「技術の日産」全開! 超“最先端”コンパクトカーがスゴい! その場で「くるくる」回って「会話」もできる!? 約20年前から「AI」も搭載してた驚愕のコンセプトモデル「PIVO」シリーズとは

日産がかつて発表したコンセプトカー「ピボ(PIVO)」は、EVならではのメリットで大きな話題を呼びました。それに続いて登場した「ピボ2」はなんとAIが搭載されるなど、いま思えばかなり先見の明があるモデルでした。

時代に先駆けすぎてて当時は「理解できる人」も少なかった!?

 かつて日産が東京モーターショーで公開した電動コンセプトカー「PIVO(ピボ)」シリーズは、「AI」も活用した新しい時代のシティコミューターでした。

 時代を先取りし過ぎた仕上がりは、今あらためて見ると「技術の日産」を実感させられる驚きの内容となっています。

AIエージェントも同乗! 日産「PIVO2」の先見の明にいま改めて驚かされた!
AIエージェントも同乗! 日産「PIVO2」の先見の明にいま改めて驚かされた!

 日産が提案する次世代EV(電気自動車)のコンセプトカーとして、2005年の「東京モーターショー」で発表した初代PIVOは、動力源を電気に置き換え、「バイワイヤ技術」によってエンジンやトランスミッション、機械的なリンク機構を廃し、車両パッケージングに革新をもたらしたコンセプトカーです。

 最大の特徴である「回転するキャビン」は、後退操作を不要にし、自由度の高い車両デザインを可能にするなど、EVのもつ可能性を提示。都市生活における実用性を訴えた初代PIVOは、当時大きな反響を呼びました。

 大きな反響を得たことによって、日産はPIVOプロジェクトを進め、2007年の東京モーターショーで「PIVO2」を発表。

 PIVO2では、バイワイヤ技術をさらに進化させるとともに、より高容量のコンパクトリチウムイオンバッテリーの採用や、4つの車輪それぞれに高出力の3Dモーターを組み込んだ「インホイールモーター(IWM)」を搭載することで、タイヤが個別に制御可能となり、自在な進行方向の制御を実現しました。

 初代PIVOと同じく回転キャビンも備えており、真横への移動も可能できました。

 これにより多くのドライバーが苦手とする縦列駐車も、前を向いたままスムーズに行うことを可能にしています。

 フロント部には電動ドアハッチを設け、狭い場所でも乗り降りしやすい設計とするなど、シティコミューターとしての利便性も大幅に向上させています。

 ただこのPIVO2で特筆すべきは、AI技術を活用した「ロボティック・エージェント」の搭載です。

 このロボティック・エージェントとは、表情や音声からドライバーの状態を推定し、適切な言葉や仕草で、前向きな心理状態に誘導することで、まるでパーソナルアシスタントや友人のような役目をはたしてくれるもの。

 事故リスクの低減だけでなく、運転の楽しさや快適性にも寄与する新しい提案でした。

 ユニークで愛らしいデザインや、くるくると回転するキャビンといった視覚的、機能的なインパクトに目を奪われがちですが、PIVO2が提案していたのは、ドライバーとクルマとのコミュニケーションという、極めて先進的な視点でした。

 このPIVO2の発想は、今後の超高齢化社会の救世主にもなりえます。

 2007年当時にこの発想ができていたことには、当時の日産の開発者たちの卓越した先見性が表れているように思います。

 その後PIVOシリーズはさらに進化を遂げ、2011年の東京モーターショーでは、「PIVO3」として新たな姿に変わりました。

 都市とクルマが対話するというコンセプトのもと、スマートフォン操作でPIVO3がマンションのエントランスまで自動で迎えに来たり、降車後には自動で駐車エリアへ移動する、そんな未来的なアイディアが盛り込まれています。

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日産が「ジャパンモビリティショー2025」で発表した、生成AIを活用した車載エージェントシステム「AutoDJ」には「PIVO2」の「ロボティック・エージェント」の面影も!?
日産が「ジャパンモビリティショー2025」で発表した、生成AIを活用した車載エージェントシステム「AutoDJ」には「PIVO2」の「ロボティック・エージェント」の面影も!?

 日産はこのPIVOシリーズのように、「未来を予想して提案する」という先見の明があるメーカーのように感じます。

 2025年11月9日に閉幕した「ジャパンモビリティショー2025」では、新型「エルグランド」が話題を呼びました。

 その一方で、生成AIを活用した車載エージェントシステムを搭載した自動運転モビリティサービスの実証実験車で未来を提示しています。

 PIVOシリーズの斬新さとは真逆で、ミニバン「セレナ」を改造したいかにも実験車両然とした見た目が損をしていた気もしますが、その不器用さすら往年の「技術の日産」風だと感じたのは、筆者(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)のひいき目に過ぎるでしょうか。

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Writer: 吉川 賢一

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイライン等のFR高級車の開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリーや、作り手視点の面白さを伝えるため執筆中。趣味は10分の1スケールRCカーのレース参戦、クルマ模型収集、サウナなど

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