逆走すると「ドンッ!」 高速道に「ギザギザブレード」設置へ 「パンクさせて止めろ」の声もあったが…!? 日本独自の逆走防止策とは
「逆走車はタイヤをパンクさせて止めろ」。そんな声も根強い中、NEXCOがついに「物理的対策」を本格化させます。しかし採用されたのは、スパイクではなく車両を破壊しない「ギザギザしたブレード」でした。なぜ待望の「トゲトゲ」は見送られたのか。最新計画から、日本の道路事情に即した「現実解」に迫ります。
刺さらない「物理的阻止」がついに本格化! 待望の「逆走対策」はなぜタイヤをパンクさせないのか 「物理的に止めてくれ」という切実な願い
悲惨な事故を招く高速道路の「逆走」。ネット上などでは、タイヤを強制的にパンクさせる「トゲトゲ」装置の導入を求める声を見かけます。
そうした中、NEXCO東日本・中日本は2025年11月、逆走重点対策箇所における実施計画を策定しました。
そこには待望の「物理的対策」も盛り込まれていますが、採用されたのはタイヤを破壊するスパイクではありません。その理由と、新たな「切り札」の正体に迫ります。

高速道路における逆走事故は、ひとたび発生すれば正しく走行している車両を巻き込み、凄惨な結果を招くことが少なくありません。
加害者側が「自分は正しいルートを走っている」と思い込んでいるケースも多く、従来の看板や音声による警告だけでは限界があるのが現状です 。
こうした状況を受け、以前からドライバーの間で待望論が出ているのが、海外で見られるような「物理的な阻止手段」です。
特に有名なのが、アメリカなどで実施される鋭利なスパイクが路面に並ぶ装置で、逆走車が通過しようとするとタイヤを串刺しにして強制停車させるというものです。
「言うことを聞かないなら、クルマを壊してでも止めるべきだ」。そんな声が上がるのも無理はありませんが、日本の高速道路各社が選択した道は、少し異なるアプローチでした。

■タイヤは割らずに「衝撃」を与える
2025年11月14日、NEXCO東日本とNEXCO中日本は、高速道路での逆走対策に関する有識者委員会の報告を踏まえ、新たな実施計画を発表しました。
計画の対象となるのは、対策実施後も事故が続く場所や、構造的に逆走が起きやすい場所など、管内40か所の重点対策箇所です。
ここで2028年度までの完了を目指し、視覚的な対策の強化に加え、ついに「物理的対策」が本格的に導入されることになりました。
しかし、そこで採用される主要技術は、タイヤをパンクさせるスパイクではありません。「路面埋込型ブレード」と呼ばれる見た目はギザギザした装置です。
このブレードは、ゴムや樹脂などでできた突起物が路面から出ており、逆走車がこれを乗り越えると「ガタン!」という大きな物理的衝撃と音が発生します。
スパイクのように「刺さる」のではなく、あくまで車両にダメージを与えない範囲で、ドライバーに「異常事態」を強烈に気づかせることを目的としています。

■なぜ「トゲトゲ」は採用されないのか
なぜ、決定打になりそうなスパイク(トゲトゲ)ではなく、ブレードが選ばれたのでしょうか。
その背景には、日本の道路事情ならではの課題があります。
まず、交通量が極めて多い日本の高速道路本線や主要なICでは、可動式のスパイク装置は耐久性の面ですぐに破損してしまう恐れがあります。
さらに懸念されるのが、誤作動や二次被害のリスクです。
万が一、順走している車両に対して装置が作動してしまえば、パンクによる急停車で後続車を巻き込む大事故になりかねません。
また、逆走車を強制的にパンクさせて停車させたとしても、その停止位置が本線上であれば、やはり後続車と衝突する危険性が残ります。
前述のように「車両を痛めつけるようなハード対策」は海外事例としては存在しますが、日本国内の交通環境や法的責任の観点から、導入は極めてハードルが高いのが現実です。
そのため、まずは車両を走行不能にするのではなく、強い衝撃で「ハッ」と我に返らせ、自発的な回避行動を促す「ブレード」や、類似の機能を持つ「ウェッジハンプ(くさび形の段差)」が現実解として選ばれたのです。

■「目の錯覚」も駆使した総力戦へ
今回の実施計画では、物理的対策だけでなく、人間の心理や視覚に訴える技術も総動員されます。
例えば、逆走してくる方向から見たときだけ「進入禁止」の文字や立体的なブロックが見える「錯視効果を応用した路面標示」。
あるいは、ドライバーに視覚的な圧迫感を与えて逆走を躊躇させる「プレッシャーウォール」といった設備も、インターチェンジの合流部やサービスエリアの入り口などに適材適所で配置されます。
これらは、本線合流部でのUターンや、一般道からの誤進入など、逆走が始まるパターンごとに細かく分類され、最適な組み合わせで設置が進められます。
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「トゲトゲでパンク」という分かりやすい解決策ではありませんが、日本の道路管理者は「物理的な衝撃」という一歩踏み込んだ領域へ舵を切りました。
2028年度に向けたこれら対策の設置が、悲劇的な事故を一つでも多く減らすことになるのか、その効果が注視されます。





























