ホンダの「“2人きり”用ワゴン」が凄かった! 「カップル」に最適な斬新“恋愛仕様”の「S-MX」! 全長4mボディに気配り装備抜群の「画期的4ドアトールワゴン」を振り返る
ホンダがかつて販売していたトールワゴン「S-MX」。いまでも強い印象を残すこのクルマを振り返ってみます。
カップルに最適な「恋愛仕様」 ネタではなく日常使いも便利だった
2人で寝られるようにフルフラットが可能なシートアレンジや、ボックスティッシュが収納できるシークレットボックス、そして「恋愛仕様」というキャッチコピーなど、“走るラブホテル”などと揶揄されることも珍しくないホンダのトールワゴン「S-MX」。
それだけに、昨今ではネタ車として消耗されてしまいがちな1台となっていますが、クルマとしてはなかなか使い勝手のよい1台となっていました。今回はそんな隠れた名車であるS-MXを振り返ってみましょう。

S-MXは1996年11月に販売を開始しました。当時のホンダが提唱していた「クリエイティブ・ムーバー」シリーズの4車種目として登場。
クリエイティブ・ムーバーとは、クルマを中心に生活を豊かにするモデルとしてリリースされており、第1弾の「オデッセイ」を皮切りに、「CR-V」、「ステップワゴン」がデビュー。S-MXはこれらに続くモデルとして発売されました。
ベースとなったのは、先行して発売されたステップワゴン(初代)。
搭載される2リッターエンジンやコラム式の4速AT、前後のサスペンション形式などはステップワゴンのものを踏襲していましたが、ホイールベースや全長を縮め、車両の全長は3950mmと、4mを切るコンパクトなボディとなっていました。
また、スライドドアを備えていたステップワゴンに対し、S-MXはヒンジドアを採用していたのも大きな違いですが、運転席側が1枚、助手席が2枚ドアの左右非対称となっていたのは初代ステップワゴンと同様となっています。
一方で、大きく異なっていたのがシートです。
前後ともベンチシートを採用した4人乗り仕様となっており、フロントは左右分割式のタイプを、リアには左右一体式のタイプを採用。
フロントシートのヘッドレストを外して倒してリアシートも倒せば、セミダブルベッド並みの広さを持つフルフラットを実現していたのはご存知の通り。
なお、フラットにしたときに意外と気になるシートベルトのバックルは、シート内収納式とすることで、寝転がっても身体に当たるようなことがないようにするなど、細やかな気遣いもなされていたのでした。
またフルフラット化ばかりが注目されますが、リアシートは300mmものロングスライド機構が備わっていたほか、フロントシート側に跳ね上げれば、最大920リットルという大容量の荷室を実現することもでき、実は非常に実用性に富んだモデルでもあったのです。
このように実は実用性が高く、スクエアなデザインのボディは見切りも良くて運転しやすいということで、メインターゲットの若いユーザーのほか、年輩のユーザーからも一定の評価を集めていたのでした。
そのためか、1999年9月に実施されたマイナーチェンジ時には、フロントをセパレートシートとした5人乗り仕様が追加されたうえ、これがメイングレードとなり、従来の4人乗りは「ローダウン」グレードで選択できるのみとなっています。
結局、S-MXは1世代のみで消滅することとなってしまいましたが、遊び心を持つ箱型のクルマというキャラクターは「モビリオ/フリード」の「スパイク」や「フリード クロスター」、「N-VAN」などに受け継がれています。
こうしたモデルが現在も愛されていることを考えると、その存在意義は大きかったと言えるのではないでしょうか。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。
























