トヨタ「“屋根なし”ヤリス」に注目! 丸み帯びた“精悍”2ドアスタイルの「コンパクトカブリオレ」! 斬新メーターもカッコいい欧州コンセプト「ヤリス カブリオ」とは
実用的なコンパクトカーとして人気のトヨタ「ヤリス」ですが、このヤリスに、かつて「ヤリス・カブリオ」というオープンのコンセプトモデルが発表されていたことはあまり知られていません。どのようなクルマだったのでしょうか。
欧州市場を見据えた現実的なコンセプトモデル
ルーフを開けて手軽にオープンエアを楽しめる一方で、閉じれば通常のモデル同様の実用性も併せ持つ「カブリオレ」は、根強い支持を集めるジャンルです。
日本を代表するコンパクトカー、トヨタ「ヤリス」にも、かつてそんなカブリオレのコンセプトカーが存在していました。

初代ヤリス(当時の日本名は「ヴィッツ」)は、1999年に誕生したトヨタのコンパクトカーです。
それまでの「スターレット」や「コルサ」、「カローラII」といった小型ハッチバックの後継にあたるモデルで、日本では1999年1月に発売となりました。欧州でも同3月に発売開始されています。
欧州Aセグメントに向けた世界戦略コンパクトカーとして、当時のコンパクトカーの水準をはるかに超えた「高い質感」を備えていました。
ボディスタイルは、従来の小型車に多かったシンプルな2ボックススタイルではなく、丸みを帯びたワンモーションデザインが特徴です。
インテリアには、当時としては斬新なデジタルセンターメーターを採用。コンパクトカーなのに室内空間は広く、走行性能や燃費性能も超優秀。その完成度によって、日本では「1999年-2000年日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞、欧州市場でも「欧州カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得するなど、世界で高く評価されたモデルでした。
そんなヤリスにカブリオレが登場したのは、2000年のこと。
2000年前後の欧州市場では、プジョー「206CC」、フォルクスワーゲン「ゴルフカブリオレ」、フィアット「プントカブリオ」といった電動メタルトップやソフトトップを備えた小型カブリオレが多く販売され、一定の人気を集めていました。
そんななかでトヨタも、初代ヤリスの3ドア車をベースに、オープンモデルの「ヤリス カブリオ コンセプト(以下、ヤリス カブリオ」を発表したのです。
トヨタによると、ヤリス カブリオは当時の若い世代に向けて開発したコンパクトオープンで、太陽の光を感じながらオープンエアで走る楽しさや、髪をなびかせて街並みを眺めながらのんびり走行する解放感を存分に味わうことを狙ったコンセプトカーとのこと。
非常にお洒落なデザインで、3ドア車をベースに全体のバランスが取れたフォルムが魅力的でした。
オープン時には、後ろ上がりに傾斜したサイドウィンドウラインが、リアエンドまで一直線に繋がり、まるでクラシカルなスポーツカー「スピードスター」のような印象を与えます。
クローズド時には、Aピラーの延長線上に自然にラウンドするルーフラインと、リアエンドの跳ね上がったような造形が相まってスポーティさあふれる雰囲気に。力強く張り出したリアフェンダーも特徴的でした。
非常に現実的な提案でしたが、結果としてヤリス カブリオが市販されることはありませんでした。
その存在は国産他社へも影響を与え、日産が2005年に発売したK12型「マイクラ」(日本名:「マーチ」)のカブリオレ版「マイクラC+C」(2007年からは日本にも輸入販売)や、三菱「コルトCZC」(2006年)などが誕生するきっかけとなりました。
2002年にはダイハツ初代「コペン」が登場し、海外輸出も行われています。これもヤリス カブリオがつくった、小型カブリオレの流れによって誕生したモデルといえるのかもしれません。
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昨今は、新型のカブリオレを目にする機会はめっきり少なくなってしまいました。
そんななか、モーターショーなどで夢の詰まったオープンモデルが登場すると、会場がとても華やかになります。
クルマに乗る楽しさが詰め込まれたコンパクトカーのカブリオレが再び登場することを期待しています。
Writer: 吉川 賢一
日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイライン等のFR高級車の開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリーや、作り手視点の面白さを伝えるため執筆中。趣味は10分の1スケールRCカーのレース参戦、クルマ模型収集、サウナなど















































