トヨタはなぜ「セダン」に力を入れるのか? 市場が縮小しても「クラウンセダン」は絶対必要!? 他社とは違う意外な事情とは!
トヨタ・レクサスでは、いまでも「セダン」を多く扱っています。他社では、1車種しかない、または取り扱いを止めたメーカーもあるなか、トヨタがセダンに力を入れるのはなぜなのでしょうか。
市場が縮小しても「クラウンセダン」は絶対必要!?
かつてのセダンは、日本で最も販売台数の多いカテゴリーでしたが、今は大幅に減り、国内で新車として売られる乗用車の5%前後という状況です。
そして、国産セダンの選択肢はわずかとなっており、日産は「スカイライン」のみ、ホンダも「アコード」、マツダは「マツダ3セダン」、スバルは「WRX」だけ。三菱、スズキ、ダイハツは、今はセダンを扱っていません。
これでは欲しいセダンが見つからず、売れなくなって当然でしょう。

しかしトヨタはセダンをしっかり残しています。トヨタブランドでは、「クラウン」、「カローラ」、「MIRAI」があります。また、トヨタのホームページでは、「クラウンクロスオーバー」はSUVに含めていますが、後者も室内空間から独立したトランクスペースを備えるセダンボディを採用しています。
なお、5ナンバーサイズのセダンになる継続生産型の「カローラアクシオ」は、2025年10月で生産を終えると公表されています。
トヨタの上級ブランドであるレクサスは、セダンとしては、ミドルサイズの「IS」、Lサイズの「ES」、最上級の「LS」があります。ほかのメーカーがセダンを1車種程度しか用意しないのに比べて、トヨタはレクサスを含めて豊富です。
そんなセダンのなかで特に注目される車種がクラウンです。クロスオーバーの発売は2022年、後輪駆動のセダンは2023年で、設計が比較的新しいです。
なぜクラウンは後輪駆動のセダンを用意して、クラウンクロスオーバーもセダンボディを採用しているのでしょうか。
開発者に尋ねると以下のように返答されました。
「クラウンの基本はセダンです。(先代型の)15代目まで、一貫してセダンがクラウンの世界観を支えてきました。現行型は従来と同じくショーファーカー(職業ドライバーが運転してオーナーは後席に座るクルマ)として快適に使えて、なおかつパーソナルカーとしても満足できるセダンを目指しました。外観がカッコ良く、運転を楽しめるセダンです」
クラウンセダンを販売店はどのように見ているでしょうか。
「クラウンの売れ筋はクラウンスポーツで、クラウンエステートも今(2025年8月中旬現在)は受注を停止していますが人気は高いです。
これに比べてクラウンセダンは販売台数が少ないですが、長年にわたって愛用されている法人のお客様が多く、定期的に乗り替えていただけます。車検や点検も確実に受けられます」
2025年におけるクラウンシリーズの登録内訳は、クラウンスポーツが最も多くシリーズ全体の47%を占めています。2位は受注を停止しているクラウンエステートの21%です。クラウンクロスオーバーは19%で、クラウンセダンの13%と続きます。
クラウンセダンの登録台数は、最も少ないですが、それでも1か月に600~700台は登録されています。
しかもクラウンセダンは価格が高く、「ハイブリッドZ」が730万円で、登録台数は少ないですが燃料電池車の「Z」は830万円です。クラウンスポーツハイブリッドZの590万円と比較しても、価格はさらに高く、メーカーや販売会社とっては利益の多い大切な商品です。
そして販売会社が法人需要を確保するには、社長や重役が使うクルマを自社製品で押さえることも大切です。例えば社長の使うクルマがクラウンから他社の商品に変わると、その法人が使う商用車まで、他銘柄に乗り替えられてしまう可能性があるのです。
例えば、商用バンのトヨタ「ハイエース」の売れ行きが圧倒的で、日産「キャラバン」に大差を付けています。ボンネットバンはトヨタ「プロボックス」が強く、ライバル車の日産「AD」は2025年11月に生産を終了します。
従って今はトヨタ車を使う法人が他社に移ることは考えにくいですが、社長や重役の車両を押さえておくことは大切です。
また今までトヨタの販売会社と付き合いのない法人でも、社長や重役のクルマとしてクラウンや「アルファード」を売り込めれば、その法人が使っているキャラバンをハイエースに変更できるかも知れません。
法人以外でも、長年にわたりクラウンを使ってきた官庁や自治体などは、クラウンセダンにこだわります。いろいろな観点から、クラウンセダンは“欠かせないモデル”といえるのです。

































































