復活の「コスモスポーツ」!? 250馬力の「NAロータリーエンジン」搭載! 「旧車風デザイン」もイイ「コスモ21」とは
2002年の東京オートサロンでマツダスピードが展示したコンセプトカー「コスモ21」は、マツダが1967年に発売した名スポーツカー「コスモスポーツ」を現代流に解釈して話題を呼びました。どんなクルマだったのでしょうか。
困難を乗り越えて登場したという「コスモスポーツ」ってどんなクルマ?
1950年代に西ドイツ(現:ドイツ)のフェリックス・ヴァンケル博士とNSU(エヌ・エス・ウー)が発明したロータリーエンジン(RE)は、「夢のエンジン」と称されて二輪・四輪問わず数多くのメーカーがその技術を獲得しようとしました。ご存知の通り、東洋工業(現:マツダ)もその一社です。

同社は1961年にヴァンケル研究所およびNSUと技術提携を行ったものの、ロータリーハウジング内壁面におむすび型のローター先端が傷をつける摩耗痕で、“悪魔の爪痕”ともいわれた「チャターマーク」の解決に時間を要するなど、実用化は困難を極めました。
しかしマツダの技術者たちはそれらを乗り越え、1963年の東京モーターショーに400ccの1ローターと400cc×2ローターという2種の試作エンジン実機と、このエンジンを積む試作スポーツカーの写真パネルを展示。それだけでなく当時の社長である松田恒次氏が、まさにそのスポーツカーで会場に乗り付けて大きな話題を呼びました。
そして翌年の同ショーにて、ロータリーエンジンを積んだスポーツカーのプロトタイプを「コスモ」と名付けて一般に初公開。さらに1965年の東京モーターショーで最終生産型と称したプロトタイプのコスモを展示。続く1966年のショーで「コスモスポーツ(Cosmo Sports)」に車名を変えて飾ったのち、ようやく1967年5月からコスモスポーツ(Cosmo Sport)として発売を開始しました。
こうして発売されたコスモスポーツ「L10A型」には、最高出力110psをマークする491cc×2の2ローターユニット「10A」型を搭載。最高時速は185km/h、0−400m加速16.3秒という、当時としては圧倒的な性能を発揮しました。
そして1968年7月、コスモスポーツはマイナーチェンジを受け早くも「L10B型」に進化。ホイールベースの150mm延長・前面下部のエアインテーク拡大・マニュアルトランスミッションの5速化・フロントブレーキにバキュームサーボを装着・最高出力を128psに増強するなど、各部に大掛かりな改良を実施しました。
生産は1972年まで行われ、その台数は合計1176台といわれています。
「コスモ21」は、現代に蘇った「コスモスポーツ」
このように、マツダのイメージを決定づけた名車のコスモスポーツですが、生産終了から30年を経た2002年の東京オートサロンに、かつてマツダのモータースポーツ活動を担っていたマツダスピードが「コスモスポーツ21」を展示しました。コスモスポーツのイメージを強く盛り込んだコンセプトカーだけに、大きな注目を集めたのはいうまでもありません。
ただしゼロから開発されたモデルではなく、ベースは当時発売されていたマツダ「ロードスター」の2代目、NB型でした。そのためコンパクトなロータリーエンジン専用車だったコスモスポーツのような低く這うスタイルではなく、前後ウインドウまわりにNB型(ハードトップ)の面影を残していました。
ところがそれ以外を見ると、透明なカバーを被せた丸目2灯のヘッドライト、上部をフェンダーで覆ったリアタイヤ、ボディサイドを走る“つまみあげたようなライン”、そこからつながるリアバンパー風の造形、そして上下に分割されたテールライト、クラシックなフェンダーミラーなど、そこここにコスモスポーツを思わせる意匠を採用していました。
しかし単にレトロなデザインにするのではなく、現代的・未来的に解釈したディティールでまとめられており、まさしく現代に蘇ったコスモスポーツと呼べる仕上がりを誇りました。
インテリアは基本的にベース車のイメージを残していたものの、クラシックな印象を強めるダイヤキルトや千鳥格子柄のバケットシートを採用。さらに車内全体を黒とシルバーの大胆な色使いとして、コンセプトカーらしいスペーシーで華やかな雰囲気を備えていました。
エンジンはもちろんロータリーエンジンで、ターボなしで250psを発生する「13B-MSP型」“RENESIS”を搭載すると言われていました。なおこのユニットは、2003年5月に発売されたRX−8に積まれてデビューを果たしています。
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市販化されるかも、と噂されたコスモ21は現在も販売されていませんが、マツダはその後も「RX-VISION」「アイコニックSP」など、REを載せるスポーツカーのコンセプトモデルを相次いで発表しています。マツダのREスポーツカーへの夢が叶うことを期待せずにはいられません。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。








































