ケンメリGT-R」の、一度も実戦を走ることのなかったレース仕様車です。
カスタムのベースに選ばれたのは、1983年式のスズキ「マイティボーイ」。
このクルマは、スズキの軽クーペ「セルボ」がベースの派生モデルで、当時の軽自動車規格に収まる全長3195mm×全幅1395mm×全高1395mmと、オリジナルのケンメリGT-R(全長4460mm×全幅1690mm×全高1380mm)に比べてかなり小さいボディサイズとなっています。
また、マイティボーイは、空前絶後の軽自動車の2ドア・ピックアップトラックで、今でも根強いファンがいる珍車です。
卒業生から寄贈されたという車体は「ボロボロ」の状態で、プロジェクトは数ヶ月に及ぶサビとの戦い、つまり過酷なレストア作業から始まりました。
最大の挑戦は、全長が1メートル以上も違うケンメリのパーツを、小さなマイティボーイの車体に違和感なく融合させることでした。
学生たちは、本物のケンメリ用フロントバンパーを一度中央で切断し、幅を詰めて再溶接するという高度な金属加工技術を駆使。
テールライトも本物を移植し、丹念に磨き上げて輝きを取り戻しました。ケンメリの象徴であるボディサイドの「サーフライン」も見事に再現するなど、その技術力はプロ顔負けのレベルです。
インテリアも、当時の雰囲気を再現したシートや「Banzai Racing B.R.E」オリジナルのレーシーなステアリングで統一。
パワートレインはマイティボーイの550ccエンジンを維持しつつ、EXEDY製の強化クラッチやワンオフのマフラー、TRUST製ダンパーを加工した車高調整式サスペンションを装着。ホイールには旧車カスタムの王道、レーシングサービスワタナベのエイトスポークがおごられています。
この驚くべき一台が公開されると、SNSでは「ケンメリの雰囲気を見事に再現した学生たちの技術に感動!」「可愛いのに迫力もあって最高」といった絶賛の声が殺到しました。
特に、本物のケンメリGT-Rが今や数千万円で取引される手の届かない存在となる中、「新しい形でその魅力を伝えてくれる」と、自動車遺産の新たな継承の形として好意的に受け止められました。
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この物語のクライマックスは、2024年3月に訪れます。
学生たちはついに運輸支局での検査をクリアし、正式なナンバープレートを取得。幻のちびメリが、単なる展示用のショーモデルではなく、日本の厳格な保安基準を満たした、公道走行可能な「自動車」であることを証明したのです。
この快挙は、NATSの実践的な教育理念と、学生たちの計り知れない情熱と技術力の結晶と言えるでしょう。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。





































