日産の「6ドア・6人乗り“高級SUVミニバン”」が凄かった! 斬新「観音開きリアドア」×超・豪華インテリアも採用! 時代の先を行き過ぎた2005年公開のコンセプトカー「クラーザ」とは
日産がかつて公開した6人乗りの「SUVミニバン」というコンセプトカー「クラーザ」は、20年前に披露された斬新なデザインのクルマとして、今もなお注目される存在です。
色褪せない「6ドア・6人乗りミニバン」の衝撃
自動車ショーでは発売予定の新型車だけでなく、市販化は難しそうな新時代に向けた最新技術や、革新的なデザイン・機構を持つコンセプトカーも展示されます。
その代表的な例が、日産が2005年に初めて公開した6ドア・6人乗りのSUVミニバンコンセプトカー「クラーザ」です。登場から20年を迎えた今でも非常に斬新なモデルに映ります。

2005年1月9日から23日にかけて、米国デトロイトで開催された「北米自動車ショー」において、日産は2台のコンセプトカーと7台の市販車を展示しました。
その中の1台だったクラーザは、伸びやかなデザインが特徴的な大型の3列シートSUVで、日産の高級ブランド「インフィニティ」モデルとして披露されました。
デザインは、「スカイライン」や「ムラーノ」など、当時の日産車に共通する縦長のヘッドライトや楕円形状のフロントグリル「ダブルアーチグリル」、広く膨らんだフェンダーなどを取り入れ、非常に市販車らしい現実的なデザインとなっています。
一方で、ボディサイドからリアにかけては革新的です。フロントとは対照的に、スクエアなイメージを持つAピラーや直線的なフロントガラス、中央からリアにかけ上方に向かって膨らみを持たせた形状のルーフを組み合わせました。
このようにリア部分が高くなった設計により、3列目の乗員の頭上スペースが広くなっていることが想像できます。
リアはほぼ垂直につながっていますが、テールランプやリアバンパー周辺はフロント部分と同様に丸みを帯びており、箱型のスタイリングと曲線美が融合されています。
足回りには優雅な8スポークの23インチの大径ホイールに305サイズの大きなタイヤを備え、迫力と卓越した走行性能を生み出しています。
内装は「自然素材と先進技術を組み合わせ、極めて贅沢なインテリア環境を創り出している」と説明されています。
外装と同様に、曲線と直線を組み合わせたインパネやドアトリムに、ステッチ入りの本革素材やウッドパネル、アルミ素材などを組み合わせ、豪華な雰囲気を演出しているのです。
特筆すべきは、シートの形状が着物をイメージしたもので、生地の層は平安時代の公家の女性が身にまとっていた十二単(じゅうにひとえ)のデザインがモチーフとなっていることです。
さらにシートバックのインフィニティロゴは、家紋が備わる場所をイメージしているとされ、実に日本的な要素も取り入れていたのでした。
また、1列目から3列目まで弧を描くように連続した形状のセンターコンソールによって、左右のシートを隔てており、6つのすべてのシートが独立。これにより、乗員はどこに座っても自分だけのパーソナルスペースを確保できるようになっています。
そして、クラーザの最も顕著な特徴は、左右それぞれに3つずつ、計6つのドアを設けた点です。
フロントドアは通常のヒンジ式ですが、リアドアはクオーター部も開く観音開き構造となっており、抜群の開放感を実現しました。
これはクラーザが掲げる「すべての乗員は平等に扱われるべき」という思想を具現化したもので、通常は窮屈で使い勝手の悪い3列目も、前席同様の快適性を提供します。
パワートレインやボディサイズなどの詳細情報は明らかにされていませんが、大人数が快適に乗れるミニバンと都会的なSUVを見事に融合させた、新時代の高級車を感じさせる1台でした。
ただし6ドアという構造上、市販化するには大きな壁があったようで、実車の登場は実現しませんでしたが、インフィニティの最高級SUV「QX56」(先代)などとは強い共通性が感じられます。
現在、アウトドアレジャーの人気などからSUVの需要が高まっていますが、3列シートを備え、ミニバンのように使えるモデルは比較的少数です。
6ドアの実現は困難かもしれませんが、3列目の乗員も快適に座れるSUVミニバンは、今の時代に求められる1台なのかもしれません。
Writer: 伊勢崎剛志
自動車販売から自動車雑誌編集部を経て、ライターとして独立。趣味も多彩だが、タイヤが付いているものはキホン何でも好きで、乗りもので出かけることも大好物。道路や旅にも精通し、執筆活動はそういった分野をメインに活動。






















