“ホンダ車だけ”に採用の「センタータンクレイアウト」何が凄い? 最新「N-BOX」や「フリード」にも導入! 他社が真似しない「革新的な独自技術」とは
ホンダだけが採用する「センタータンクレイアウト」は、燃料タンクを車両中央に置く革新的設計で、コンパクトカーでありながら広い室内空間を実現しています。実際に「フィット」や「N-BOX」など、同社の代表車種に採用され続けていますが、一体どのようなものなのでしょうか。
「N-BOX」や「フリード」が人気の理由は“ホンダの独自技術”にあり!?
自動車の世界では優れた技術が登場すると、やがて他メーカーにも広まり「業界の常識」となっていくのが一般的です。
しかし、ホンダが生み出した「センタータンクレイアウト」は20年以上経った今もなお、ホンダだけが採用し続けている独自技術です。
燃料タンクを車体中央に置くという一見単純な工夫が、コンパクトカーの概念を根本から変えてしまったのです。

この発想の背景には、ホンダが古くから掲げてきた「M・M思想(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)」があります。
1967年に登場した軽乗用車「N360」では、小型軽量なエンジンやFFレイアウトを採用し、限られたボディサイズでありながら大人4人が快適に座れる室内空間を実現しました。
「人のためのスペースを最大に、機械のためのスペースを最小に」という哲学は、その後のホンダ車づくりの根幹として脈々と受け継がれていきます。
2001年、初代「フィット」で初めて導入されたセンタータンクレイアウトは、その思想をさらに推し進めたものでした。
燃料タンクを従来のリアシート下からフロントシート下に移すことで、後席や荷室の自由度が飛躍的に拡大。
シートを倒す、跳ね上げるといった多彩なアレンジにより、長尺物から観葉植物のような高さのある荷物まで自在に積載できるようになったのです。
コンパクトカーでありながらミニバンに迫る使い勝手を実現した点は、まさに常識を覆すものでした。
この技術が誕生したのは、1990年代後半の厳しい環境規制が契機でした。
欧州ではCO2排出量削減の基準が導入されつつあり、効率的で実用性に優れた小型車が求められていました。
当時の社長・川本信彦氏は「世界一のスモールカーをつくれ」と指示し、開発陣は欧州市場を徹底的に調査。
買い物から家具運搬、友人とのドライブまで、小型車が多様に活用される姿を目の当たりにし、「室内空間を自由自在に使える新しいパッケージング」が不可欠だと確信しました。
しかし燃料タンクの位置を変える案は、社内で大きな反発を招きました。
コスト増、安全性への懸念、4WD車開発への支障など課題は山積し、当初は「非現実的だ」と一蹴されていたのです。
それでも開発責任者らは粘り強く試行錯誤を重ね、最終的にフロントシート下にタンクを配置するアイデアを完成させました。
これによって実現したのが、背もたれと座面を巧みに連動させて収納し、床とフラットにできる「ダイブダウン機構」でした。
もちろん、課題は燃料タンクだけにとどまりません。低床で広い荷室を確保するためにはリアサスペンションをH型トーションビーム式に刷新し、スペアタイヤの位置も工夫する必要がありました。
また、新開発の小型エンジンや衝突安全性を考慮した骨格構造など、車両全体をゼロから見直すことになりました。
それでもチームは「ホンダらしいクルマを生み出す」という信念を貫き、技術的な壁を一つひとつ乗り越えていったのです。
その努力の結晶である初代フィットは、2001年の発売直後から大ヒットを記録。
広さ・燃費・デザインの三拍子が揃った革新的なコンパクトカーとして瞬く間に支持を集め、2007年には世界累計販売200万台を突破しました。
日本市場でもホンダ最速で100万台販売を達成し、同社の新たな代表車種となりました。
さらにこの技術は、「フリード」や「エアウェイブ」、軽自動車「N-BOX」へと広がります。
特にN-BOXはセンタータンクレイアウトを活かした圧倒的な室内の広さで、2010年代以降国内販売ランキングのトップを独占。
シリーズ累計200万台超を達成し、フィット以上の成功を収めました。
センタータンクレイアウトは、単なる構造上の工夫にとどまりません。
ユーザーの利便性を徹底的に追求し、常識を覆す発想を「実行」に移した結果生まれた技術です。
20年以上が経った今もホンダだけが採用している事実は、この仕組みがいかに独自性と完成度の高いものであるかを物語っています。
ホンダの革新は「M・M思想」とともに、今もなお生き続けています。
センタータンクレイアウトは、ホンダが誇る唯一無二の価値を象徴する技術であり、これからも同社のクルマづくりを支え続けるでしょう。
Writer: くるまのニュース編集部
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